第313話 療養明け

「よしっ!2週間経った!」


「やっとだね!」


「待ちくたびれた」


「ついこの前まで療養中だったとは思えないくらい元気なのじゃ…」


昨日早めに寝て、朝早くに起きた俺達3人は特訓禁止の2週間が終わったのを喜んだ。ただ、この2週間特訓が許可されていたルシエルはこのテンションについていけていないようだ。


「よし!行こうか!」


「まだ朝?の3時じゃ!まだ学校は空いてないのじゃよ!」


今すぐ学校に行こうとした俺を服の裾をルシエルが掴んで止める。


「仕方ない。ならランニングに行ってくる」


「…それならいいのじゃ」


俺は早く特訓を再開したい気持ちを抑えるためにランニングをすることにした。



「…でも、この2週間はあってよかったかもしれない」


俺はランニングしながらこの2週間を振り返っていた。

この2週間で俺は自分に何ができるのかをずっと考えていた。そして、仮にできないことがあったら、それの代わりになる何かがあるのか、代わりもなくてそれができないことなのかなど色々と考えていた。試したいことを思い付いたのに試せないのは中々の苦行だった。

また、ラウレーナやルイも同じように自分の魔法について考えていたようだ。あ、ちなみにもルイも俺達と同じように謹慎を言い渡されていたから、一緒の宿で同じ時間を過ごしていた。部屋にいる3人が座りながら空虚を見つめて「うーん…」と唸っている様子は清掃に来た宿の者に気味悪がられた。




「こんな朝早くから来なくてもいいのに」


「…これでも止めた方なのじゃ」


結局、俺達は6時前から学校の地下に訪れていた。それを感じ取った学校長は眠そうに地下にやってきた。


「よし!遅れを取り戻すぞ!」


「おう!」

「ん!」


ちなみに、この地下にはルイも来ている。ルイも魔法を試せる場所に困っていたそうだ。そのおかげで森に来てくれていたんだけどさ。だからルシエルにルイにも地下を使わせていいかを学校長に確認ひてもらった訳だが、快く許可してくれた。

ちなみに、地下を使うが、ルイは学校長からの指導は貰わないそうだ。これはルイのプライドの問題らしい。俺と同じように学校長にダメージを与えるまでは学校長からの直接の教えは受けないそうだ。


あ、ちなみにルシエルが魔族であることはルイには隠さず話した。というか、あの戦いの後でそれを誤魔化すのは無理だ。ただ、それを伝えた時のルイの驚きは小さかった。何でも、身近に魔族よりも魔族みたいなステータスの奴がいるからあまり驚きは薄いらしい。



「サイズ」


4人ともある程度距離を取って離れたのを確認した俺は無属性魔法を使ってみる。


「ふむふむ」


氷魔族と戦った時と同じように無属性魔法は詠唱省略で使えるようだ。まあ、魔力と違って闘力は形を決めるだけでいいからな。


「ランス」


次は無属性魔法でランスの魔法を使ってみる。サイズよりも少し発動に時間がかかったが、問題なく使える。大鎌以外でも無属性魔法なら詠唱省略できるようだ。また、他の魔法と同じように形は変えられるようだ。


「アタック!」

「スラッシュ!」


大鎌を振りながらそう唱えると、大鎌から無属性魔法の弾や斬撃が放たれる。


「シールド」


今度は普通に無属性魔法の盾を出してみる。


「なるほど?」


今までの無属性魔法のアタックとスラッシュと今回発見したサイズやランスなどの違いが分かった。

その違いとは、大鎌を通すか通さないかだ。アタックとスラッシュは大鎌を通して放ち、サイズやランスは俺の手から生み出すのだ。

前者のメリットは大鎌での攻撃に追加効果を与えると共に、大鎌を振る力が増すと少し魔法の勢いも増すことだ。後者のメリットは大鎌を振らずに作れることだ。また、アタックとスラッシュは大鎌を振らなくても放てるが、それならサイズやランスの方が威力が出ることもわかった。

ちなみに、シールドは後者に分類されていた。


「よし」


ここまで実験し、今1番気になっていたことを試すことにする。


「暗がり、守れ!ダークシールド!」


俺は無属性魔法と闇魔法、闘力と魔力を使った複合魔法に挑戦した。


「……何だこれ?」


「なにそれ?」


その出来は複合魔法を行った俺だけでなく、近くで見ていた学校長も疑問に思うものだった。


「つぎはぎ?」


「ボロ雑巾?」


それは複合したと言うよりも、ただ適当に2つを縫い合わせたかのようなお粗末な出来だった。しかも闘力と魔力の消費量と比べて薄っぺらいものができた。


「えいっ」


カシャン……


学校長が試しに殴っただけでそれは砕け散った。盾の癖に【攻撃】を持たない学校長の軽いパンチで壊れてしまったのだ。


その後はイメージを変えながら何度か同じように魔法を使った。しかし、それでも結果は変わらなかった。無属性魔法をシールドからアタックやスラッシュに変えても1m持たずに勝手に崩れる程度の強度しか無かった。



「お互いが邪魔をしあって上手くいってないね。複合魔法のスキルレベル足りないからかな?」


「くそ……」


俺の実験は失敗に終わった。ただ、闘力と魔力を使った魔法が複合魔法でできることが分かった。後は複合魔法のスキルレベルを上げてからのお楽しみということになる。

さて、次は闘装と魔装、魔装と魔装を複合できるか試してみよう!

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