第319話 3人目との戦い
「じゃあ、お互いに反省会をしようか」
戦いが終わったので、俺とルシエルの良かった点と悪かった点を4人で話し合い、補足があったら学校長が口を挟むという形の反省会が行われた。
その話し合いでルシエルの良かった点は魔法を目潰しに使ったり、目が見えないのを利用して予備の刀を利用するなどが上がった。また、魔装のオンオフを使い分けたり、余裕を持って躱せるなら最適な選択肢以外も躱し方が選択できるようになったことも成長していた点だった。
逆に悪かった点は目潰しの魔法にそれ以降の使い方がなかったことだ。あの時に目を潰した後に爆発をしていたらもっと有効だった。また、目を潰したからと一気に勝負を決めに行って俺に掴まれたことも悪かった点になる。有利な立場なのだからもっと余裕を持って攻めても良かった。あと、一応最初に広範囲魔法を食らったのも悪かった点である。
ちなみに、俺の良かった点はコンセプトの大鎌と闇魔法によるゴリ押しができていた点である。強引な勝ち方であったが、俺らしくて良かったとの事だ。ただ、ルシエルの初見技に全て引っかかったのは悪かった点である。今回は特に相手は新しい技を使ってくるとわかっているのだからもっと警戒すべきだった。
「それらの反省を活かして明日も頑張ってね」
「ああ」
俺は今日の反省を活かして明日のラウレーナとの模擬戦に臨む。まあ、明日はどう戦うかは既に決めているんだけどな。長年の課題であったラウレーナの対策はちゃんと考えている。
「さて、じゃあ始めるよ」
次の日、向かい合った俺とラウレーナを交互に見ながら学校長はそう言った。俺とラウレーナは共にもう準備万端だ。
「ヌルヴィス対ラウレーナの模擬戦…始め!」
その合図と共に俺は身体強化、闘装を行う。今日は闘力の強化しか行っていない。
「流れ出ろ!ウォーターフィールド」
俺が強化している間にラウレーナは魔法の詠唱を行っていた。
「ところで……何だそれは」
さて、これからラウレーナに向かおうと思っているのだが、ラウレーナを中心として半径4、5mの蜘蛛の巣のような水の線が伸びている。ただ、蜘蛛の巣と違って横の水は斜めだったり、隙間が空いていたり、逆に隙間がほとんどなかったりで不揃いである。その形と魔法の名前からしてこれはラウレーナの巣だな。
「さあ、やってきなよ」
ラウレーナはそこから動く気がないのか、俺がやってくるのを待っている。
これに近い魔法は1回見たので、この魔法がどういうものかは予想はつく。きっとあのラウレーナの巣の範囲はどこでも超高速で移動できるのだろう。つまり、俺があの範囲に入ったらボコられるわけか。
「ふぅ…」
俺は深呼吸をして落ち着いてから詠唱を始める。
「暗がり、凍てつけ…」
「っ!」
俺が詠唱を始めたことにラウレーナは驚く。だが、ラウレーナはその場から動かない。その水魔装に自信があるのだろうな。
「ダークアイスサイズ!」
10m以上の刃が氷の闇の超大鎌が現れ、その超大鎌はラウレーナを横から切り付けた。
「わあっ!」
ラウレーナの巣のどこに逃げても超大鎌からは逃げられないからか、ラウレーナはジャンプして避ける。避けるのには驚いたが、この超大鎌の力はそれだけでは無い。
「なっ!?」
超大鎌はラウレーナを外すと、跳んだラウレーナを再び狙って振られた。この魔法は追尾機能があるのだ。そうでもしないと大きさ故に遅いから当たらないからな。俺の大鎌はほぼ自動で振られるようなものなので、それを参考にしたらこの魔法は作れた。
「このっ…!」
空中で急に回避は無理だと判断したのか、ラウレーナが水魔装に魔力を多く込める。
そんな中、ラウレーナのクロスした両腕に俺の超大鎌が斬りかかる。
「えっ…」
ガンッ!!!!
ラウレーナの小さな叫びをかき消す轟音が鳴り響く。俺の魔法が天井に当たることでこの地下が揺れる程の衝撃がやってくる。
パラパララ……
天井の破片が落ちてくる中、俺の魔法が消えると、ラウレーナも天井から落ちてくる。
「マジか!」
ラウレーナの視線が俺に向かっていることで、気絶していないことに気付いた俺はラウレーナの落下地点に走る。もう魔力はほとんど残ってない。だからこれから長期戦になるのはまずい。
水魔装の効果はかなり弱めたはずなのにそれでもあの一撃を耐えるのかよ。
「流れ出ろ…ウォーターワイヤー…」
ぱんっ
ラウレーナが出した水の線が俺の横にくっ付く。
「らあっ!」
「はあっ!」
勢いよく降りてきたラウレーナの蹴りと俺の振った大鎌がぶつかり合う。
「うぐっ…!」
闇身体強化をしていないことで、大鎌の重さがあっても、スピードの乗ったラウレーナの蹴りに押し負けた。
ラウレーナは俺の大鎌を踏む形で地面に着地する。
「りゃあっ!!」
ラウレーナはそのまま片方の足で大鎌を踏みながら、もう片足で蹴りを放ってきた。
「ぎっ……!」
それを腕でガードするが、闘装は砕かれてベキベキと腕で嫌な音が鳴る。大鎌を握っているおかげで吹っ飛ばされずに済んだが、その代わりに衝撃が全て腕にくる。
ラウレーナは続けて蹴りを放ってくるが、俺は未だに大鎌が踏まれれて動かせない。
俺は大鎌を手放して下がるか、大鎌を持ちながらもう1発食らうかの2択を選ぶしかない。
「くそっ!」
俺は大鎌を手放して後ろに逃げる。ラウレーナの蹴りは避けれたが、俺は失敗したのを察した。
「あっ…」
俺の逃げた場所はラウレーナの巣の中だった。急いで逃げようとするが、その必要はなかった。
「かふっ」
……バタンっ
「あ」
ラウレーナが水魔装を解いて血を吐き出して倒れたのだ。よく見ると、ラウレーナの両腕は不自然な方向に折れ曲がっている。そこを見る余裕すらさっきの俺にはなかった。だからラウレーナは蹴りだけを放ってきたのか。
「勝者ヌルヴィス!」
俺は何とかラウレーナにも勝つことができた。しかし、後1分…いや、後30秒ラウレーナに意識があったら巣に飛び込んだ俺はどうなっていただろうか?
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