第275話 再会と大鎌
「「あっ」」
学校長室から出た俺は座って待っていたルシエルとすぐに目が合う。
「長かったのじゃ」
「……まあ、ルシエルに比べればな」
ルシエルが早すぎただけで、俺も数分しか面接?をしていない。
「ほらっ。俺もルシエルは2人とも合格だってさ」
「それなら聞いたのじゃ」
ルシエルに貰った首飾りを見せながら言うが、合格についてはルシエルも聞いていたらしい。
「…というか、それしか聞いてないのじゃ」
どうやら、ルシエルは合格と言われただけで、外に出されたそうだ。本当、面接って何だろうね。
「まあ、それは置いておいてラウレーナの居る……あっ…」
ラウレーナの居るのは魔法技術塔と学校長から聞いた。
ところで、魔法技術塔はどこにある?
「……魔法技術塔って場所にラウレーナはいるらしいが、どこかは知らんし、案内図か人がいるところまで適当に歩くか」
「わかったのじゃ」
俺は案内図か人を探して学校を歩き回る。
少しすると、学校の生徒らしき少女が居たので魔法技術塔の場所を聞いてそこへ向かった。
「塔って言うから何階建てかの縦長の建物を想像してたんだけど……」
俺らは聞いた場所に辿り着いた。そこにあるのは二階建てであるが、面積はかなり大きい建物だった。面積的にはラウレーナと居た道場の4個分くらいはありそうだ。
何よりも、その中から魔法を使っているであろう音が響き続けている。
「えっと……」
扉が開いているので、中を覗くと、何人もの生徒が各々魔法を放っていた。
「ラウレーナ!」
「ん?」
その中にラウレーナの姿を見つけた。人族やエルフの中でケモ耳を見つけるのは簡単だった。
「あっ!!ヌルヴィス!遅いよ!!」
俺と目があった瞬間にラウレーナは魔法を使うのをやめ、こちらに駆け寄ってきた。
「えっと……横の人はどちら様?」
俺の前に来たラウレーナが最初に聞いてきたのはそれだった。
「俺の奴隷だけど、仲間として扱っているルシエルだ」
「ルシエルじゃ。よろしくじゃ」
俺は横のルシエルを紹介すると、ルシエルも挨拶をしてペコッと頭を下げる。
ルシエルにラウレーナの説明は前もってしてある。
「(詳しくは後で)」
俺が口パクでラウレーナにそう伝える。もし口パクでなんと言ったか分からなくても、ラウレーナならこの場では言えないことがあるというのは察せるはずだ。
「…僕はヌルヴィスの仲間のラウレーナって言うんだ。これからよろしくね」
ラウレーナもルシエルにそう挨拶をする。そして、挨拶をすると、スっと俺の横まで来て小声で耳打ちする。
「すぐ人の居ない森に行こうか。聞きたいこともあるし、何よりも僕の成果を見せたい」
「それはいいな。俺も新しく試したい物もあるしな」
ラウレーナはそのまま付いてきて、俺達3人は街を出て森へと向かう。街で歩いている時は3人は特に会話はなかった。
今、ラウレーナにここでのことを聞いてしまうと、これから見ることのネタバレになる。逆に俺も同じ理由でドワーフ国でのことは話せない。
また、ルシエルがどんなことを隠しているかラウレーナが分からない以上、下手にルシエルのことも話せない。
「さて、まずはルシエルのことを説明するぞ」
人が居ない森の奥の方まで来た俺はそう言い出した。俺とラウレーナの視線が向けられたルシエルは話し出す。
「余は魔族の姫じゃ。ステータスなどは隠しておるからちょっとやそっとじゃバレないのじゃ。ステータスは【闘力】以外はあるのじゃ。
それと、事情があって奴隷として売られて、今は強くなるために主の仲間として行動を共にしておるのじゃ。改めてよろしく頼むのじゃ」
「なるほどね。こちらこそよろしく」
ラウレーナは驚きはしたが、そこまで取り乱すことなく、ルシエルと握手をする。
「あんまり驚かないね」
「まあ、ヌルヴィスと先にあってるからね」
魔族よりも魔族みたいなステータスをしている俺と先に出会っていることで、実際に魔族を見ても衝撃は少ないらしい。
「色々と聞きたいことと気になってることはあるけど、そんなことよりも先に戦わない?」
「賛成」
正直、俺も説明よりも先にとりあえず戦いたかった。ルシエルに周りの警戒と審判を任せると、俺とラウレーナはお互いに距離を取る。
「よっ…ん?」
マジックポーチから大鎌を取り出したのだが、何か取り出したというよりも、大鎌が自ら飛び出たといった感じだぞ?
俺のそんな大鎌をラウレーナは観察するようにじっと見ていた。
「始め!」
俺とラウレーナが構えたのを見て、ルシエルが始めの声をかける。俺は身体強化と闇身体強化をすると、ラウレーナの方へ走り出す。
「っ?!」
まさか、すぐさま俺から向かってくるとは思っていなかったのだろう。しかも、闘装と魔装もせずにだ。スピードが遅いラウレーナに自分から真正面から向かっていく利点は少ないからな。
「ふっ!」
俺は大鎌を大きく振りかぶると、上から振り下ろそうとする。ラウレーナは警戒しながらも、いつものように攻撃を食らった瞬間にカウンターを放つ構えだ。
「らあっ!!!」
俺が振り下ろした大鎌がノーガードなラウレーナの水魔装の上から肩に当たる。
ここでラウレーナに想定外なことが2つ起こる。
「っ!?!」
ラウレーナはカウンターの構えを止め、慌てて両腕で俺の大鎌を支える。それをした理由は俺の大鎌が水魔装を斬り裂き、ラウレーナの肩に傷を付けたからだ。
俺がラウレーナを殺す気で、大鎌を手前に引いていたら、ラウレーナは大鎌を腕で支える暇もなくざっくり斬れていた。
「ぐっ……」
次にラウレーナは片膝を付く。大鎌を完全に受け止めたことで重さに耐えきれなくなったようだ。大鎌の素の重さに、今は俺の力も加わっている。いくらラウレーナでも簡単に支えられるわけが無い。
攻撃を受け止めただけなのに、ラウレーナは苦しそうな顔をしている。
「はあっ!」
「ぐっ…!」
俺はラウレーナの水魔装が及んでいない顔面を蹴った。大鎌を俺が持ち上げたこともあり、ラウレーナは後ろに吹っ飛ぶ。
「油断したよ……凄い大鎌だね」
「ああ、良いのを貰ったよ」
ちょっと深く肩を斬り、顔面を蹴られた程度ではラウレーナはすぐに立ち上がる。
「今度は僕の番だよ」
「さあ、来いよ」
今は俺の大鎌の至極を試した。それなら次はラウレーナがここで何をやっていたかを見る番だ。
俺はラウレーナが何をするか楽しみにしながら待ち構える。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます