第282話 負けられない
「こう……?いや、違うかな?」
「これでもないのじゃ!」
ルシエルが魔装を取得してから5日経過したが、俺の近くでラウレーナとルシエルが魔法の開発に取り組んでいる。思い浮かぶ魔法があるようだが、2人ともまだ上手くはいないらしく、苦戦している。ただ、トライアンドエラーを繰り返しながら少しずつ前進している。
また、魔法開発の合間の息抜きでワイヤーの魔法と光魔装の熟練度を上げようとしている。
「………」
その5日間で俺は何をしていたかというと……何もしていなかった。いや、行動をしていないだけで、色々と考えてはいる。
でも、どれだけ考えても俺に必要な魔法が思い浮かばないのだ。
2人は新しい魔法を生み出そうと真剣に頑張っている。それと比較して俺は何をやっているのかと自分を責めてしまう。俺は一応大鎌の魔法を生み出せたが、あれは偶然だし、ただ威力を上げただけだ。新しい戦い方として組み込むようなものでは無い。
「俺の弱点は防御力の低さ」
俺の弱点は防御力が低い事だ。しかし、その弱点は闘装と魔装で一応の解決はした。
「長所は【攻撃】と【魔攻】」
逆に俺の長所は2つの威力の高い攻撃手段だ。しかし、物理攻撃では付与魔法があり、魔法攻撃では大鎌の魔法が増えた。これにより魔法で底上げはできている。
「これといって伸ばしたいのがない…」
今の俺はちょっとした壁にあたってしまった。今までのように長所や短所を伸ばすのでは駄目なのだ。
「現時点ではラウレーナとルシエルには勝った。だから…」
一応現時点でのラウレーナとルシエルには大鎌の至極の力もあって勝てると思う。だから今は2人が強くなるのを待っててもいいかもしれない。
ガンっ!
「うっ…」
「「っ!?」」
俺は自分の顔を全力で殴った。口の中を切ったのか、口から血が垂れてくる。
俺のそんな奇行にラウレーナとルシエルがびっくりしているが、適当に誤魔化しておく。
(何を考えていやがる!良い武器が手に入ったおかげで少し強くなれたからって調子に乗ってんじゃねぇ!)
俺は心の中で自分を叱り付ける。
確かに現時点では俺は2人よりも強いかもしれない。しかし、そんなのは当たり前なのだ。だって俺の方が2人よりもレベルが高いから。2人が俺と同じレベルになった時に俺が勝てるという根拠は無い。
それに、仮に2人が俺よりも弱いとしても、それが強くなろうとしなくていい理由にはならない。俺は何かあった時に2人を守れるくらい強くなりたいし、ならないといけないのだ。
「2人共、明日は俺はちょっと学校に行ってくるから2人は学校で特訓しててくれ」
俺は2人にそう伝える。奴隷の契約があるからルシエルとはできるだけ離れたくない。だから学校の中での訓練をさせてしまうことになるのは申し訳ない。でも、明日だけは我慢して欲しい。
「朝早くからどうしたんだい?」
「……」
俺は次の日の朝から学校長室の中に入っていた。学校長は椅子に座って何かの書類を読んでいた。
ちなみに、ラウレーナ達は魔法技術塔にいる。
「俺に必要な魔法が知りたいんだ」
「……へぇ〜」
学校長は目を丸く開いて俺の言ったことに驚いたが、それは一瞬ですぐにニヤッとした表情になった。
「君がこんなに早くそうしてくるとは思わなかったよ。何かあったのかい?」
「何かないとダメなのか?」
「いや、そんなことは無いよ」
学校長はそう言って席を立つと、俺の方へ向かってくる。
「ただ、いくら私とて全知全能では無い。だか、前に言った通り、1度私と全力で戦ってくれないと相応しい魔法は教えられないよ?それでも……」
「構わない」
俺の目の前に来た学校長が話している途中で俺は答える。前に言われているのだからそんなことは最初から分かってて来ている。
「覚悟は決まっているようだね。それなら良かったよ。じゃあ、特別訓練室に行こうか。そこで私と2人っきりで戦うよ。もちろん、誰かに戦ってる見られることは絶対に無いから安心してくれていいよ。もちろん、私も君の力を誰かに話すこともないよ」
学校長はその後に付いてきてくれと言い、学校長室から出ていった。俺もそれを追って学校長を出ていく。
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