第335話 共同依頼
「前に言ってた通り人手が必要な依頼なんだよ」
「わざわざ人手が必要な面倒な依頼を受けたの間違いでしょ」
ザックスの足りない言葉を補うように後ろからパーティの紅一点であるエルフが話す。
「どうしてこんな割に合わない依頼を受けてまでその子と関わろうとするのよ。もしかして隠し子なの?」
「な訳あるか!俺は独身だし、子供居ないわ!ずっと同じパーティだったお前も知ってるだろ!」
まあ、ザックスの年齢的に俺くらいの子供がいてもおかしくないが、どう考えても俺とザックスは似ていない。
まあ、このエルフも本気で言ってはいないと思うけど。
「ただ、何となく一緒に依頼を受けたかったんだ。こいつの力を見てみたいし、友好的な関わりを持ちたいんだ」
「……今まであんたの直感が人に対してそこまで反応することはなかったわね。はあ…分かったわよ。今回に関しては私からは何も言わないわ」
「それなら俺達も言うことは無いな」
「ああ」
「??」
俺の知らない感じでパーティメンバーは俺を誘うことに納得した様子だった。とりあえず、パーティの意見が一致したのは良かったのかな?
「えっと…それでどういう依頼なんだ?」
「あっ!それを言ってなかったな。今回受けたのはオーアントの巣の駆除依頼だ!」
ザックスは依頼書を渡しながらどんな依頼が簡単に説明してくれた。
詳しく依頼書を読むと、食べた鉱石を外骨格にするオーアントと呼ばれるアリが巣を作っているため、巣の奥にいる女王オーアントを殺して巣を撲滅してほしいという依頼だった。
「…確かに人手は必要そうだな」
「そうなんだよ!」
巣にどれだけのアリがいるか分からないので、人手は1人でも多い方がいいだろう。また、巣の中で1番多く、ランクの低い働きオーアントは外骨格に使われる鉱石にもよるが、D~B-ランクなので、俺でも役に立てそうである。
「どれだけ力になれるか分からないけど、付き合うのは構わないぞ」
「ありがとう!じゃあ受付に行くか!」
「ちょっ…!?」
俺は腕を掴まれて引きずられながら受付まで一緒に連れてかれ、共同という形で同じ依頼を受けた。
「疾火気炎が誰かと共同で依頼を受けるというのは珍しいですね」
「通常の依頼でするのは初めてかもな」
「え?」
お人好しとも言えるザックスなら何回もこうして誰かと一緒に依頼を受けてるのは何度もやっているかと思ったが、そんなことは無いそうだ。
「さて、女王がアリを増やす前に終わらせたいから依頼は明日から開始でいいか?」
「それは問題ない」
明日も狩りに行く予定だったので、明日から行くのは問題ない。
「それなら明日の朝7時に南門に集合な!」
「了解」
集合場所と時間を確認しながら俺達は連れて行かれる前のザックスのパーティメンバーが待つ場所へと戻ってきた。
「今日は懇親会を兼ねて俺の奢りで飯を食いに行くぞ!」
ザックスの提案で今日は5人でご飯を食べることとなった。
その食事中に4人の馴れ初めやAランクに至るまでの苦労話を聞けて楽しかったし、少しは打ち解けられたと思う。
「よし!集まったな!」
ザックスは昨日かなりの量の酒を呑んでいたが、ちゃんと集合時間は守っているし、もう酔いなど感じさせない。そこはプロだと実感する。
「じゃあ、行くぞっ!」
俺達は歩いて目的地まで移動を始めた。目的地は歩いて2時間程とあまり遠くない場所にある。だからこそ、依頼として出されたのだろう。
ちなみに、歩く並びは大盾を持つ人族のダンを先頭にし、その後ろに俺とザックスが続き、そのすぐ後ろをエルフのミリーが続いていて、最後尾に獣人の剣士のハインツがいる。
俺が居ないとしても大体はこの並びであるそうで、この並びなら奇襲にも対応しやすいようだ。また、高火力の魔法職のミリーを守りやすくもある。
「さて、何日かかるかな?」
「さっさと終わらせたいわね」
また、この依頼は完遂まで何日も泊まりがけで行う。日帰りは全然できなくはないが、何日もかけてアリが補充されていたちごっこをするのを避けるために泊まり込みで早く終わらせるそうだ。
「さて、そろそろ見えてくるぞ」
警戒しながら歩いていると、ついに巣のある場所に到着するそうだ。
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