第294話 仲直りと……

「それで……」


「ん」


ルイは俺の長話を軽い相槌をしながら最後まで聞いてくれた。



「……呪われてる?」


「呪われてないわ!」


しかし、聞き終えて言ったことがそれだ。


「何でそんなに強い魔物に出会ったり、トラブルに巻き込まれるの?」


「俺が聞きたいわ」


確かにどの街に行っても何かしらの強い魔物に出会ったり、トラブルに巻き込まれてる気がする。

まあ、魔物討伐をやっているから強い魔物に出会うのは仕方ないが、それにしてもこの量は異常だろう。


「この街でも何かトラブルあるんじゃない?」


「いや、ルイと会うことがトラブルだからもう無いだろ」


「その通りだけど、その言い方はちょっと酷い…」


実際にルイと会ったのはかなりの驚きと衝撃はあった。出会った時のルイの態度を含めて。


「あ、シアはどこにいるんだ?」


ルイは魔法を鍛えにここへ来ている。だが、シアはどこにいるのだろうか?普通にまだ王都に居るのかな?


「ルイ達は親と接触できないようにするためと特訓を兼ねて他国に来てる。だからシアも物理職を鍛えるためにヌルも行ってた獣人国に行ってる」


「何だその話は…ん?獣人国?」


何でも、ルイとシアを殴った件で2人の両親とは会うのを禁止されているらしい。何だそりゃ。俺は特訓中に何回父親に殴られたと思ってるんだ。


それは置いておいて、確かに闘装などは便利だから剣聖のシアが獣人国に行くのは良い判断だろう。


「シアは撃砕道場?に入るつもりだったんだけど、そこが不祥事で無くなったから、今1番勢い付いている護守道場に入ったらしい」


「…………え?」


撃砕道場が無くなったのは大会で俺に魔導具を使ったからだ。また、護守道場は俺とラウレーナが居た道場だ。


「何でも最近の大会で門下生の2人が優勝と準優勝で大活躍したそう。水魔法を使う物理職と大鎌を持っ…た……」


途中まで話してからルイは少し目を見開いて俺を見る。

そういえば、決勝の俺の相手が不正で失格となったから、繰り上げでラウレーナが2位になったな。


「もしかして、その2人ってヌルと一緒に居たラウレーナって人?」


「そうだな」


俺の思い出話で獣人国も登場したからルイの中で簡単に俺が今言っていた人物というのは分かったようだ。


「質問だけど、シアがヌルと戦う前のルイと似た性格だったらどうなるかな?」


「間違いなく怒られて矯正させられるな…」


あの師匠はひねくれた性格を許さないだろう。仮に陰口を叩こうもんなら全力で叱るはずだ。昔の撃砕道場との事件から人間性も重要視しているふうがある。仮に俺がラウレーナのことを模擬戦以外で必要以上に煽ったり、下に見る発言をしたら拳で物理的にわからされていた。


「手紙で連絡とかとってないのか?」


手紙などで近況報告があればシアの現状がどうなっているかわかるはずだ。ただ、手紙は届くまで何日も掛かるし、それなりに金もかかる。


「とってない。居場所が変わる時には連絡するって決めてるだけ。でもヌルに会ったって連絡しようかな」


居場所が変わる時は絶対に連絡するという決まりがあるだけで、他の連絡は自由らしい。だから道場を変えた連絡は来たのか。


「シアは無事かな?」


「無事だとは思うけど……大変だろうな」


師匠は当たり前のようにスパルタをするからな。まず、闘装を取得するまではほぼ一方的に他の門下生にボコられているだろうな…。まだラウレーナが今居ないことだけが救いだろう。ラウレーナが居たらボコられるのに拍車がかかる。

それに、闘装を取得からといって調子に乗ったら師匠が直接戦うだろうな。俺は実力が拮抗していたラウレーナがいたからそんなことは無かったけど。


「シアから手紙が返って来た時は教え…あっ」


「ん?」


ルイが話の途中で顔色を悪くする。


「そうだった。もう関わらないように約束し……」


「あ、それの内容を変えるわ」


「…え?」


絶望したかのように話すルイの言葉を俺は軽い感じで中断させる。


「勇者と聖女と一緒に行動中は俺を見つけても関わるな。に変えるぞ。それ以外なら好きに関わってくれて構わない。だからシアの返事も良かったら聞かせてくれ。あ、だからって面倒事を押し付けるとかはやめてくれよ?」


「また幼馴染に……あ、ありがと……」


俺の言葉にルイは涙ぐみながらお礼を言う。


「その事はシアにも手紙で伝えておいてくれ。もし、今度3人で会ったら、お前ら2人と俺で戦おうぜ」


「…勝てるように特訓しておく。シアにも手紙でそうするように言っておく」


もし、シアが闘装を取得しているとするなら、2対1でちょうどいい勝負をするだろう。いや、多分俺がかなりキツいだろうな。絶対に複合魔法は必須になるな。


「それとは別にもっとお互い上達したらまた戦おうぜ」


「その時は油断しないし、最初から勝ちに行く」


現状、最初から油断せずに勝ちに来られたらルイに負けるんだよな。

強くならないといけない理由が一気に増えたな。


「それじゃあ、そろそろ遅くなったし帰るわ。ルイはもっとゆっくり休んでてくれ」


「ん。色々とごめん。それと、ありがと」


「おう」


こうして、俺は医務室から出てルイと別れた。



「幼馴染とは向き合えましたか?」


「ああ、この機会を作ってくれたことに感謝してるよ」


ラウレーナとルシエルの元へ向かう途中で学校長とすれ違ってお互いに一言交わした。

学校長がいなかったらルイやシアと和解することは無かったから、本当に感謝している。

その後は普通に2人と合流して宿に帰った。これで騒がしい一日が終わった。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



「それで、お姫様はここに居るのか?」


「そうだ」


街を見下ろせる森の奥で二人の男が会話をしていた。


「まさか、あの状況で逃げるとはな。それに、奴隷になってるせいで全然見つからなかったな」


「それは我々も想定外だ」


奴隷となることで、人に特徴を尋ねても、奴隷を探しているとは思われないから中々目撃証言もなかった。


「じゃあ、今から行くか」


「待て。まだ時期じゃない」


「はいはい、そうですかっ」


「あの鬼才の器を持っていけば、俺達は認められるんだ」


「りょーかいしやしたよ。あんな小娘で何をするんだろーね」


「それは届けてから知ればいいことだ」



どうやら、この街でのトラブルはまだ終わってはいないようだ。

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