第273話 魔法学校へ…

「さて、魔法学校とやらに行くぞ」


「んじゃ」


昨日は道行く人に1番の宿を聞いて先に3回名前が出てきた宿の2人部屋に泊まった。結果的に4人に聞いてその宿に決まったが、聞いた人が言っていたようにかなり良い宿だった。


「あ…学校に行ったところでどうやってラウレーナに会えるんだ?」


歩いている途中で俺は肝心なことが分かっていないのに気付いた。きっと学校にいるというのは分かっているが、だからいって俺が学校に入れるかも分からないし、急に現れた者がラウレーナの居るところを教えてというのも不自然だ。


「そもそも、ラウレーナは学校に入学できたのか?」


時期的にまだ年度が変わるような時期では無い。とはいえ、それに関しては学校について詳しく無いから何も言えない。



「とりあえず、学校前までは来たけど……」


俺の生まれた国で見た学園よりも少し大きい学校の門の前まで来たが、数人の門番が立っている。


「中に入る者は同じ首飾りを付けているのじゃ」


「あ、ほんとだ」


門の中に入る者は同じ首飾りのようなものを付けている。それを見て門番は学生と判断しているようだ。



「「奪うか?」」


俺とルシエルが同時に話してしまったが、それは同じ言葉だった。意見が一致したことだし、早速誰かから首飾りを奪って……。


「いや、駄目だろ。普通に犯罪だろうし、ラウレーナにも迷惑がかかる」


そうなると、ラウレーナが出てくるまで張り込むとかになるが、そんなストーカーみたいなことはしたくない。今も少し不審者っぽく見られていそうだし。


「とりあえず、門番に話を聞くぞ」


このまま学校を見てても埒が明かないので、まずは門番のところに行くことにした。


「どうした?入学希望か?」


「ん?入学ってすぐできるのか?」


学校を見ていたのは気付いていたようで、近付くと最初に入学希望かと聞かれた。


「入試として魔法の実力を見て、その後に学校長が面接をして合否はその日に出るぞ。1度入学に失敗したらそれから1年は入試はできない」


「何だそれは……」


魔法専門ということで、学問の内容ではなく、魔法の腕前でのみで入学か決まるのか。あ、一応魔法の腕前以外にも学校長の面接はあるか。


「やるのか?」


「ならやらしてもらうか」


きっとこれならラウレーナも入学はできていると思うし、俺とルシエルも入学することにした。


「ギルドカードを出してくれ」


「ああ」


俺は言われた通り、ギルドカードを手渡す。その間に1人の門番が中に入っていく。入試の準備をするのだろうか?


「Fランク?本当に入試をするのか?」


「まあ、魔法には自信があるんでね」


しまった。Fランクのギルドカードは怪しかったか?いや、でもBランクのギルドカードを渡し、その情報で俺を調べた時に闘力で冒険者登録していたのが分かるよりはマシか。



「お待たせしました。では、案内します」


「まあ、とりあえず頑張れよ」


その後、ルシエルと共に得意魔法などのアンケート的な書類や契約事項などを記入し、話していた門番に見送られて学校中に案内された。案内したのは学校の先生と思われる者だ。



「ここで最初の試験を行います」


案内されたのは門から近い広い校庭のような場所だった。


「それでは、1番得意な魔力を使う者を見せてください。攻撃魔法の場合はそちらにある的に当ててください」


「へぇ〜〜」


思わず感心してしまった。魔法でもなくても、魔力を使うスキルなら何でもいいみたいだ。これならラウレーナでも入学は確実にできるな。


「それなら闇ま……あっ」


「光ま…あっ」


途中で言葉を止めた俺とルシエルはお互いに顔を見合わせた。互いに1番得意な魔法はストックしていて使えないのだ。ストックを使うのはさすがに躊躇われる。とはいえ、闇魔装を見せるのも何だかな。


「じゃあ、雷魔法で」


「分かりました」


俺はそう申告し、魔法を使おうとする。的は人くらいの大きさで、距離は5mくらい離れている。普段魔物相手に魔法を使っているから、この程度の距離で動かない的ならどんな魔法でも当てられる。


「轟け、サンダーバーン!」


「おおっ…」


俺は的を中心とし、広範囲魔法を使う。1番強いとされる魔法がこれだった。


「凄いですね。教員でもこれ程の威力の魔法を使える者は限られていますよ」


魔法が終わると、欠けたり焦げたりしている的が現れた。正直、的を完全に破壊するつもりだったんだけどな。思っていたよりも的が硬かった。



「魔法は何発も使っていいんじゃよな?」


「はい。構いませんよ」


的を変えて次はルシエルの番となったが、ルシエルは魔法を放つ前に質問をする。


「燃え尽きろ!ファイアランス!」

「流れ出ろ!ウォーターランス!」

「吹き荒れろ!ウィンドランス!」

「硬くなれ!アースランス!」


ルシエルは連続で4種の魔法を使った。その全部が的の中心に当たる。


「下級属性を全て使える者はそれなりにいますが、このレベルの下級属性を全てを使える者は生徒には賢者の職業の者くらいでしょう。素晴らしいですね」


「……」


生徒に同じくらいのレベルがいると聞いてルシエルは不満げな顔をしていた。

ちなみに、下級属性というのは火、水、風、土の4属性で取得している者が多いから珍しさ的に下級ということで下級属性と言う。ちなみに、雷、氷属性は中級属性、闇、光などは上級属性である。また、特殊属性というのもあるらしいが、それは見た事がない。


(……賢者か)


賢者と聞いて俺は少し顔を歪めてしまう。留学生が多いと言っても、俺の知っている賢者では無いはずだ。あれは光魔法以外の練度は低かったはず。それに、大事な勇者(笑)の仲間を国外への留学には出さないと思う。


「では、続いては面接なので学校長室まで案内します」


「あ、ああ」


考え事をしていたせいで返事が遅れてしまう。とりあえず、余計なことは考えずに、面接とやらに臨もう。

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