第297話 ずっと特訓
「火と風、氷と雷」
「燃え尽き、……」
「凍てつき、……」
複合魔法を取得した俺らは学校長が指示した属性で複合魔法を瞬時に出す特訓を行っていた。
簡単そうに見えてこれが案外難しい。特に属性が多いルシエルはまだそれぞれの組み合わせの魔法の想像が甘く、度々失敗している。ちなみに、複合魔法の組み合わせは俺が3種類、ルシエルが10種類ある。
「ヌルヴィスは良さそうだね。ただ、ルシエルはまだこれを続けないといけないかな」
午後に差し掛かったタイミングでそう言われる。やはり、種類の多いルシエルは苦戦している印象だ。
「では、ヌルヴィスは先に2種類の魔法を続けて空中に留める練習をしようか」
俺はルシエルよりも先に別の技術の習得が始まった。
これからやるのは大鎌の魔法だけできている、魔法を同時に複数出している状態を他の形の魔法でもできるようにすることだ。
特訓の仕方も単純で、先に詠唱した魔法を崩さないようにしながら次の魔法を出すというだけだった。
「……上手くいかないな」
しかし、思っていたよりも上手くできない。どうしても先に出した方の魔法が崩れてしまう。それは先に出した魔法を強く意識してもそうなのだ。
「気分転換に詠唱省略の特訓のやり方を教えようか?」
「っ!お願い!」
行き詰まっていた俺を見て、学校長が息抜きがてら、詠唱省略のやり方を教えてくれるそうだ。
「まず、詠唱省略で魔法を作ろうとしてみて」
「ダークサイズ!」
試しに省略して詠唱をするが、当然ながら魔法は出てこない。
「どうだった?」
「魔力が集まらなくて、魔法としての形にもならない感じだった」
そもそも詠唱省略になると、魔力が魔法にすらならない感覚があった。
「詠唱省略は複合魔法のように何度も詠唱して魔力を魔法にするようにしていくしかないよ」
「まじか……」
要するに、詠唱省略を取得するには複合魔法と同時に魔力操作のスキルレベル上げをした時と同じような地味な特訓を繰り返すしかないのか。
「頑張ってね」
「おう」
また、翌日にはルシエルも複合魔法の瞬時の発動をマスターし、俺と同じ特訓に入った。
それからはその2つの特訓をずっと続けていた。時々魔法は2つ出すことに成功する時があったが、詠唱省略の方は特にこれといった変化はなかった。
「轟き、凍てつけ!サンダーアイスサイズ!」
「…轟き、凍てつけ!サンダーアイスランス!」
さらに、2週間に1、2回ほどのペースで俺とルシエルはルイと魔法のみの勝負をしていた。
ルイは俺やルシエルが出した魔法を当たり前のように相殺してしまう。
魔法使い同士の戦いでは、どちらが早く魔法を出せるか、どのくらい強い魔法を使えるかなどの技術勝負か学校長がやった詠唱省略に見せた無詠唱などの騙し合いになるそうだ。というよりも、そこで勝負をしないと単純な魔力量の勝負となってしまう。
結局、俺が魔法でルイに勝ってるのは大鎌の魔法限定の魔法保留能力しかないので、そこを上手く使うしかなかった。
でほとんど負けてしまったが、おかげで魔法使いとの戦い方は多少上手くなった。
こんな感じの生活を1ヶ月ほど過ごしたときだった。
「ちょっと明日から3日間出張が入っちゃったよ」
学校長が突然そんなことを言い出した。忙しい時も学校長はほとんど学校には居たからこれは初めてのことだ。
「わざわざ私を呼ぶほどのことは無いだろうに…面倒くさいよ」
学校長は相変わらず自分への評価が高いようだ。
「ちゃんとその間にも特訓は続けるんだよ?」
「もちろん」
「当然じゃ」
言われなくても学校長が居ないからといってサボるようなことは無い。
「じゃあ、明日からは森で特訓だな」
「そうなるね」
「分かったのじゃ」
学校長が出張で留守にするということで、俺達は3日間森で特訓することとなった。
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