第327話 3人の総当りの模擬戦

「それでいつ出発する?」


「とりあえず、3人の勝負は見たいからそれが終わってからかな」


3対1の戦いを挟んだが、これは個々の戦いがメインで、俺以外の3人も総当りで戦うこととなっていた。その勝敗の結果や、その戦い内容が気になるから俺がこの国を発つのはそれらを見終わってからがいい。


「それもそうだね。じゃあ、明日にルシエルとラウレーナが戦って、その次の日にその勝者とルイスが戦って、最後に2日前の敗者とルイスに戦ってもらうことにするよ」


「了解じゃ」

「わかった」

「ん」


学校長の決めた対戦順に3人はキリッと鋭い顔をしながら了承した。

また、この対戦順はシンプルに俺と戦った順番を考慮しているようだ。


「じゃあ、反省会をして今日は終わろうか」


「忘れてた」


その後、4人でさっきの戦いの反省会をし、宿に帰った。



「ルシエル対ラウレーナの模擬戦…始め!」


次の日、俺の仲間である2人の模擬戦が始まった。

まず、ラウレーナは巣を作らずに、2本の水の線でルシエルへ向かっていった。ルシエルには俺のような水魔装対策の魔法攻撃はできないので、巣を準備して魔法が無理と察してルシエルから巣に入るまで待つかと思った。

ラウレーナはきっと学校長に言われた巣に誰かを自分から入れないといけないというのを試したいのではないかと思う。ラウレーナの今後を見据えて勝ち方まで考える姿勢は尊敬する。


だが、ラウレーナとはいえ、巣を無しにルシエルを相手にするのは苦戦していた。数本の水の線では細かな動きはできない。それではルシエルのスピードでの自動回避は破れなかった。だからほぼ無傷のルシエルにラウレーナは攻撃を一方的に浴びせられていた。


「っ!」


そんな中、ほぼ捨て身のラウレーナの攻撃がルシエルを掠った。だが、その代わりにラウレーナも刀の刺突によって浅くない傷ができた。


「あっ…」


ルシエルに掠った脇腹の部分にラウレーナの水魔装から水の線が伸びていた。ルシエルはそれを取ろうと刀で斬るが、それでは消えなかった。また、それに引っ張られてルシエルはラウレーナから離れることもできない。


「流れ出ろ!ウォーターフィールド」


そんな中、ラウレーナの巣が発動した。もちろん、ルシエルはラウレーナの巣の中だ。

そこからは一方的だった。ギリギリ目で捉えられるレベルの高速で自由に動き回るラウレーナにルシエルの自動回避も間に合わず、攻撃され続けた。ルシエルは苦し紛れにストックのライトランスを放つが、高速移動を可能にしたラウレーナには当たらなかった。



「勝者ラウレーナ!」


ルシエルが気絶したことで最初の戦いはラウレーナの勝利で幕を下ろした。

今度俺がラウレーナと戦う時はラウレーナの巣に連れ込まれるの加味して作戦を立てるべきだな。攻撃を掠っただけで水の線が付くのは回避するのは難しい。それと水の線を取り除く方法も考えておくか。



「ラウレーナ対ルイスの模擬戦…始め!」


この戦いはルイがラウレーナを近づけて巣を発動された時点で負けが決まる。だからルイはラウレーナが近付く前に魔法で倒す必要がある。ルイは俺の魔法を参考にして氷魔法で攻めるかと思ったが、違った。


「燃え尽きろ、ファイアブレス」


「白い炎?」


ルイは普通の赤の炎ではなく、白い炎のブレスをラウレーナに放つ。俺が戦った時は詠唱省略だったから普通の炎だったが、しっかり詠唱するとこんな炎になるのか。

そのブレスはルイの側に付いた水の線と近寄りつつあったラウレーナの水魔装を蒸発させた。また、蒸発させるだけに留まらず、ラウレーナの身体を火傷させる。

ルイはその後も白い炎のブレスを放ち続けた。そのブレスは濃く強固にした水魔装をも蒸発させていた。ただ、火傷まではさせられなくなった。ダメージを受けなくなり、ゆっくりな進みではあるが、ラウレーナはルイに迫りつつあった。



「燃え尽きろ、ファイアレーザー」


そんな中、突然ブレスとは違う魔法が放たれた。その魔法はさっきの広範囲のブレスを一点特化にしたような魔法で、ラウレーナの太腿を貫いた。ルイはブレスばかり放つことでラウレーナの回避するという考えをなくさせてから別の魔法を放ったのだ。


「しっ!」


このままでは負けると思ったのか、ラウレーナはダメージ覚悟でルイへと走って向かった。その瞬間、ルイは少し笑った気がした。


「燃え尽きろ、ファイアブレス」


そう言って放たれた魔法は普通の色の炎に見えた。その中をラウレーナは突き進もうとしたが、それはできなかった。


「雷……」


ルイは詠唱省略で今の魔法が火魔法と雷魔法の複合魔法であることを隠していたのだ。痺れて動けないラウレーナの頭にさっきのレーザーの魔法を構える。


「降参だよ」


「勝者ルイス!」


こうして、この試合はルイの無傷の勝利で終わった。



「ルイス対ルシエルの模擬戦…始め!」


そして、その次の日に最後の模擬戦が始まった。普通に考えれば、ルシエルが負けたラウレーナに無傷で勝ったルイにはルシエルは勝てないように思われる。だが、それは違うとすぐに分からされた。


「くっ…ファイアレーザー」


ルイの放つ魔法をルシエルは持ち前のスピードと自動回避で回避しながらルイへと迫りつつあった。ルシエルはどうしても避けるのが難しい場合のみ自分も魔法を放って相殺させていた。


「アースファイアマイン」


ルイは俺にやったような地雷の魔法を自身の前方に設置した。しかし、それでもルシエルの動きは止められなかった。ルシエルは自動回避を駆使してその地雷の中をほぼ真っ直ぐ突き進んできたのだ。地雷原の中で魔法を放たれても、魔法も地雷も綺麗に避ける。自動回避は全ての攻撃に適応されるようだ。



「…降参」


最終的にはルシエルの刀がルイの首に置かれ、ルイは降参を宣言した。


「勝者ルシエル!」


ルシエルは魔法の直撃を受けず、余波によるダメージはあるが、大きなダメージもなくルイに勝利した。

こうして、全員1勝1敗ずつで3人の総当りは幕を下ろした。

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