第289話 特訓の成果と酷い性格
「暗がれ!ダークサイズ!」
学校長との特訓の次の日、俺は大鎌の魔法を試していた。
「でっか」
とりあえず、単純に大きくしてみたのだが、軽く10mはある。ただ、威力的には普通のと変わらず、魔力が10倍必要となった。単純に攻撃範囲が大きくなっただけだ。一応さらに大きくできるみたいだが、さすがにこれよりも大きくしたら近くで特訓している2人の邪魔となる。
また、逆に小さくするのには限界があり、最小でも1.5mくらいまでだった。あくまで大鎌でないといけないようだ。
「どんどん試すぞ!」
その後も色々と試していくが、なかなかアレンジし甲斐があった。
「かっは……」
「さあ、次だよ」
そして、更に次の日は再び学校長との魔力感知の特訓だった。一昨日の最後の方に感じた感は間違っていなかったらしく、偶に避けることはその日もできていた。しかし、その日に魔力感知を取得することはなかった。
「次の日も空いてるよ。どうする?」
「……それなら頼む」
学校長の事前予想は正しく、あと少しで何か掴めそうなのだ。それにこんな苦しい特訓は早く終わらせたい。
「それならまた明日だね」
「……ああ」
俺はまた震える足で長い階段を登って2人を迎えに行った。
「あれ?一昨日に居た変な人だよね?また学校長と出てきたから本当に最高難易度をクリアしたのかな?」
「そんな訳ない。ありえない」
疲れていたのもあり、俺は後ろに2人いることは気付いても、それが誰かまでは考えてもなかった。
「…ん?」
次の日の特訓の昼過ぎだった。俺の目の前で何かが集まっているのをはっきり感じとることができた。俺は飛び退いてそれから距離をとる。すると、今度は俺の行動を予想していたかのように後ろにも何かが集まるので、横に避ける。すると、今度は足元から反応があったからジャンプする。
「おめでとう。魔力感知を取得できたようだね」
「まじか!ステータス!」
俺は自分で見れるようにステータスを表示する。すると、魔力感知が新しくスキルとして追加されていた。また、危険感知のスキルレベルが1つ上がってもいた。
集中すると、自分の中に魔力があるのがわかる。俺は好奇心で学校長に少し近付いて魔力感知をする。
「げっ……」
「あ、見ようとした?」
俺は学校長の魔力をうまく感知できなかった。いや、漠然とかなり大きいことしか分からなかった。
「スキルレベルが低いと感知できる範囲も狭いし、そもそも大き過ぎるのは上手く感知できないよ」
「そうなのか」
今の俺の魔力感知では大雑把な感知のため、大き過ぎると特に分からなくなるらしい。
「さて、あとはその熟練度を増すためにも、色んな魔法の種類を魔力感知で見たらどうなるのかを勉強しようか」
その後は学校長が切れ味のある魔法、爆発する魔法、単純に硬い魔法など、様々な魔法を見せてくれて、それぞれ感知にどんな違いがあるかを学んだ。1レベルの今では少しの違いしか分からないが、それでも実戦で知ってるのと知っていないとでは大きく変わるらしい。特に詠唱せずに魔法を使ってくる彩化している魔物では。
「明日もできるから3日連続で特訓をするかい?」
「ああ、お願いするよ」
珍しく、3日も連続で学校長が空いていたらしいので、俺は明日も特訓を頼んだ。明日は複合魔法などの特訓に入るようだ。
俺は初めてまともに立って階段を登り切り、2人の元に向かった。
「だから仲間にしてあげていいって言ってる」
「いや、何度も断ってるでしょ。パーティは組んでるし、別にいいから」
「特別にそこの奴隷も一緒でいいから」
「は?結構だよ」
「勇者のパーティに入れるなんてそれ以上に贅沢で嬉しいことなんてないんだよ!羨ましいくらいだよ!なんで断るの!」
何か魔法技術塔に着くと、誰かが言い争いをしていた。残念なが、話している内容までは聞こえてこない。
そのせいで普段は魔法技術塔で魔法が飛び交っているのに、誰も魔法を使っていなかった。
「ん?」
少し近付くと。その言い争いをしている4人の片方はラウレーナとルシエルだと気付く。もう2人は俺からは背中しか見えないから誰か分からない。
「おーい、ラウレーナ、ルシエル!何かあった?」
「あ、おかえり!今日は元気そうだね」
「………」
背を向けている分からない2人を通り過ぎ、ラウレーナ達に近付いて声をかけた。ラウレーナはいつもと同じ感じだが、ルシエルはイライラしているようだった。
「ヌル…!」
「え?何で……ここにルイが…」
そこで初めて言い争い相手を見た。すると、その相手の1人は幼馴染だったルイことルイスだった。
「あ、ずっと気になってたんだけど、学校長の最高難易度を突破したの?」
俺が驚愕している中、空気を読まずにルイの隣にいた知らない女が俺に話しかけてきた。無視していると、何度も聞いてくるので正直に答えることにする。
ちなみに、誰かから聞かれた時は正直に答えろと学校長から言われている。その方が余計な詮索をされないらしい。
「そうだよ」
「凄いじゃん!ルイ!この人も誘ったら…」
空気を読まない女がそこで初めて黙った。ルイが俺を睨んでいるのを気付いたらしい。
「クリアしたんだ…。でもそれはお前が物……」
そこでルイは口を閉ざした。いや、俺達3人が閉ざさせた。俺とルシエルは魔法を、ラウレーナは拳を準備したのだ。それ以上喋るようなら容赦なしでお見舞していた。
「ッ!」
3人に気圧されたのが気に食わないのか、ルイはそれまで以上に険しい目で睨んできた。しかし、それは一瞬ですぐにニヤッと笑う。
「学校長の最高難易度をクリアするなんて凄い!」
ルイはこの場にいる者全員に聞こえるような大声でそう言う。急になんだと気になっていると、続きをすぐに話す。
「でもここで特訓してるのを見た事ない。だからその強さをこの目で見せてよ!ルイとここで戦ってよ!」
また同じ大声でそう言ってくる。そして、今度は俺達にしか聞こえない声で話す。
「ルイが勝ったら学校長との特訓代われ」
「こいつ……!」
あれからも歪んだクズな性格は直っていないようだな。いや、むしろ悪い方向に進んでいる。
ぶっちゃけ、戦って黙らせたいが、今のこいつの魔力は俺よりも多いのだ。
俺の思考の冷静的な部分では断れと言っているが、本能的な部分ではぶちのめせと言っている。大鎌が使えたら冷静的な部分でもぶちのめせと言うんだけどな。
「いいじゃんか!明日の正午に行おう!私が審判でやろうか!」
「学校長!?」
魔法技術塔に入ってきた学校長がそう言ってきた。
「(大丈夫。負けても君との特訓は止めないからさ。それに勝ったら何か聞いてあげるよ)」
近付いてきた学校長は俺にだけ聞こえるように耳打ちでそう言ってきた。その行為を気に食わないのか、ルイが睨んでくる。
「分かった。やるよ」
「ありがと!明日の正午から戦ってくれるのね!」
しかし、俺が戦いにのると、ルイはニヤリと笑いながら大声でそう言った。大声で言って人を呼んで絶対に俺に大鎌を使わせない気だな。
まあ、学校長には頼みたいことがあったし、ちょうど良かったな。まあ、それも勝てればだけど。
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