第334話 物理職のみと魔法職のみ
「こんなもんか」
午後3時くらいで俺は狩りを止めて街に戻ることにした。
結局、この日は魔法を使う機会はなかったが、1回だけ攻撃を貰ってしまった。防具の上からだったのに骨にヒビが入ったのか、それなりに傷んだ。ただ、すぐに空中に逃げて回復ポーションを飲んで事なきを得た。
「明日も頑張るぞ」
明日も今日と同じようにこの砂地で狩りをする予定だ。ただ、明日は今日と違って逆に魔法だけを使ってやる予定だ。
「おお!砂地の魔物じゃないか!この魔物らは良い防具になるから高く売れるんだが、それでも割に合わずに誰も持ってきてくれないんだ!」
「お、おう…」
魔物の素材を冒険者ギルドの解体場に持って行くと、解体人に凄く喜ばれた。ギルドにも砂地の魔物の素材を求める人が訪れる程度には求められていたそうだ。
「依頼ボードに依頼としてもあったと思うから、明日にギルドの受付に来てくれな」
「ああ」
明日狩る予定の素材はとりあえずまだ売る気はなかったので、明日はギルドには行かないつもりだった。だが、明日もギルドに行かないといけないようだ。
「シールド、よし行くか」
今日は全身をローブに包み、大刀となる杖を持ちながら砂地へと足を踏み入れる。
今日は魔法メインで戦う予定だが、念の為に足場となる無属性魔法の盾は準備しておく。ピンチになったら空中に逃げるからな。
「昨日狩ったから近くには居ないか」
昨日と同じように砂地に入ってすぐに魔物に襲われるということは無い。面倒なので魔物を見つけるまでは軽く盾を蹴って砂地を進むことにする。
「おっ、いたいた」
最初に見つけたのは昨日苦戦したサソリだった。サソリはまだ俺の事を見つけてないようなので、先手をいただく。
「轟き、暗がれ!サンダーダークサイズ!」
俺が放った複合魔法は回転しながら真っ直ぐサソリに向かっていく。
ガキン!
「まあ、防がれるか」
遠くに居たので魔法をコントロールすることが難しく、真っ直ぐでしか放てなかったためか、普通に魔法に気付かれてハサミで魔法をガードされる。
「暗がれ、ダークサイズ。暗がれ、ダークサイズ。暗がれ、ダークサイズ。暗がれ、ダークサイズ」
サソリが向かって来ている間に俺は魔法を4つ準備し、全てを同時に放つ。
「キシャー!!?」
さっきよりもかなり近くに来ていたので、魔法をそれぞれの別の軌道で放つことができた。そのため、4つ中2つがハサミを掻い潜って身体に突き刺さる。
「サイズ!」
痛みで暴れている間に無属性魔法を放ち、ダメ押しで顔面に食らわせる。
「キシャー!」
「おおっ!?」
しかし、まだ死んではいなかった。虫系の魔物は生命力が高いため、なかなか死なないな。
「暗がれ、轟け!ダークサンダーランス!」
今度こそダメ押しに顔面に魔法を突き刺す。次こそは倒れて動かなくなった。
「ふぅ…」
100m以上離れたところから戦闘を始めたのに、サソリの死体はもう5mも離れていない。魔法のみで戦った時は集団で襲われた時は大変だな。
ただ、魔法を使うと遠距離攻撃手段を持っていない相手には遠くから一方的に攻撃をできるのが強いな。
「まあ、敵が近くなったら大鎌を使うのが1番上手くいくんだろうけどな」
だが、人前でその戦い方はできない。どっちかでもある程度戦えるようにしないといけない。
「よしっ。どんどん行くか」
その後も俺は魔法のみを使って魔物を狩って行った。
「はあ…やっぱり魔法のみで多数を相手にするのはちょっとキツイな」
今の俺の周りにはワニが数体とアリとサソリが1体転がっている。昨日と同じような感じで襲われたのだが、魔法だけではサソリの尻尾の針に刺されそうになった。だから咄嗟に手に持った杖の大刀を使って弾いてしまった。また、反射的に何回か攻撃を避けてしまっていた。その動きは魔法職の者には出せないだろう。人に見られていたら完全にアウトだ。
「帰るか」
魔物の量的には昨日よりも少し少ないが、昨日よりも砂地の奥に来ている。状況的にはそろそろ帰るべきだろう。明日からもとりあえずこの場で狩りをしようと思いながら、俺は帰路についた。
「合わせて4つの依頼を完遂ということになり、素材と併せて大金貨8枚となります」
「おお…」
意外と依頼と渡した素材が多かったからか、かなりの額となった。
「まだジャイアントスコーピオンのハサミと尻尾の毒が足りませんので、それを前回と同じくらいの数を持ってきて頂ければもう2つの依頼も達成になります」
「分かった」
まだ依頼としては足りない素材があったのか。まあ、サソリはアリやワニほど狩れてないからな。
明日はサソリを重点的に探すか、なんて思いながら俺は受付から離れてギルドから出ようとする。
「おっ!ちょうどいいところにいた!」
「ん?」
しかし、そんな俺を止める者がいた。その男はギルドに来た時にお世話になったザックスだった。
「お前に手伝って欲しいAランクの依頼があるんだ!」
「え?」
後ろでパーティメンバーが額に手を当ててため息を吐く中、ザックスは俺にそう言ってきた。
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