第316話 1番戦いたいのは誰?

「今日までみんなよく頑張ったよ。シンプルな強さを求める分、ヌルヴィスは誰よりも大変だったと思うよ」


「ははは……」


魔族事件による怪我謹慎期間がおわってから3ヶ月が経ち、ようやくこの場での特訓が一段落した。

この3ヶ月は色々なことがあった。まず、俺に関しては学校長の手加減ミスで俺の手が切断される事件があった。慌てて学校長が回復魔法で治してくれた。この他にも大怪我に近い怪我を負うことは多々あった。だが、これは咄嗟の手加減に学校長が失敗するほど強くなれたということでもある。


また、ラウレーナとルシエルとルイは魔法を開発しつつ、たまに誰にも見えないところで学校長と戦って新しい魔法の実験や研鑽を重ねていた。ルイも最後の1ヶ月は直接学校長に教えて貰っていた。つまり、ルイは学校長にダメージをあたえたのだ。俺がやったように初見騙しだったそうだが、完全な魔法職であるルイが学校長にダメージを与えるのはかなり凄い。

さらに、ラウレーナ、ルシエルの2人も学校長にダメージを与えることに成功していた。


「さて、今日までお疲れ様。卒業試験を兼ねてこの中の誰かと戦ってもらうことになるけど、誰と特に戦いたい?これからの戦いは隠れてやるのもつまらないから1番最初の人以外には手札はバレることになるよ。だから1番勝ちたい相手と最初に戦わせるからその相手を指差してね」


学校長の言う通り、ここで今更個々で隠れて戦うのは面白くないな。どうせなら他の3人がこの3ヶ月でどれだけ強くなったかは戦って感じるだけでなく、第三者目線でも見てみたい。


「じゃあ、せーのっで指を指してもらうよ」


学校長がそう言うが、俺は誰を指差すか悩んでいた。圧倒的防御力を誇るラウレーナは俺がこの3ヶ月で研いたスキルを試すのにうってつけだ。また、ルシエルは俺と近い戦闘スタイルながら、俺と違って多数の魔法を使ってくるから今の俺の強さを量るのにピッタリだ。また、賢者のルイには強い魔法使いに俺の戦闘スタイルが通用するのかを試せる。

だからなかなか決められない。だが、俺は決めた。


「せーのっ!」


俺達4人は一斉に誰かを指差す。その結果はかなり偏っていた。


「まず、ヌルヴィスが3票。人気だね〜」


まず、俺以外の全員が俺を指差したのだ。そんなに俺と戦いと思ってくれているとは光栄であると同時に内心かなりキツイなと感じ、冷や汗が流れる。この3人の初見騙しは怖過ぎる。

そして、俺が指を指したのは……。


「まさか、私に指差すとはね。特訓でかなり戦ってると思うけど?」


俺が指差したのは学校長だった。もちろん、勝ち目が無いのくらいは分かっている。だが、指を指して戦い理由があったのだ。


「学校長は特殊魔法を使って様子見無しで、さっさと俺を倒す気で戦ってくれ」


「……なるほどね」


俺の特訓では学校長の特殊魔法は使われなかった。だから俺は特殊魔法の強さを味わってみたいのだ。


「今後は特殊魔法を使う敵と戦うことがあるかもしれないしね。いいよ」


学校長は俺と特殊魔法を使って戦う許可を出した。


「他の3人も特殊魔法を使う敵に会うかもしれないからこの戦いはよく見てて。特殊魔法は普通の魔法とは全く違う性能をしてるから対応は大変だよ。だけど、その分やれること自体は少ないから対策だけならできなくはないからね」


学校長はそう言うと、俺達から離れるために歩く。


「流石にヌルヴィスだけ1日で何戦もするのは可哀想だから今日を含めて7日間で1日1試合で戦っていくよ。まずはヌルヴィス。私と戦う準備をしな」


「おう!」


俺は3人から離れて、軽く身体を伸ばして学校長と戦う準備をする。



「審判はラウレーナがお願い」


「分かったよ」


学校長のお願いでラウレーナだけが他の2人よりも少し前に進んで俺達に近付く。


「では、両者準備いい?」


「いいよ」

「ああ」


俺は大鎌を構え、学校長は棒立ちだが、お互いに戦う準備は完了した。


「ヌルヴィス対学校長の模擬戦始め!」


「燃え尽きろ、」


始めの合図と同時に学校長が詠唱をするが、俺はその間に俺は身体強化と雷身体強化と闘装と闇魔装を行う。


「ファイアランス」


学校長は普通に真っ直ぐ俺に魔法を放ってくる。学校長と俺は15mほど離れているからそれを避けるのは簡単だ。だが、学校長は必ず使うはずだ。


「捻じ曲げろ、転移」


「っ!?」


学校長が何かの詠唱をした瞬間に後ろから魔力感知が反応し、目の前の魔法が消え、遅れて後ろから危険感知が反応する。俺は魔力感知に反応して後ろに大鎌を振ると、急に後ろに現れていた火魔法を大鎌でかき消した。

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