第284話 ダメージを与えられる魔法
「さて、どうするか……」
学校長から攻撃がないのをいいことに俺はゆっくりどうダメージを与えるか考えていた。
(大鎌を使うことにはなるな)
俺はこの戦いで物理職のステータスを隠したままにする気はない。強くなるにはある程度のリスクは必要だ。普段はそれが強い魔物との戦いだが、今回は俺のステータスが大勢にバラされるリスクだ。
もちろん、そんな展開にはならないとは読んでいるが、それは学校長次第なところがある。だからある程度のリスクは覚悟の上だ。それでも俺は強くなりたい。
(さて、大鎌をどのタイミングで使うかだ)
問題は大鎌を使う場面だ。学校長相手に大鎌の不意打ちに失敗したらもう勝ち目は薄くなる。そのため、使う時は確実にダメージを与えられるタイミングを狙うしかない。
「でもまずは……」
大鎌の使うタイミングはその瞬間の判断で決めるしかない。とはいえ、今現在では全く隙などは生まれていない。その隙を作るためには俺の魔法でダメージを与えられると警戒させないといけない。
「闇れ」
「っ!」
俺は横にストックしていた闇魔法でできた5mほどの大鎌を出す。それを見た学校長は目を丸くしながら、口元はニヤけるという面白い顔をする。
「……色々と驚きだよ。もうオリジナル魔法を完成させているとはね。そして、それができるのは鬼才のスキルだ」
「っ!」
今度は俺が驚く番だった。まさか、鬼才のスキルとまでバレるとは思わなかった。
「いけ!」
俺は闇大鎌を学校長へ放つ。これでもダメージを与えられる威力になかったら、俺の負けはほぼ確定する。
「さすがにこれは無事じゃ済まないな。自信の理由はこれか」
学校長はそう呟くと、詠唱を唱える。
「ダークランス!」
学校長が放った闇魔法と俺の闇大鎌がぶつかり合う。その結果、俺の闇大鎌は学校長の魔法を容易に斬り裂いて進む。
「嘘!?」
学校長は自分の魔法が負けたことに驚くが、動きは早かった。即座に無詠唱で自分と闇大鎌の間に土と氷の壁を何重にも作り出す。
その壁も次々闇大鎌が裂かれるが、残り3枚のところで闇大鎌が消えてしまう。
「驚いたよ……。込められた魔力量と威力が一致してないとはね。この魔法は下手に受けられないね。はあ…基本的には私はハンデとして防御には同じ属性を使うつもりだったの…に!?」
俺は学校長が必死にガードをするのを何もせずに見ていた訳では無い。2mほどの闇大鎌を3本詠唱しており、それを学校長に放っていた。
「燃え尽きろ、ファイアバーン」
「っ!!」
学校長は3方向から来る魔法を見た瞬間に、魔法を詠唱する。その魔法は火魔法の広範囲魔法で、俺の闇大鎌を消し飛ばした。魔法で魔法を力技で消し飛ばすなんてできるんだな……。
その魔法の熱は範囲外の俺の肌をも焼きそうな程だった。多分俺にもほんの少しダメージが入ってるぞ。
「…ハンデの話はどうした?」
「何の話だい?」
もう学校長は今さっき言った防御には同じ属性を使うというのを守る気は無いようだ。
「学校長の魔法耐性が高い理由がよくわかったよ」
「自爆はしたくないからね」
学校長は自分の魔法が強過ぎて、魔法耐性が高くないと自分の魔法で大ダメージを受けてしまう。だから魔法耐性が高くないといけないのだ。
自爆させてダメージを与えられないかとも考えるが、魔法のエキスパートな学校長にそれをするのは無理だな。
「そろそろ私も攻撃するよ」
「早くない?」
まだ戦いが始まって10分ほどしか経ってない。それなのにもう攻撃をしてくるのか。しかも、その時間のほとんどは俺の思考時間で、攻防で言ったら2回しかしていない。
「正直、防ぐ時に君へダメージを与えないのが難しくってね」
「あー…なるほどな」
今のような攻撃の時に、俺に対してダメージを全く与えないように気を使うのが大変らしい。
「つまり、俺が強いからそうしたいってことだな。それならしょうがない。許してやるよ」
「何で私が許しを請うみたいになってるのさ。
でも強いからというのは否定しない。間違いなく私が戦った生徒の中で、君が1番強いよ」
そういうのを言われると嬉しくなる。まあ、ラウレーナやルシエルのように学校長と戦っていない強者もごまんといそうだが。
「さて、そろそろいくよ?」
「ああ、来いよ」
学校長が攻撃をしてくるのは意外とありがたい。防御に集中されたら不意打ちの成功率もがくんと下がるからな。
問題は攻撃を始めた学校長から隙を作れるかだけど。
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