第287話 知ってた理由と俺の今後

「とりあえず、ステ…まだ見てない手があったら見せてくれる?もちろん、嫌だったら構わないよ」


「1番知られなくない闘力を知られたから今更隠すことは無いし、ステータスを見せるよ」


【闘力】や【攻撃】などの魔法職のステータスには無いものがバレたので、もうステータスを隠す意味は無い。学校長は考慮してくれたようだが、ステータスを見せるのに躊躇いは無い。


「ただ、その前に俺が大鎌を振るのを見た時に「君も魔族」って言ったけど、君もって意味は詳しく聞きたいかな」


「あれ?口に出ちゃってた?ステータスを見せてもらうんだから、その程度は説明するよ」


あの言葉はつい出てしまったものだったらしい。でも、気になるその理由については説明してくれる。


「まず、私が彼女を見た事があるから。まあ、1、2歳で幼かった頃だし、彼女が覚えていることは無いと思うけどね」


「え!?」


魔族の姫であるルシエルと会ったことがある?こいつは本格的に人族では無い疑いが出てきたぞ。


「次に私には「慧眼」というスキルがあって、これは少し先に何が起こるか視る能力なんだけど、副効果で人や物の本質も見えるんだよ。つまり、その人の人間性や隠蔽とかで隠されているのも見えるってわけ。それで彼女のことはわかってた。ただ、それを持ってしても君の事はよく分からなかったんだよね」


「なるほど」


俺の事を見れなかったということは慧眼のスキルレベルは7以下なのかもしれないな。


「普段からそのスキルは使ってる?例えばさっきの戦闘中とか」


「いや、今は使ってなかったよ。使っている間はごりごり魔力が減ってくし、それがあったら勝負にならないからね。命の取り合いや面接とかでしか使わないよ」


「確かに勝負ならないな……」


移動した先を予測され、タイミングを合わせて魔法を置かれたら簡単にやられていたな。また、あの大鎌での不意打ちも通用しないことになる。


「そんな理由で彼女は魔族とは知ってたけど、納得してくれた?」


「一応な。だが、何でルシエルと会ったことがある?」


1番の疑問となったなぜルシエルと会ったことがあるかがまだ分かっていない。その頃のルシエルは姫として大切に育てられてたはずで、魔族では無い他人に見せるわけが無い。


「それだけ私が大物ってことだね!」


「………」


その濁すような返答は答える気は無いということの表れか。



「逆に私が何で彼女が奴隷としてここに居るか聞きたいくらいだよ」


「っ……」


鳥肌が立つくらいの圧を学校長から感じた。しかし、それは一瞬ですぐになくなる。


「奴隷になってるのは無理やりでは無いことは彼女の様子を見てわかったし、洗脳系のスキルが使われてないのも確認してるよ。つまり、彼女の住む場所で何かあったのだろうね。それを君から聞くのは彼女に失礼だ。でも一応彼女は私も気にかけておくよ」


「ああ、ありがとう」


確かにそれが一番の謎である。ルシエルから言い出さないなら、1度詳しく聞いてみてもいいかもしれない。もちろん、言いたくなければ言わなくてもいいとも付け足すけど。

…それに獣人国であった奴が姫を探していたと言うけど、多分ルシエルのことだよな?それについても聞いてみたい。ただ、それがルシエルが奴隷となったことに悪く関係しているならトラウマを掘り返すことになるから聞けてないでいる。


「ところで、早くステータスを見せてくれないか!?」


「そうだな。ステータスオープン」


俺は学校長にステータスを見せる。ルシエルのことも知っていたのに黙っててくれたのだから、学校長のことはもう信用してもいいだろう。



【名前】  ヌルヴィス

【種族】  人族

【年齢】  16  

【職業】  不遇魔法剣士

【レベル】 34  


【生命力】 485/485  

【闘力】  485/485  

【魔力】  485/485  


【物攻】  269  

【魔攻】  269  

【防御】  155  

【敏捷】  236  

【精神】  236  


【物理スキル】

・大鎌術Lv.7・身体強化Lv.6

・大刀術Lv.4・無属性魔法Lv.4・体術Lv.4

・闘力操作Lv.3・闘装Lv.2


【魔法スキル】

・闇魔法Lv.7(1UP)・雷魔法Lv.5・氷魔法Lv.5

・身体属性強化Lv.4・魔力操作Lv.3・付与魔法Lv.3

・魔装Lv.2(1UP)


【他スキル】

・隠蔽Lv.7・危険感知Lv.2・気配感知Lv.2

・多重行使Lv.2・解体Lv.1





「全部のステータスが揃っているのは改めて見ても凄いな。それと、付与魔法は私には使わなかったのね。理由は想像つくけどさ」


学校長は俺のステータスをじっくり見てからそう呟く。

魔法耐性が高いという学校長に付与魔法を使ってもダメージを与えるだけなら関係ないからな。

ちなみに、ここに来てからまだ一月も経たないが、魔法職のスキルが成長している。多分、もうすぐ雷と氷の魔法のスキルレベルが上がるだろう。


「これを見ても私が進めることは変わらないかな。私が君に教えることは主に4つで、アドバイスが2つだ」


意外と教えてくれることが4つと多かった。また、教えるとは別にアドバイスもあるのか。


「まず、最優先で教えるのは魔力感知。これがあるだけで私の無詠唱での不意打ちも事前に感知できるようになる。また、詠唱省略に偽装した無詠唱にも騙されなくなる。さらに、新しい魔法を見た時にどんな効果の魔法かが大体わかる」


魔力感知があればできることが多くなるな。ちなみに、彩化している魔物との戦闘にも魔力感知は役立つらしい。

ちなみに、俺の闇大鎌の威力を見誤ったのは、斬れ味の高い魔法とは分かってていても魔力の量と威力にかなりの差があったかららしい。そういうのを防ぐために危険感知とかを併用するのも大事らしい。


「次に優先的に教えるのは複合魔法と魔法の同時行使だ。複合魔法はそれよりも難しい魔法合体をしているから簡単かな。それに多重行使という珍しいスキルがあるし、コツさえ掴めば魔法の同時展開も可能だよ」


少し複雑な話だが、学校長がやっていた詠唱から変えて魔法を出した瞬間には2つ以上の属性が合わさっているのが複合魔法。俺がやっていた魔法を出してから合わせるのを魔法合体というらしい。

複合魔法はスキルとしてあるもので、魔法合体はスキルには無いらしい。まあ、魔法合体に関しては強引な力押しもいいところだしな。


また、大鎌の魔法のように複数の魔法を作るのも多重行使というスキルがあるからすぐにできるそうだ。これができれば大鎌の魔法以外でも複数の魔法を同時に使えるようになるそうだ。


「それと、これは時間がかかるかもしれないけど、詠唱省略も教えようと思う。君の戦い方的に詠唱省略はあったら便利だろう」


「おお!」


詠唱省略は確かに便利だ。特に近接戦中には少しでも早く魔法を放ちたいと思うことはかなりある。


「教えるのはこのくらいかな。その都度必要だと感じたのはどんどん教えていくよ」


それらを教えている途中でもっと優先的に教えたいのができたら教えるのを変えるかもしれないらしい。


「次にアドバイスの方だけど、大鎌の魔法はもっと発展させていいと思う」


「発展?」


学校長曰く、大鎌の魔法をもっと自由に形や大きさや効果を変えてもいいらしい。単純な話ではあるが、大きくするだけで広範囲魔法に早変わりする。

確かに至極のような大鎌しか考えていなかった。例えば、ボムの魔法のように爆発する大鎌というのも面白そうだ。


「次のアドバイスは私もできるかは分からない。ただ、可能性があって、何よりも私が見てみたいだけだ」


学校長はそう前置きしてから次の最後のアドバイスを告げる。


「無属性魔法と属性魔法、闘装と魔装を複合だ。闘力と魔法を合わせて何かできないのか?」


「あっ」


考えたことがなかった。闘力と魔法を合わせる?それは俺にしか試すことができないことだ。

できるとは限らないけど、それの可能性に俺はわくわくした。それがもしできたら、俺は他の誰にもできない技を得ることになる。

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