第309話 確認と反省
「ところで、ラウレーナの方は何があったんだ?」
俺はルシエルが落ち着いたところで、ラウレーナにそう質問する。
俺は別れた後にラウレーナ側で起こっていたことを全く知らないのだ。
「それを言うなら僕もヌルヴィス達の方で何が起きていたのか気になるんだけど」
俺の質問にラウレーナはルイの方を向いて質問で返す。確かにルイの登場はラウレーナは知らないよな。そう考えると、ラウレーナの方よりも俺達の方が出来事的には色々あったのかもしれない。
「まあ、まずは僕から話すよ」
どっちから言うかと言う話になる前に、ラウレーナは自分から何が起こったのかを話してくれた。
内容をまとめると、傷を負う度に回復する魔族と戦っていたが、新技が破られ、その反動で弱っているところに攻撃されて負けた。その後、負けて死にかけながらも水魔装で血を押えて延命していたところに学校長が現れたって感じだそうだ。
「研究段階の新技を実戦で試したのは失敗だったね。でも、それを使うしか勝ち筋が無かったから、仕方なかった。攻撃面と防御面でもまだまだだし、新技も荒削り過ぎたよ」
ラウレーナは魔族を追い詰めるところまでいったそうだが、あと一歩届かなかったようだ。ただ、ラウレーナは自分で惜しかったとは言わないけどな。
「でも新技は気になるな」
ラウレーナの新技とやらを俺は全く知らない。まだ俺の前で試したことすらないのだろうが、魔族を追い詰める程のものは興味ある。
「完成したら戦ってたっぷり味合わせてあげるからね。その時はついでに負けもプレゼントしてあげるよ」
「はっ!俺だって新しく……」
意気揚々と俺も無属性魔法の新たな使い方を見つけたと、ラウレーナに言い返そうとした。しかし、ラウレーナの水魔装をあの無属性魔法で突破はできないだろう。
あれは対魔法使いに特化した能力だ。詠唱省略のように高速で魔法を使われるのは、戦っている魔法使いにとってはたまったもんじゃない。
「…完成する時を楽しみにしてるよ」
「ボッコボコにしてあげるからね!」
これは至急、対ラウレーナに役立つ何かも考えておかないといけないかもしれないな。
…そんな簡単に思いついたら苦労しないけどな。
「それでヌルヴィスの方は何があったの?」
「あーー、それがだな」
俺は逃げて氷魔族との戦闘が始まってからのことを1から俺が気絶するまでのことを話した。
「ヌルヴィスの方は魔族を殺れたんだね。僕のところの魔族よりも強かったらしいのに」
「…3対1で脚を犠牲にして不意打ちで何とかだけどな」
正直、あれはかなり運が良かっただけで、全く勝った気はしない。もし、あの氷魔族が最初から皆殺しをするつもりだったら、間違いなく俺とルシエルとルイはこの場にはいなかった。
それに比べてラウレーナは最初から殺しにこられていたはずだ。それなのに、良い勝負をして生き残れたのは凄いと思う。
ちなみに、ラウレーナと戦った魔族が自分で氷魔族の方が強いと言っていたらしい。
「ルイスが起きたらお礼を言わないとね」
「ああ、本当にな」
ルイはまだ寝ているが、起きたらお礼を言うつもりだ。ルイは俺達の命の恩人だからね。ルイが居なかったら、俺はこの場にいなかった。
「まあ、それを言うなら学校長と…あの魔族にもお礼は言わないといけないけどな」
「そうだね」
学校長には素直にお礼を言えるが、獣人国で圧をかけてきた魔族には素直にお礼を言えるか微妙だ。まあ、会ったら絶対に言うが、身体があの時を思い出して震えなければいいけど…。
「それで、ここから先の話はルシエルにしかわからないから、教えてくれないか?あの学校長と現れた魔族が誰なのかも含めて」
俺が気絶した後のことはこの場ではその後も起きていたであろうルシエルにしか分からない。
それにそろそろあの魔族のことも聞きたい。ずっとルシエルを探していたようだが、敵ではなかったし。
「分かったのじゃ。主が気絶してからのことを話すのじゃ」
そう言うと、ルシエルはラウレーナも俺も知らない、あの後のことを話し始めた。
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