第281話 実験と取得
「轟け、サンダーワイヤー」
俺はラウレーナの使っていた魔法を思い浮かべながら詠唱をする。しかし、何も現れることは無かった。実際に見ただけではイメージが足りないのだろう。現に俺はあれがどういう仕組みかを完全に把握している訳では無い。何よりも、別にあの魔法が俺に必要とも思えないから、あまり本気度も無いのだろう。
「暗がれ、ダークワイヤー」
今度は闇魔法でも同じように詠唱をする。そもそものイメージが足りないからこれでも失敗するのが普通だが。
「成功するんだよな…」
何と、闇魔法だとラウレーナの使った魔法を俺も使えるのだ。
「鬼才か…」
きっとこれは鬼才のスキルの能力の1つなのだろうな。この理論でいけば、ルシエルも光魔法ならどんな魔法でも作り放題だが、同じ鬼才のスキルでも人によってできることとできないことはあるらしいから分からない。
「それにこの理論があってたら学校長の魔法のスキルは全部鬼才ってことになるんだよな…」
さすがに学校長の全ての魔法系スキルが鬼才ということは無いだろう。でも、あの学校長の言い方的に全ての属性ですぐに魔法を作れるような感じだった。
つまり、何か鬼才以外でも魔法をすぐ作れるのには条件があるのかもしれない。例えば、スキルレベルとかな。
「色々試してみるか!」
魔法の知識で学校長に勝てるとは思わないので、考えるのはここら辺にしておく。とりあえず、今やるべきことはできることとできないことを把握しておくことだ。
「ダークボール!」
学校長のように俺は詠唱を省略して魔法を使ってみる。
「まあ、さすがにか」
しかし、魔法が出てくることは無かった。でも、魔力が動く気配はあった。ただ、前半の詠唱がないことで何の属性がどこに集まればいいか分からないといった感じだった。魔力操作でどうにかならないかとも試したが、ざわつく程度に魔力が動いているだけなので、魔力操作ではどうにもならなかった。
また、闇魔法でできなければ他の属性でもできないだろう。
「詠唱省略を取得したかったらギルド長に教わるしかないかな」
今試しただけで自力での取得は途方もない時間と揚力がかかるのは分かった。
正直、俺の戦闘方法的に詠唱省略は役に立つから取得したいところではある。しかし、無理なものは無理だからな。
「さて、どんどん試すぞっ!」
気持ちを切り替えてそれからも色々と試すが、詠唱省略のように大体のものが失敗する。でも少しだけ成功するものがあったりと楽しかった。その実験は数日では終わらなかった。
「やったね」
「魔装を取得できたのじゃ!」
12日ほどしてやっと実験が一段落した頃に後ろでそんな声が聞こえてきた。
「おっ!おめでとう!」
俺は自分の特訓をやめて、光を纏うルシエルの方へ向かう。
「それでその光魔装にはどんな効果があるんだ?」
俺は闇魔装をしただけで闇魔装の効果を完璧に把握することができた。それはきっと光魔装をしているルシエルも同じだろう。
「自動回避じゃな。試してみるか?」
「おう」
俺はルシエルと戦うことでその能力を試すことにした。
「はあっ!」
「よっ…」
試した結果、自動回避はヤバいというのが分かった。死角だろうが、隙をつこうが、避けられない体勢だろうが、完璧に避けられる。これを使っている間にルシエルに攻撃するには避けられないくらいほどの広範囲に攻撃するか、回避よりも圧倒的に速い攻撃をするしかない。
とはいえ、ちゃんと弱点もある。
「ふっ!はあっ!」
「くっ…!」
自動回避とやらは最善の回避をするようで、ルシエルの左胸を狙えば必ず右側に避ける。つまり、回避の仕方を攻撃者がある程度コントロールできるのだ。また、自動回避中は攻撃ができないようで、常に回避をさせていれば攻め放題だ。
そして、何よりも……。
シュンっ!
「あっ!光魔装が…!」
自動回避をする度に光魔装が少なくなり、最終的には消えた。自動回避を発動する度に光魔装を消費してしまうのだ。
「うん。かなり強いな」
弱点はあるが、かなりいい魔装の能力だと思う。俺の闇魔装と違ってちゃんと防御力もあるし、ダメージにならない攻撃には自動回避は発動していない。また、光魔装をしていれば不意打ちを食らうことは絶対に無くなるのだ。さらに、自動回避のオンオフは好きにできるらしく、オンとオフを瞬時に切り替えれば急な動きの変化に相手は混乱するだろう。
「使いこなさないとな」
「そうじゃな!」
「手伝うことあったら言ってね」
今述べたメリットも使いこなせなければ意味が無い。まあ、ルシエルならすぐに使いこなせるだろうけどな。
そして、これからはラウレーナと俺は新魔法の特訓、ルシエルは新魔法に加えて、魔装を使いこなす特訓をし始めた。
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