第318話 2人目との戦い

「さて、じゃあ誰から戦いたい?」


次の日、学校長は俺と最初に戦うのは誰かを3人に聞いた。


「はい!」

「余じゃ!」

「ん」


「3人ともか…じゃあ3対1ってことで」


「いや、ふざけんな!」


3人が手を挙げて返事をしたからってこの3人と同時に戦ったら俺に勝ち目は絶対にない。俺が3人からリンチにされるだけだ。


「じゃあ、少し早く手を上げれたルシエルからね」


「よしっ!」


結局、【敏捷】?を活かして1番に手を挙げたルシエルと戦うことになった。


「明日はラウレーナで、明後日はルイスね」


また、接近戦を行うことで培われた反射神経から2番目に手を挙げたラウレーナが明日で、ルイが最後の明後日となった。



「それじゃあ、2人とも準備はいい?」


「うん」

「ああ」


俺とルシエルはお互い武器を握りながら向かい合って学校長に返事をした。


「ヌルヴィス対ルシエルの模擬戦…始め!」


その合図で俺は身体強化、闇身体強化、闘装、闇魔装を行う。ルシエルも光身体強化、光魔装を行う。


「しっ!」


俺よりも強化が少ない分、最初に動いたのはルシエルで、俺に高速で迫ってくる。


「ふっ!」


ルシエルが近くに来た時には俺も強化が終わっていた。向かってくるルシエルに大鎌を振り下ろすが、それは難なく躱される。光魔装の自動回避だな。


「しっ!」


俺の横に回ったルシエルが俺に向かって刀を振ってくる。


「闇れ」


「っ!?」


俺はそのタイミングでストックしていたダークバーンを発動させる。


「いきなり使うのか…」


「普通に闇魔法を使いたいからな」


自爆とも取れる使い方のダークバーンだったが、ルシエルに致命傷はなさそうだ。元々自爆で使う前提でストックしたから最大まで魔力を込めてなかったせいもあるが、自動回避が働いて魔法が発動中に高速で範囲外に出たからというのが大きいだろうな。

とはいえ、それなりのダメージは入ったようだ。


「今度は俺から行くぞ!」


ルシエルに休む暇を与えず、今度は俺から迫っていく。


「ふっ!」


そして、ルシエルの左肩を狙って俺は大鎌を振り下ろす。こうすれば、ルシエルは俺から見て避けやすい左側に避けるだろうと思っていた。


「なっ…!」


しかし、俺の予想は外れ、ルシエルは俺へ1歩踏み出してきた。それと同時に危険感知も反応する。


「光れ!」


「らあっ!」


至近距離からルシエルはストックしていたライトランスを放ってきた。俺は強引に大鎌を手元に戻し、闇魔装をかなり纏わせてその魔法を斬り消す。


「はあ!」


「ぐっ…!」


強引に大鎌を引き寄せたことで俺に隙ができ、防具の隙間を縫って脇腹をルシエルに殴られる。衝撃を殺すために、堪えずにわざと横に吹っ飛ぶ。だが、ルシエルは自慢のスピードでそんな俺の先回りをして後ろに回り込む。


「サイズ!」


「っ!」


そんなルシエルに俺は詠唱省略の無属性魔法を放つ。ルシエルはびっくりしながらも問題なくそれを避ける。


「はあっ!しっ!」


そして、そこから流れるように俺は連続で大鎌を振るが、それはどれも避けられる。また、前みたいに自動回避が避けやすいように確実に避けるということも無くなっており、避け方を完全に予測はできない。


「輝き、燃えろ」


「っ!暗がれ」


接近戦をしてる中、ルシエルが複合魔法の詠唱を始めた。俺も対抗するために詠唱を始める。ただ、複合魔法では先に詠唱しているルシエルに遅れるので、普通の魔法にする。


「ライトファイアボール!」


「ダークランス!」


どんな魔法が来るかと思ったが、ルシエルの詠唱は普通のボールの魔法だった。魔力感知でそれが分かって警戒を少し緩めたのが間違いだった。


「眩しっ!」


1、2歩離れただけでまだ近かったことから、ルシエルの魔法が目の前に現れた。そのルシエルの魔法は光魔法と火魔法を活かしてかこれでもかと眩しく輝いて視界が真っ白になった。これは普通のボール系の魔法じゃなかった。それを間近で見た俺は突然の光で目が潰された。


「くっ!」


俺は目を閉じてからその魔法を俺の闇魔法で相殺する。その後、目が治るまでの時間を稼ぐために後ろに飛び退くが、ルシエルは当然追ってくる。


「はあっ!」


ルシエルの攻撃を俺は大鎌で防ぐ。気配感知と魔力感知があればルシエルの居場所が分かるし、危険感知で攻撃も感知できる。だから目が治るまでの数分の時間を稼ぐのは難しくない…と思っていた。


「しっ!」


ルシエルからの刀の刺突の攻撃を俺は大鎌でガードする。


カンっ…


「ん?」


その攻撃は異様に軽かった。何だ?と気配感知に意識を集中すると、刀は俺の大鎌とぶつかって地面にゆっくりと落ちていく。刀を手放したのか?


「おっ!?」


そう思った瞬間に刀が勢いよく向かってきた。ルシエルが手放した刀を蹴ったのだ。俺は慌てながらも軽くのけ反りながら大鎌で刀を大きく弾く。これでルシエルが刀を取りに行く時間を稼げるし、素手で向かってくるなら大鎌で攻撃するだけだから問題ないと思っていた。


「らあっ!」


「え!?」


しかし、すぐに接近してきたルシエルは刀を振ってきた。さっきの刀はマジックポーチから取り出した別の刀だったのか!?


「くぅ…ぐっ!」


時間を稼ぐために力を込めて大鎌を振って刀を飛ばしたことで俺の隙はかなり大きかった。そこからのルシエルの連撃は止められなかった。何ヶ所も身体に浅くない斬り傷ができる。


「うぐっ!」


そして、ついには脇に刀が刺さってきた。だが、それは俺の罠だ。


「捕まえた」


「っ!」


俺の腹から刀を抜く前に俺はルシエルの腕を掴む。刺した後に抜くのは結構大変だからな。

俺はその腕を持ってルシエルを宙に浮かし、地面に全力で叩き付ける。


「かはっ…」


「もういっちょ!」


俺はもう1回ルシエルを持ち上げると、再びルシエルを地面に叩き付ける。そして!片手に握っている大鎌を地面に横になったルシエルの首に持っていく。


「ま、参ったのじゃ」


「勝者ヌルヴィス!」


「ふぅ…」


何とか勝つことができた。そろそろ目が治って目を開けるが、思っていたよりも俺の傷は多く深かった。


「これじゃあ、どっちが勝者か分からんな」


ルシエルの方が俺よりも生傷は少なく見えるため、この戦いを見ていない人だとルシエルが勝者に見えるだろうな。


「それにしても…」


俺はルシエルの策に終始引っかかり続けたな。だが、最後は自慢の攻撃力でゴリ押しができたから良かった。だが、明日や明後日の試合も策に引っかかるようでは負ける可能性があるな。

とはいえ、今日は白星を確保し、俺の成績は一勝一敗となった。

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