第296話 異なる取得方法

「「んーー……」」


俺とルシエルはほとんど進展のない地味な特訓をしながら唸っていた。身にはなっているのだろうが、じっとして行うこれを少し地味に感じ始めた。


「それならここは……」


「あ、なるほど」


少し離れた場所では学校長がラウレーナに魔法を教えている。まあ、俺達に教えることがないから暇のため、ラウレーナの所にいるのだろう。


「とはいえ……」


だからといって、俺らがのんびり特訓を進めようとは思わない。ラウレーナには悪いが、今日中で先に進んで再び学校長に教えてもらわないといけない。



「とりあえず、進展するまでは特訓は中止ね」


「まあ…そうだよな」


結局進展のないまま今日が終わり、学校長からそう言われてしまった。学校長を持て余していたから特訓中止は仕方ない。


「その間にできるだけ仕事を片付けておくから頑張ってね」


「おう」

「うん」


それからは前のように森での自主練が始まった。まだ成長が実感できているのだが、数時間で魔力は今までよりほんの少し動く程度の成長でしかなく、手まで動かすのは遥か先だ。



「輝き、吹き荒れろ、ライトウィンドスピア…はわっ!?」


そんな中、近くにいたルシエルが突然奇声を発した。


「どうした?」


「魔力が急に動いたのじゃ……」


奇声の理由は魔力が急に普段ほとんど動かない魔力が急に肩付近まで動いたからだそうだ。


「スキルレベルが上がってるじゃ」


急に動いたのは魔力操作のスキルレベルが上がったからだった。毎日ほんの少ししか進んでいなかったから途方もないと思っていたが、スキルレベルが上がることで一気に動くならまだ終わりが見えてきた。

ルシエル曰く、スキルレベルをあと1レベルも上げれば放てるようになりそうだ。


また、その3日後には俺の魔力操作のスキルレベルも上がった。これで俺とルシエルの魔力操作のスキルレベルは同じく4となった。




「輝き、吹き荒れろ、ライトウィンドスピア……あっ!」


「早!?」


俺の魔力操作のスキルレベルが上がってから3日後、ルシエルは複合魔法に成功した。つまり、魔力操作のスキルレベルが5に上がったのだ。

後で聞くと、ルシエルの魔力操作は天才のスキルだそうだ。ということは、ルシエルが魔力操作をレベル4から5にするのは、俺の秀才である魔力操作をレベル2からレベル3にするのと同じ経験値でいいのだ。つまり、俺の魔力操作をレベル4からレベル5にするよりも遥かに少ない経験値で済む。


「とりあえず、今日の帰りに学校に寄って学校長の空いてる日を確認するか」


俺には進展がないが、ルシエルに進展があったので学校長の元へ行っていいだろう。


「…なんかすまんのじゃ」


「構わないよ」


俺より早く取得されたのは悔しいが、別にルシエルが先に取得して強くなるのに悪感情は全くない。




「それで、取得できたのはルシエルだけでいいのね?」


「……そうだよ」


学校長は次の日が空いてるとの事だったので、次の日に地下に集まった。

そして、俺は分かりきったことを確認された。


「じゃあ、ヌルヴィスにも複合魔法を取得してもらおうか」


「え?」


それができずに苦労していたのに、学校長は何を言っているのだ。


「まず、魔力を手まで持っていって」


「ああ」


俺は言われた通りに魔法に変換にしていないただの魔力を手まで持っていく。


「そこで魔法合体を意識しながら詠唱をして」


「暗がり、轟け、ダークサンダーサイズ」


詠唱を始めると、手にある魔力が魔法として変化し、闇と雷の大鎌が手の前に現れた。


「………ステータス」


無言のままステータスを確認すると、複合魔法を取得していた。


「君は魔法合体ができてるからこの方法ならすぐに取得できたんだよね。ただ、今回は足並みを揃えるためと、魔力操作のスキルレベルを上げるために遠回りしてもらったんだよ」


「はあ……」


確かに学校長は魔力操作も同時に鍛える方法以外もあると言ってたし、そもそも魔法合体ができてるから複合魔法はすぐに取得できるとも言っていた。何も間違ったことは言っていないのだが、何かやるせない気分だ。

ちなみに、ルシエルが取得した方法は魔法として変形した魔力を手元まで動かす手段で、俺はただの魔力を手元まで持って行ってから魔法として変形させる手段だ。これらは魔法として変形させるタイミングが違う。魔法として変形させた魔力の方が体の中で動かすのは大変なのか。



「まあ…複合魔法が取得できてから良かったか」


とりあえず、俺もルシエルも複合魔法を取得できたからよしとするしかない。

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