第322話 1対3の模擬戦(1)
「そんなピリピリしないで、それらは一旦忘れてまずは反省会をしようか」
明後日の戦いへ意識を向けていた俺達に学校長はそう言った。そんなことを言うなら先に反省会をしてから言ってくれればよかったのにと思った。とはいえ、学校長の言う通り、今は明後日のことを考えるのではなく、反省会をした方がいいよな。
それからは昨日までのように反省会をした。
俺の良かった点は初めて見た地雷のような魔法を警戒し、対処できていたことだ。食らったのも最初の1回のみで、その後は食らわなかった。逆に悪かった点はもちろん、焦って至近距離でストックを使ったことだ。あれは俺の方が魔法の威力が強かったからまだ良かったが、威力が同程度やルイの方が上だったら俺はあの時点で負けていた。俺は【魔攻】に比べ、【防御】が低過ぎるから今回のような下手を打つと自分の攻撃でやられることになる。
また、ルイの良かった点は自分の魔法の範囲に俺を入れさせた手腕だ。ラウレーナの巣と違い、俺にあれを避ける選択肢はほぼなかった。悪かったのはあの魔法についてだ。ルイは俺に無属性魔法を使って空中を歩けるなんて知らなかったが、それでも地雷の魔法が一辺倒だった。例えば、上に誰かが通っただけで発動する地雷の魔法を別に作っていたら俺でも対処は難しかっただろうとのことだ。
「それじゃあ、今日は解散ね」
反省会が終わると、明後日に備えて少し早めに俺達は宿へと帰った。
「ほぼ一日ずっと1人は久々だな」
次の日、みんなは学校の地下に行ったため、俺は1人になっていた。ここのところ特訓ばかりだったので、1人でゆっくりするというのは久しぶりだ。
「俺も何か考えておかないとな……」
3人とは違い、俺はフォーメーションなどは考える必要は無いが、作戦は考えた方がいい。
「まずは誰を狙うかだよな…」
その時々の状況にもよるが、誰から順番に狙うかくらいは考えておいた方がいいかもしれない。
「……ルイからいきたいけど、難しいよな」
1番は後ろから高威力の魔法で援護してくるであろうルイが厄介だ。だが、ルイからやるにはその前にラウレーナとルシエルの間を抜けないといけない。それはかなり難しいだろう。
「いや、逆にルイは最後でいいかもな」
俺がラウレーナやルシエルに近寄っている間はルイは大胆に魔法は使えないだろう。また、ルイを狙うことで誰かを誘い出すこともできるかもしれない。これなら逆にルイは放置でいい。
「そうなると最初はルシエルだな」
ルシエルのあのスピードはなかなかに厄介である。ラウレーナに集中して対処していたら急に後ろから攻撃されるという展開もあるだろう。
「あ、でもラウレーナもあの魔法を使えば速いんだよな。それに身代わりになられると面倒だよな…」
ラウレーナも水の線を使ったらスピードはルシエル以上のものになる。また、他の2人にとどめを刺そうとしたタイミングで、その間にラウレーナが入ってガードされるとその機会は潰れる。
「あー!分からん!なるようになるだろ!」
3人がどうやって戦ってくるか分からない現状では、作戦という作戦も考えにくい。それならいつものようにその場に合わせて臨機応変に対処していったほうが上手くいくだろう。
その後はもう余計なことは考えず、精神統一のついでに詠唱省略の練習をしながら1日を過ごした。
そんなこんなで次の日がやってくる。
「さて、両者準備はいいかな?」
「ああ」
「良い」
「うん」
「ん」
次の日、俺と3人が向かい合って、お互いにいつ戦いが始まっていいように構えていた。
「ヌルヴィス対ルシエル、ラウレーナ、ルイスのハンデあり模擬戦開始!」
その合図で俺は身体強化、闇身体強化、闘装、闇魔装、無属性付与を行う。
「それがフォーメーションか」
俺が強化をしてる間に3人は陣形を組んでいた。
その陣形は1番先頭にラウレーナがいて、ルイが離れて後ろにいる。また、ルシエルはラウレーナの少し後ろでいつでも動けるようにしている。
ピタッ!
俺がよく陣形を観察していると、横に2本の水の線が張り付いた。そして、すぐに危険感知が反応する。
「はあっ!」
「おらっ!」
勢いよく向かってきたラウレーナの繰り出した拳と、俺の振った大鎌がぶつかり合う。ラウレーナは拳に水魔装を増やしているようで、俺の大鎌でもほとんど斬れなかった。
また、ぶつかった瞬間は互角の押し合いをしていたが、ラウレーナの向かってきた時の勢いが止まったことで少しずつ俺が押し始めた。
「しっ!」
「気付いているよ!」
そんな俺の後ろからルシエルが刀を突き刺してきた。俺はそれを左に避けて対処する。これは昨日考えていた展開だな。
「おっと!」
2人から離れた俺にルイの火魔法のランスが迫るが、大鎌で斬って消す。
(やっぱりキツイな!)
こうして、3対1のなかなか大変な模擬戦が始まった。
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