第291話 ルイの力

「こんなもん?」


「くそ…」


ルイは俺を挑発する。しかし、俺はそれにあまりムカつきはしていなかった。

物理職のステータスだけや物理職と魔法職の両方のステータスでの勝負はあったが、魔法職だけでの勝負はこれが初めての気がする。


「これでも同じことが言えるかな!」


また、魔法職だけだと格上であろうルイと戦うのはそもそも楽しいのだ。


「暗がれ!ダークサイズ!」


俺はここに来てから覚えた大鎌の魔法をルイに放つ。


「燃え尽きろ!ファイアランス!」


ルイは即座に相殺しようと魔法を使う。その魔法はさっきの闇魔法を相殺した魔法だ。

だが、俺の魔法はさっきの闇魔法と同じ魔力量だとしても、今の大鎌の魔法とでは威力が違う。


「嘘!?」


俺の魔法はルイの魔法を突破し、ルイへと迫る。


「くぅ…!」


ルイは急いで飛び退けて俺の魔法を避ける。俺の魔法もルイの魔法を突破してスピードが落ちていたから魔法職のルイでもギリギリ避けられた。


「暗がれ!」


俺は転がっているルイに追撃の魔法を準備する。魔法職では格上だと思っているからこそ、俺は手を抜かない。


「ダークサイズ!」


「硬くなり、凍てつけ!アースアイスウォール!」


俺の方が先に魔法を完成させて魔法を放つ。

しかし、ルイは起き上がるよりも優先して魔法で壁を目の前に作る。


ガンッ!


「おいおい…」


俺の魔法はルイの魔法の壁を突破できなかった。ルイの複合魔法の壁に俺の大鎌の魔法が突き刺さって止まった。


「複合魔法か…」


「ここに来てから取得した」


俺とルイはお互いに顔を顰めている。

俺はルイが複合魔法を使ったことで突破する兆しが薄くなかったからだ。

また、ルイは俺の普通の魔法に対して複合魔法を使わされたからだろうか。


「燃え尽き、吹き荒れろ!」


立ち上がったルイは土の付いた体や服を払うことなく、俺へ杖を構えて魔法の詠唱をする。


「ファイアアースランス!」


「暗がれ!ダークサイズ!」


ルイの魔法と俺の魔法が再びぶつかり合う。


「うわっ!」


そして、今度は俺が避ける番だった。俺の魔法はルイの複合魔法に押し負けた。また【敏捷】があるとバレないように魔法を避けたが、ルイ同様にギリギリとなり、地面を転がる。


「硬くなり、吹き荒れろ!」


そんな俺に追撃しようとルイが魔法を準備する。


「アースウィンドアロー!」


ルイは複合魔法で3本の矢を作る。それをまずは1本だけ放ってくる。


「暗がれ!ダークサイズ」


俺はそれらを防ぐために5m以上の大鎌の魔法を作る。それを盾のように目の前に置く。それでルイの矢を防ぐ。


「ちっ」


ルイは舌打ちをしながら残り2本を曲げながら放つが、俺の巨大な大鎌の魔法に止められる。しかし、それで大鎌の魔法は欠けたりとボロボロになったので魔法を消す。


「まじでやばいな…」


俺は立ち上がりながらそう口をこぼす。

何とかルイの複合魔法を防げたが、それはシンプルに俺の魔法に魔力を多く込めてたからだ。ルイの複合魔法よりは俺の闇魔法の方が少ない魔力で魔法は作れてはいる。しかし、元々の魔力量が違うので、消費分を考慮しても先に魔力が尽きるのは俺になる。


「流れ出て、燃え尽きろ!ウォーターファイアボム!」


「暗がれ!ダークサイズ!」


ルイは構わずに魔法を放ってくるが、それを普段よりも魔力を込めた普通サイズの闇魔法で相殺する。


「硬くなり、燃え尽きろ!」


その後もルイは詠唱を続けて放ってくる。何度も相殺が続いているのに、ルイの顔には余裕がある。これはこの耐久戦だと俺の方が魔力が先に底を突くと分かっているな。

とはいえ、ルイが魔法を放ってきたら俺は相殺するしかない。魔法に多く魔力を込めて突破しようにも、きっと魔力感知を取得してるであろうルイには察知されてしまう。


「強い……」


再開したあの時の雑魚と言ってもいいルイがこんな短期間でここまで強くなるとは思っていなかった。本気で努力するとこんなに成長するのか…。

ステータス的にも技術的にもあの時とは比較にならない。心のどこかで大鎌の闇魔法を使えばどうにかなると考えていた。


「暗がれ、ダークサイズ。暗がれ、ダークサイズ。暗がれ、ダークサイズ…」


俺は連続して魔法を詠唱する。もちろん、ルイが放ってきた魔法には横に浮いている魔法の1つを放って相殺する。


「硬くなり、吹き荒れろ!アースウィンドランス!」


「暗がれ、ダークサイズ!?」


突然、ルイは魔力を大体3倍込めた複合魔法を放ってくる。俺は慌ててダークサイズを3本を放って相殺する。今ので横に浮いていたダークサイズを全て使ってしまう。


「無駄か……」


攻撃力で負けるなら手数を増やそうとしたが、それすらも防がれた。人目が無かったら躊躇せずに大鎌を取り出す程に勝機が薄い。もう俺の魔力は半分を切って4割程しかない。しかし、ルイは俺の体感では6割から8割はある。


「でもまだだ…!」


絶望的な状況だが、俺はまだ負けてはいない。俺は学校長がルイの勝ちを宣言するまでは諦めない。

それにまだ手が無いわけではないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る