第331話 もう1つの冒険者ギルド
「…こう高ランクの依頼ばっかり並んでいるのは凄いな」
この場所がCランク以上しか立ち入れないから当たり前だが、依頼ボードに張ってある全ての依頼がCランク以上だった。その中には当たり前のようにAランクの依頼も数個混ざってもいる。Aランク当ての依頼がボードに張ってあるのは初めて見たぞ。
「しかも討伐依頼ばかりだしな……」
さらに、依頼の9.5割以上が魔物の討伐依頼か素材の依頼である。周りに多くの種類の魔物がいるからか、聞いた事のないような魔物の討伐依頼まである。しかも1、2匹だけでなく、平気で100匹分の爪とかそういう依頼もある。また、中には彩化したCランク以上の魔物とかいう、突然変異で強力になった魔物の討伐依頼まである。
「うん、分からんから職員に聞こう」
依頼の魔物の出現場所がどこどこの森の奥とか書かれていてもそこがどこの森かなんてさっぱり分からない。ここは大人しくギルド職員に聞くことにした。
「よし、だいたい分かったぞ!」
職員に少しだけ
「だから適当な森に入って奥まで行けば高ランクの魔物と出会えるわけだな」
ただ、その上での注意は魔物が居ないからと一気に奥に行くと、場所によっては急にAランクの魔物と遭遇してしまう可能性がある事だ。
だから最低限、今から行く森にAランクの魔物がいるか、またどんな魔物がどの程度いるのかくらい把握した方がいいだろう。
「とりあえず、狩りに行くのは明日だな。次は…」
ポーション類が心もとないので、買い揃えなければならない。だから狩りに行く明日にする。それに、今日はこれからもう1軒の冒険者ギルドに行かなければならない。
「……こんな格好でいいかな?」
俺は街の中心部から出て裏路地に入り、大鎌をしまって鞘のような杖を腰に下げてローブを大きくした全身を覆う。また、魔導具で見た目を変えるのも怠らない。
「よし、行くか!」
万全な状態で俺はもう1つのギルドへと赴いた訳だが、その中は異様な光景だった。
「……人ばっかり」
中心部のギルドに寄ったこともあり、今は朝の中で9時過ぎと1番冒険者が多い時間である。そのため、中は人が依頼ボードの周りにぎゅうぎゅうに集まっているし、職員のカウンターには大勢が並んでいる。
「おい!痛ぇぞ!足を踏みやがったな!」
「てめぇ!俺の前に割り込むとはいい度胸だな!」
「あっ!それは俺が狙ってた依頼だ!横取りするんじゃねえ!」
「ねえ?良かったら俺と一緒に依頼を受けない?こう見えて俺はDランクでもうすぐに中心部に行けるようになるんだよ?そんな俺と同じ依頼を受けれるのは光栄だと思わない?」
「はあ…」
その中の様子は正しく地獄絵図と言ったところだった。これでギルドの大きさだけなら中心部と変わらないんだから凄いよな。
しかし、これは冷静に考えると仕方がない部分がある。冒険者の数は低ランクからピラミッドのようになっている。ランクが下がるほど数が多いんだから同じ3つのランクしかほぼいないとはいえ、人数には何十倍と差がつくのだ。
(……もうこのギルドに来ることはないかも)
このギルドに来て魔物を売るくらいなら、魔法で殺った魔物は放置した方がマシと思えてしまう。それに、ラウレーナとルシエルが来たら2人が殺ったとして普通に中心部のギルドに魔法で殺った魔物も売れるようになるのだ。勿体ないが、それまでの我慢なら問題なくできる。
目の前でちょうど視界に入る中で2組の殴り合いが始まってるくらいには治安が悪いし、あんまりこのギルドには近寄りたくない。
(…行くか)
俺は誰の目にも止まらないように静かにギルドから出ていった。そして、さっきとは逆に裏路地で大鎌を装備してローブを小さくして中心部へと戻った。
中心部でポーションを売ってる大きな店に入ったが、かなり品揃えが良かった。やはり、冒険者の街ということでポーションの需要は高いのだろう。
合計で黒貨1枚以上を使い、切断された断面が綺麗なら欠損でも繋げれば治せる最上級ポーション3つを含むポーションを買い揃えた。これである程度の怪我なら怖くなくなった。
気を取り直して、明日こそは森の中で高ランクの魔物と戦うぞ!
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