第323話 1対3の模擬戦(2)
「はあっ!」
「おっと…」
水の線を利用して近付いてきたラウレーナの拳を避ける。すると、ラウレーナの影からヌルッとルシエルが高速で迫ってくるから、反対側からラウレーナの後ろに回り込む。
「たあっ!」
「うっ…」
ただ、自分の周りをぐるっと回るなんてラウレーナが許すはずもなく、蹴りが放たれる。俺はそれを大鎌でガードして少し後ろに吹っ飛ぶ。
「ちっ…!はあっ!」
そして、そのタイミングを待っていたルイから魔法が放たれる。それを大鎌で斬り消す。
(このままだと…)
さっきから最初にラウレーナが接近し、その時にできる隙を狙ってルシエルが迫ってくる。2対1から逃れるために距離を取ると、ルイの魔法がやってくる。
まだコンビネーションが完璧では無いおかげでルイの魔法の後にすぐさまラウレーナが迫ってこないのが救いだが、いずれはラウレーナはルイの魔法の直後にくるだろう。
「早く誰か減らさないと負けるな」
このまま戦っても俺の闘力か魔力、またはスタミナが無くなって負けてしまう。つまり、俺は何らかの手を打たなければいけないわけだが…。
「ふっ!」
(どっちにする?)
向かってきたラウレーナの攻撃を捌きながらラウレーナとルシエルのどっちを狙うかを考えていた。ルイはどっちかが近くにいる限り大規模な魔法も使えないし、あまり脅威では無い。
防御力が高いラウレーナ、自動回避があるルシエルどちらも生半可な攻撃じゃダメージすら受けない。
(どっちか?いや、どっちもだ!)
どっちかと考えるから迷うんだ。それならいっそのこと、どっちかは決めずに隙ができた方を狙えばいい。
「しっ!」
「らあっ!」
ルシエルが後ろから突き出してきた刀を俺は後ろを見ずに大鎌で下から上へ叩く。本来ならバンザイの状態に近くなっているルシエルに追撃をしたいところだが、目の前からラウレーナが拳を繰り出してきている。
「うらっ!」
「轟け!」
ラウレーナの拳を詠唱しながら屈んで避ける。すると、屈んだ俺の顔にラウレーナは容赦なく膝を繰り出してくる。
「サンダーっ!」
俺はその膝を仰け反って避け、仰け反るついでに後ろに大鎌を振ってルシエルに牽制のために闇の斬撃を飛ばす。
「アロー!」
屈んだ状態から飛びつくようにラウレーナへ向かっていきながら大鎌を下から地面を斬りながら振り上げる。魔法は俺の横に浮いているが、まだ放ってはいない。
「くっ…!」
俺の大鎌がガードしようと突き出したラウレーナの両腕を深く斬る。やっぱり雷対策の水魔装をしている時は防御力が弱くなっている。
しかし、ラウレーナは後ろに一歩下がって大鎌の範囲から出ると、腕を大鎌からすぐに離したため、腕を切断するまではいかなく、俺の大鎌は空を斬った。感触的に骨まで届いたかどうかぐらいだな。
ラウレーナに追撃をしようかと思ったが、後ろから危険感知が反応したからやめる。
「しっ!」
「いっ…!」
後ろを振り向きながら身体をラウレーナの方に動かしたが俺の肩から脇までを軽く斬られた。防具があった場所は無事だが、肩からは血が流れる。
「はっ!」
ルシエルは俺にさらに刀を振ってくる。それを大鎌で防ぎつつ、後ろから向かってきているラウレーナに雷魔法の矢を1本放つ。
「はあっ!」
今度は俺から右手に持った大鎌をルシエルに振るが、自動回避で簡単に避けられる。
「サイズ!」
しかし、俺は左手に無属性魔法で大鎌を作ると、それをルシエルに横から振る。
「っ!?」
ルシエルはその突然の攻撃も自動回避で何とかしゃがんで避ける。だが、そのタイミングで俺は左手の無属性魔法の大鎌を手放す。すると、その大鎌は回転してしゃがんだルシエルに攻撃を仕掛ける。これは魔法だから手放しても操作が可能だ。
「うぐっ!」
無理に回避してしゃがんだルシエルはそれを完全には避けられず、右肩に無属性魔法が突き刺さる。
「次は…!」
後ろからラウレーナが高速で迫ってきている。ラウレーナに残りの雷の矢を2本放ちつつ、俺はラウレーナを迎え打つべく大鎌を振る。
「あっ…」
しかし、ラウレーナは俺の左右の地面につけた水の線を1本解き、半円を描いて俺の横から迫る。もちろん、前に振った大鎌はラウレーナには当たらない。ルシエルに夢中になり過ぎてラウレーナの対処がおざなりになってしまった。
「おぐっ!」
何とか大鎌を引き戻して盾のようにして、ラウレーナの拳をガードできたが、強い衝撃が腕に伝わる。
「なっ!」
だが、俺はその衝撃で吹っ飛ぶことは無かった。なぜなら、さっき解いた水の線がいつの間にか俺の腹に巻き付いていたからだ。俺は引っ張られるようにしてラウレーナから離れられなかった。また、もう一本も俺の胸に巻き付けて俺を逃がさないようにする。
「でも、そうすると自慢の高速移動が……」
俺はそこでルシエルが近くから居なくなっていることに気付く。そして、そのすぐ後に大きな失敗をしたと察した。
俺はルイを放置していた。その間、ルイはただチャンスを待っていただけで何もしなかった?いや、ルイに限ってそれは無い。
「馬鹿っ!殺す気か!」
俺の低レベルの魔力感知を持ってしても、遠くでも分かるほどルイは魔法に魔力を込めていた。その魔力量は余裕で俺の最大値の半分以上は使っている。
「ラウレーナっ!」
「逃がさないよ」
俺にはラウレーナからの水の線が出ているからすぐに逃げられない。魔法が放たれる前にラウレーナを倒す時間なんてありはしない。
「氷魔装!氷身体強化!」
俺は魔装と身体属性強化を急いで防御特化の氷魔装と氷身体強化にし、闘装と身体強化を最大まで強めたその時だった。
「ファイアサンダーノヴァ」
俺とラウレーナへ炎と雷の巨大な塊が落ちてきた。
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