第272話 魔道国で冒険者登録

「さて、魔物を探すのはやめて真っ直ぐ魔道国に向かうぞ」


「分かったのじゃ!」


刀を試せて上機嫌のルシエルと共に今度こそ魔道国へと寄り道せずに向かった。ルシエルは自分の目的が達成された後でも、今までと同じように光身体強化を使って走ってくれた。



「さて……あれが魔道国か」


走ったおかげでそれから2日後には魔道国の城壁が見えてきた。


「大きさドワーフ国よりも何周りか小さいくらいか」


魔道国も他の都市と比べたらかなり大きく見える。魔道国はドワーフ国のように都市が1つという訳では無い。ただ、俺達が向かっている主要都市以外の都市ではポーションや魔導具の材料や本体を作る育成場?や工場などばかりだそうだ。

それらの都市と違い、ここの主要都市では魔導具を作る工場もあるが、なんと行っても魔法学校という世界中でもトップクラスとされる魔法を学べる大きな学校がある。その学校を中心としてかなり発展しているそうだ。

その魔法学校のレベルの高さは他の国の学校から留学生が何人も訪れるほどらしい。



「あ、これから魔道国に入るけど、刀はマジックポーチに仕舞えよ」


「え!?嫌じゃ!」


ルシエルは刀をぎゅっと抱えて何度も首を横に振って拒否してくる。


「一応俺もルシエルも魔法を学ぶから魔法職ってことにするんだぞ。魔法職が武器を持ってたら怪しいだろ」


とはいえ、ぶっちゃけ魔法職が武器を持っていたところで変人としか見られないだろう。ただ、もし咄嗟に武器を使ったり、魔法職では不可能な身のこなしをしてしまった時に武器を持っていたら誤魔化しようがなくて完全にアウトだ。もしもの時に少しでも誤魔化せる可能性を残すためにも武器は仕舞うべきだ。


「刀を取り上げるって言ってるわけじゃないし、街の外に出たら使わせてやるから」


「うぅ…深緋……少しの間お別れだぞ……。必ず余がここからすぐに取りだしてやるからな。元気にやるんじゃぞ……」


ルシエルは俺が貸しているマジックポーチに泣く泣く刀を仕舞う。何か壮絶な別れのようにしているが、きっと数日で取り出して使うことになるぞ?

まあ、ここまで刀を気に入ってくれていたらヘパイトスも嬉しいだろうな。


「さて、俺も仕舞……ん?」


俺も大鎌をマジックポーチに仕舞おうとするが、上手く入らない。もちろん、マジックポーチの口の大きさが足りないとかではない。なんと言うか、大鎌が入りたがらないというのが近い気がする。この俺が大鎌をマジックポーチに入れることに苦戦するとは……!


「とりあえず、今は入ってくれっと…ふぅ…」


1分ほど格闘してやっと大鎌はマジックポーチに入った。


「何か…この大鎌…特殊というか…変じゃない?」


ここで俺はこの大鎌の至極にかなりの違和感を覚え始めた。重さ問題しかり、今の謎の現象しかり、作った本人にも分からないこの大鎌の至極は俺の知らない何かがあるのかもしれないぞ。


「さて、ここからは歩いて行くぞ」


「分かったのじゃ…」


とはいえ、それは今すぐわかることでもないので放置するしかない。

俺はテンションの少し下がったルシエルと共に魔道国へと向かった。




「この街には何をしに?」


「魔法を学びに来た。ついでに冒険者ギルドに登録したいと考えてる」


並んでいる者が少なかったが、俺はギルドカードを出さなかったから少し時間がかかった。ルシエルが奴隷と証明するための契約書的な物まで見せる必要があり、入場料に大銅貨を2枚支払った。

でも、無事に中に入ることはできた。



「うわ…ローブを着たやつばっかりだ」


魔道国ではローブを着た者が多く、武器を持った者はほとんど居ない。一応俺とルシエルも防具を隠すように上からローブを着ている。


「さて、まずは冒険者ギルドに行くか」


俺はまずは冒険者ギルドに向かうことにする。

それは別にルシエルを登録するためでは無い。奴隷も登録はできるが、そもそもルシエルは15歳に満たないから無理だ。目的は別にある。



「本日はどうされました?」


「冒険者ギルドに登録をしたい」


俺は冒険者ギルドの受付でそう言う。先程言ったようにルシエルは登録できない。では、誰の登録をするか。


「魔法職ですね?」


「そうだ」


受付嬢の質問に答えると、受付嬢は魔法職専用の登録用水晶を取り出す。


「では、ここに手を置いてください」


「あ、ああ」


俺は緊張しながらそこに手を軽く置いた。登録するのはまさかの俺だ。大丈夫だと思っているが、それでも緊張してしまう。

置いた手からほんの少し魔力が吸われる感覚がした。


「はい。魔力が登録できました。これで冒険者登録は完了です。では、注意事項の説明をします」


それからギルドでの注意事項などの説明をされるが、それは1度聞いたことある。知ってる内容だったから時に質問することもなかった。



「では、これがギルドカードです。これから頑張ってください」


「ああ」


これで俺は2枚目となる魔法職のFランクのギルドカードを手に入れた。1枚目の登録の時に闘力で登録していたから、魔力を使えば別で登録できると思っていたが、本当にできてしまった。

これは魔力と闘力を両方持っている者だけができる裏技だ。これでもし、何か悪さをしてどちらかのギルドカードが停止になっても冒険者は続けられる。

でもそんな悪さをするつもりは無いけどな。新しいギルドカードはこの街にいる間に使う用だ。



「さて、宿を探して今日はこれで休んで、明日には魔法学校とやらに行ってみるか」


「そうじゃな!」


ラウレーナは魔法学校に通って魔法を鍛えると言っていたからそこに行けば出会えるだろう。ただ、今日は遅くなっているし、明日行こう。

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