第337話 続々と……

「ミリーには近寄らせるなよ!」


「お、おう!」


ザックスがそう言ってアリ達に突っ込んでいく。そのセリフを聞いて、普通の魔法職は近かられたら何もできないというのを思い出した。

規格外の学校長や詠唱省略を使えるルイ、物理職のステータスを1部持っているラウレーナとルシエルなど俺の周りに普通の魔法職はいなかった。


「しっ!」


タンクのダンがミリーの前に残るということで、俺もザックスやハインツに続いてアリ達に突っ込む。


「はあっ!」


大鎌の一閃で一気に3体くらいのアリが両断される。それほどアリ達は密集して向かってきている。俺は続けて何度も大鎌を振る。



チラッ…


後ろを横目で見ると、魔力回復のポーションを呑んだミリーが再び魔法の準備をしている。ミリーの魔法は1発の威力はかなり高いが、連発を得意としていないようだ。


「はあっ!ん…?」


魔法の準備が終わるまで粘るしかないと思い、大鎌を振る。しかし、さっきまでより少し手応えが悪かった。


「硬いのが混じり始めた!」


「「っ!」」


俺は大鎌を遠慮なく振れるように2人から少し離れていたが、そんな俺のところに他よりも黒いや赤っぽいアリが混じり始めた。こいつらは他よりもいい鉱石を食ってる分硬くなっている。Bランク帯にはなっていないが、それでも他よりも厄介なのは変わりない。



「闘装!」


ここで俺は闘装を解放する。さすがに囲まれるような状況で攻撃を食らわないのは難しい。


「スラッシュ!!」


また、無属性魔法も解禁した。赤や黒のアリも一撃で殺せるが、数が増え続けている状況は変わらない。だから少しでも手数を増やしたい。

……魔力を使えれば1番いいのだけどな。



(やっぱりAランクの冒険者は動きがいいな)


2人は無属性魔法を解禁した俺よりもアリを殺すペースが速い。特にザックスはその剛腕と怪力でアリを潰している。

だが、それで死ぬ数よりも穴から増える数の方が圧倒的に多い。クレーターの中は既に数百に近いアリが出てきている。



「戻れ!!」


「「「!!」」」


ミリーの護衛をしていたダンが叫ぶ声が聞こえた。俺達3人はアリを無視してダンの後ろ、正確にはミリーの後ろに逃げる。


「ファイアウィンドサイクロン!」


俺達が離れた瞬間にミリーから炎を纏った竜巻が放たれた。それはクレーターの中心で回転し、周りのアリ達を木っ端微塵にしていく。ついでに俺達が斬り殺した死体達を風の力でクレーター外に吹っ飛ばしてもいる。



「ふぅ……」


魔法が終わると、クレーター内に生きているアリの姿は1匹もなかった。しかし、すぐにまた増援が来るのだろう。


「ん?」


しかし、数十秒待っても追加のアリは出てこなかった。あんなペースで出てきていたアリが今の1発で殲滅できたとは思えない。


バコッ!


魔法が止んで1分くらい経った頃だった。クレーターの中に大きな穴が再びできて、アリが出てきた。


「さっきのやつらとは様子が違うな」


「明らかに戦闘を得意とするアリだ」


そこから出てきたのはさっきまでのアリの倍くらい大きい4m程のアリで、キバがさっきのアリよりも明らかに鋭くなっている。また、色も完全な黒や赤一色である。

今までのが働きアリとすると、今回のアリは兵隊アリだな。


「今度はBランク帯だと思うが、ヌルヴィスいけるか?」


「一応これでもBランクだ。問題ない」


心配してくれるのはありがたいが、魔法無しでもBランクまでの相手はできるのを確認している。


「じゃあ、行くぞ!」


ザックスを先頭にさっきと同じように3人でアリを迎え撃つ。


「はあっ!」


ガギンッ!


とりあえず、近くの兵隊アリの頭に大鎌を振り下ろす。やはり、それでは両断はできなく、ヒビを入れるのみだった。


「ほっ…」


目の前の兵隊アリは自分の怪我など気にしないとばかりに口で俺を挟もうとしてくるが、俺は寝転ぶようにそれを避ける。


「はあっ!」


俺はそのままの体勢で地面を斬りながら大鎌を振り上げて兵隊アリの細い首を切断する。


「首なら1発か」


今までのようにどこでも斬れば殺せるということはなくなったが、それでも一撃で殺す方法があるのはわかった。


「どんどん行くぞ!」


俺は死体には目もくれず近くにいる兵隊アリに向かっていった。

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