第280話 新しい魔法

「ルシエルは新しい魔法は思い浮かんだ?」


授業が終わったあとに歩きながらルシエルにそう質問する。


「ラウレーナと戦った後の帰り道で考えていたのじゃ。だから案は何個かあるぞ」


「おお!」


何と、ルシエルはもう既に新しい魔法について考えていたそうだ。きっとその魔法は刀での攻撃力をもっと上げるようなものなのだろうな。


「でも、それらを試すのは魔装を取得してからじゃ」


「そうか」


確かに魔装があるとないとでは、戦い方はかなり変わってくる。特に鬼才の光魔法を持っているルシエルの魔装は、俺の闇魔装のような特殊なものになりそうだしな。


「今はちゃんとした先生もいるしな」


そして、今はラウレーナという魔装を教えられる先生も存在する。昨日もほんの少し教えていたが、俺が教えるよりも何倍も分かりやすかった。

基本的に俺は感覚でこんな感じというふうにやるからあまり教えるのは向かないんだよな。


「じゃあ、森に行くか」


「ああ!」


俺達3人は森でトレーニングすることにしたのだ。学校でやった場合、咄嗟に俺とルシエルが物理職のステータスを持っている動きをしてしまう可能性がある。また、武器を使った魔法を編み出したりする場合に学校ではそもそもできない。

ただ、何か聞きたいことがあったら今日のように学校に行くという感じだ。毎日のように学校に通っているのはほんの一部とラウレーナが言ってたし、時々通う程度でいいらしい。


「あ、ラウレーナじゃ」


「あ、待ってたよ!」


「おまたせ」


俺とルシエルは昨日戦った場所で待つラウレーナと合流した。


「じゃあ、早速魔装の特訓しようか。上手く行けば10日以内に取得できそうだよ」


「頑張るのじゃ!」


合流してそうそう2人は魔装の特訓をし始めた。

1人になったことだし、俺も新しい魔法を考えている。


「あっ」


数分考えて、とりあえず1つ魔法を思い浮かんだ。それを試すためにも、ストックを適当に放って無くしておく。


「轟け、サンダーサイズ」


今思い付いた魔法なので、失敗する前提で詠唱をした。


「……できちゃったよ」


しかし、俺の目の前には雷で出来た大鎌が浮かんでいる。


「掴……めるのかよ」


何となく、その大鎌に手を伸ばすと、掴めることが判明した。特に俺にダメージは無い。いや、こんな機能を付けた覚えはないぞ?


「ほい!」


とりあえず、魔法なのでその雷大鎌を投げてみる。すると、木を何本も焼き斬ってから消える。


「魔力消費は少ないのにランス並の威力があったぞ」


今の魔法の威力はランス並なのに、魔力的にはその1/3も使っていない。


「……かなり楽に作れたよな」


今の大鎌の魔法はかなり簡単に作れたし、しかも安定していた。俺は今日見た光景を思い浮かんで詠唱をしてみる。


「轟け、サンダーサイズ」

「凍てつけ、アイスサイズ」

「暗がれ、ダークサイズ」


俺は続けて詠唱をすると、それぞれ異なる属性の大鎌が3つ浮かんだ。


「できた!?いや、でも……」


学校長のように複数の魔法を作ることに成功した。でも、これ以上増やすのはできなそうな気がする。試しに闇魔法の大鎌を増やしたが、その瞬間に雷、氷の大鎌が消えた。


「今の俺では各属性に1つずつか」


一応限界は分かった。次は同じ属性なら同時に何個できるのかを確かめる。雷魔法から順に試していく。



「雷が3個、氷が3個」


まず、雷と氷では3つが限界だった。もしかすると、各属性1つずつはこの2つ属性の個数が3つずつしかできないからかもしれない。


「そして、闇が…」


俺は周りに浮いている闇の大鎌の数を数える。


「7個……」


何と、闇属性の場合は7個もできた。この数は大鎌術のスキルレベルと同じ数だ。もしかすると、それに関係しているのかもしれないが、それは大鎌術のスキルレベルが上がるまでは分からない。

ただ、これらの魔法に新しく大鎌では無い魔法を追加しようとすると、全て勝手に消えてしまう。



「ん?あっ」


何か視線を感じると思って振り返ると、そこには魔装の特訓を止めてこちらを見ている2人がいた。


「何でそんな簡単に魔法が作れるのさ」


「大鎌じゃからか?」


その視線は驚きを通り越して呆れているようなものだった。


「あはは……」


俺はとりあえず笑って誤魔化すことしか出来なかった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る