第274話 面接??
「ここで学校長から呼ばれるまでお待ちください」
俺達は魔法を見てくれた男に案内され、学校長室のソファに座って待たされることとなった。待たされてから案内した男が学校長室の中に入って、数分で出てきた。その男は俺達に頭を下げると、どこかへ行った。
それからじっと20分弱ほど待ってやっと学校長室から声をかけられた。
「まずは、女の子の方からどうぞ。学校長室に入って来てください」
「ん?」
「え?余から?」
学校長室から聞こえた男のような声の発した言葉の内容に少し困惑する。普通に考えて、奴隷と奴隷の主人が居れば、奴隷の主人から呼ぶだろう。現に魔法の試験時には男は言葉に出さずとも、俺の方を向いており、最初に俺が魔法を使うのが当たり前といった様子だった。
「ルシエル、行ってこい」
「あ、わかったのじゃ」
ルシエルは少し困惑した様子で学校長室の中に入っていく。
「……相手が相手だと激怒だぞ」
普通よりも少しだけでも奴隷への蔑みが強いやつだと、今の行為で学校長室に怒鳴り込みに行くやつもいる。そうでなくても、ほとんど者は不満や不愉快を感じるだろう。
(逆に何にも感じない俺がおかしいのかもな)
しかし、俺はルシエルが先に呼ばれたことに驚きはしたが、でもそれだけだ。これはルシエルを奴隷と言うよりも、ラウレーナのような仲間として見ているからかもしれないな。
ギーーッ…
「早くね?」
何て考えていると、ルシエルが学校長室の中から出てきた。時間にして1分以下だぞ?
「次は男の子方どうぞー」
「…雑じゃね?」
さっきと比べて投げやりな俺を呼ぶ声がしてきた。出てきたルシエルを見るが、ルシエルが1番状況が分かっていないのか、きょとんとしている。中でどんな面接をしたんだ?
「はーやーくー」
「はあ…」
ルシエルに何を聞かれたか尋ねようとしたところで中から催促があった。投げやり感にさすがにイラッと来たが、一応面接なので気分を落ち着かせて中に入る。
「はい。座って」
「………」
入ってきた俺を見て、男は自分の対面にあるソファを指差す。とりあえず、何も言わず俺は言われた通りに座る。
(人族…に見えるが…これがか?)
普通に見た目で判断するなら身体に特徴的な部位がないし、30歳前後の人族の男だろうな。
だが、何か異質だ。ここで俺が急に強化全開で大鎌で斬りかかったり、ストックを使っても防がれると思ってしまう。相手は魔法職なのにだ。こいつが魔族と言われても信じてしまいそうだ。
「まず、2人とも合格だから」
「……はあ?」
その男は俺とルシエルのこと色々とが書かれているであろう紙を丸めて投げ捨てながらそう言う。
「本当は女の子だけ合格にしたかったんだけど、君は優秀だから仕方な……冗談だから!そんな性別で差別しないから。だからそんなゴミを見る目をしないでくれよ」
「はあ………」
何か色んな意味で警戒していたが、それらが全て無駄に思えてしまった。俺はソファに浅く座り、背もたれに寄りかかる。
「急に楽な体勢になるね」
「合格ならもう気を使う必要は無いと思ってな」
何かこのふざけた態度を真面目に対応するのは疲れるからやめた。入ってすぐに合格を出すなら面接なんていらないし、十中八九面接は続いているけど、気にしない。
「ふふっ…面接は意味無いと思ってるかもしれないけど、ちゃんと意味はあるんだよ?」
「へー、そう」
態度だけでなく、言葉遣いまで適当になってきた。だってこいつは面接って言ってるのに、質問をせず自分のことしか話さないんだもん。
「だって私は相手のことが分かるスキルを持っているからね」
「っ」
「あ、一瞬反応したね」
こいつ……油断させたところでこれかよ。今までのふざけた態度はブラフだったのか?
「急にそんな警戒しないでくれよ。私のスキルでは君達の隠していること、ましてやステータスなんて分からないよ。分かるのは善人か悪人か、悪意を持っているかどうかくらいだ」
「あー、なるほどな」
この面接で学校に悪人が入学することや、学校長やその他の人に対する悪意が持っていないのを確認しているのか。
これなら納得できてしまう。仮にもっと奥深くまで探れるスキルであろうと、今の説明で面接はそのためだと考えるだろう。だからそのスキルとやらに関してそれ以上疑わない。よくできた言い訳だな。
「あー、警戒心が強いね。1度警戒させたのは間違いだったかな?私は生徒とは友達のような関係になりたいんだけどね。
これ以上話しても警戒を強めるだけそうだし、日を改めるよ。はい、これ」
「あ、これって」
学校長が渡してきたのは、2つのここに入る者が付けている首飾りだった。
「これが2人の入学証明だよ。これを付けていたらいつでも学校に入れるからね。これで本当に面接は終了だよ。
あ、この学校では好きな魔法分野を好きなだけ学べるからまずは色々と校内を見て回ることを進めるよ。もしあれだったら私が案内して…」
「わかった。ありがとうな」
学校長の言葉を遮り、俺は2つの首飾りを受け取ってソファから立ち上がる。そのまま扉へと向かっていく。
「あ、ラウレーナちゃんなら魔法技術塔にいると思うよ」
「……それはありがとうな」
だからなんで最後にまた警戒してしまうようなことを言うんだよ!でも悔しいが、その情報はありがたいな。
俺は振り返ることはせず、学校長室から出て行った。
「しかし、また面白そうな子達が入ってきたね。まさか、こんなところに魔族の姫が奴隷として来るとはね」
1人だけになって静まり返った学校長室の中で男の独り言が響く。
「何より、そんな女の子を連れていて、私でもよく分からないあの男の子は何だろうね」
その男はそう呟くと、立ち上がって机の前の椅子に座り、2人の入学に関する書類や手続きに取り掛かった。
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