第304話 別の場所での戦いの終結
「はあっ!」
「ぎゃはは!!もっとがんばれがんばれ!」
ラウレーナは回復魔族とほぼずっと接近戦を繰り広げていた。その際にはもちろんお互い攻撃を繰り返していた訳だが……。
「くっ……はあ…はあ…」
「おいおい!どうした?応援してんだからもっとやる気を見せろよ」
お互いの見た目には大きな差が生まれていた。回復魔族は相変わらず、傷がすぐ治るので無傷でいる。
しかし、ラウレーナには全身に生傷が付いている。それは回復魔族が急所を逸らすようにわざと全身に攻撃しているせいもある。そのおかげで致命傷は避けられている。とはいえ、そこそこ深い刺傷もつき始めている。水魔装で傷からの出血は抑えているが、それでも無視できない量の血が出て流れている。
「流れ出ろ!ウォーターボール!」
「だから意味の無い魔法を使うなって」
ラウレーナが魔法を使うが、それに当たったところで【魔攻】が無いからダメージにはならない。だが、執拗に魔法を使ってくるので、途中から回復魔族も魔法を避けるようになった。その結果、魔法は後ろの木に当たるが、木は濡れるだけで全くダメージを受けていない。
「しっかしさ、勝ち目が無いのによく粘るな」
「はあー、ふぅー」
回復魔族は次々と無駄話をラウレーナに話していく。その間にラウレーナが息を整えているが、それは回復魔族も分かっているのだ。わざと息を整えさせることでもっと長く甚振りたいのだ。
とはいえ、ポーションを取り出そうでしたらすぐに攻撃をする。
「あっ!もしかして俺の魔力切れを待ってる?」
「…!」
ラウレーナは図星を疲れたのか、ラウレーナの身体がピクっと動いたのを回復魔族は見逃さなかった。
「それは残念だったな。確かに魔力は減ってるが、まだ半分以上は余裕であるぞ?」
「え…?」
その答えにはラウレーナは驚愕した。回復魔装をしてても傷を治す以上、その都度魔力を使っているのにまだそんなに魔力が残っているとは思っていなかった。
魔力感知ができないのでラウレーナは回復魔族のブラフの可能性も考えるが、実際にまだ6割は残っているのだ。
「元々俺の魔力が多いのはあるが、この回復魔装での回復は魔力消費がかなり低いんだぜ」
逆にだから他の魔族と戦った時に長期戦になることが多くて、ラウレーナが疲れていても自分は疲れないほどのスタミナも獲得している。
「ははっ!絶望したか?今更降参しても遅いぞ?もう甚振って殺すのは決定事項だからなっ!」
カミングアウトをされてからラウレーナが無言なのを勝ち目がなくて絶望したと捉えた回復魔族はテンションが上がっていた。
今まで勝利を願って必死に粘っていたのが無駄だったと知る。だからいつもこれを伝えた時の相手のリアクションが好きなのだ。
「そうなのか」
「あ゛?」
しかし、ラウレーナのリアクションはそれだけだった。それが無駄な強がりに見えて回復魔族は苛立つ。
だが、それが強がれでは無いとすぐに思い知らされる。
「予備が不発に終わらなくてよかった!
流れ出ろ、ウォーターボール」
「は?」
ラウレーナは突然真後ろに魔法を放つ。それは木に当たって消える。
「流れ出て、集まれ!ウォーターバインド!」
「なっ!?」
周りにらある木から水が回復魔族へと伸びる。それは全方位からで、到底全てを回復魔族は避けられなかった。1つに捕まったら動きが悪くなって次の水にも捕まる。その連鎖で回復魔族は巻き付けられるように縛られた。
「くっそ…動かねぇ!」
回復魔族は動こうとするが、全く動けなかった。いくら周りの木に縛られているとはいえ、微動だにできないのはおかしい。よく見てみると、地面からも水が伸びていた。
「流れ出ろ、ウォーターワイヤー!」
ラウレーナが自分から出した水のワイヤーが回復魔族に巻き付く。
「かはっ…!」
そして、勢いよく水ワイヤーを手繰り寄せることで高速で接近して回復魔族を殴る。回復魔族は身動きできないからさっきまでのように受け流すこともできない。また、スピードが付いたそのパンチはさっきまでよりも遥かに威力がある。
つまり、ラウレーナの攻撃は回復魔族に今までよりも大ダメージを与えた。
それでラウレーナの攻撃は終わらない。別の水ワイヤーを今度は木に巻き付けると、そこまで高速で移動し、再び回復魔族へと高速で向かっていって殴る。ラウレーナはそれを何度も繰り返す。
(やばいっ!!)
何度も回復魔族に攻撃できているが、内心でラウレーナは悲鳴を上げていた。思っていたよりもこの魔法の制御が大変なのだ。少しでも気を抜くと魔法が解けてしまいそうな程だ。
それでも、回復魔族に勝つため、ヌルヴィスの助けに行くために息を止めるように苦しみながら我慢して攻撃を続けた。回復魔族が倒れる姿を信じて。
「燃え尽き、吹き荒れろ!」
回復魔族は回復魔装を解除して、殴られながら詠唱を始める。回復魔族は回復魔法が1番得意なだけで、他の魔法が使えないわけではなかったのだ。
「ファイアウィンドバーン!」
回復魔族は自分諸共、周りにある木や地面を高威力の魔法で吹き飛ばした。
「はあ…!はあ……!!」
支えである木や土が吹き飛ばされたらラウレーナの魔法は意味をなくしてしまう。魔法を解いたラウレーナは膝と手を付いて息を荒くしていた。
そのため、水魔装ももう薄くなっている。
「このガキが……魔力切れ寸前だったぞ」
そんなラウレーナの目の前に魔力ポーションを飲みながら回復魔族がやってきた。
「助けには行けなかったよ……。ヌルヴィス……ごめんね…」
「死ねや!」
回復魔族のレイピアが何度もラウレーナの身体を貫通した。
「クソがっ…。少し休んであいつのとこに行くか」
こうして、一足先に別の場所での戦いが終わってしまった。
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