第267話 新たな防具と武器
「早速防具と武器を渡すから工房まで付いてこ…」
「ちょっ!大丈夫かよ!?」
ヘパイトスはそう言い、部屋を出て歩き出した瞬間に大きくふらついた。倒れるまではいかなかったが、壁に寄りかかってしまう。
「大丈夫じゃねぇが、今はそんなことよりも武器を見たお前らの反応が楽しみで仕方ないんだ。それにあんだけ豪語していたお前があの問題作を使えこなせるかも気になるしな。それを見るまで寝てられねぇよ」
「はあ…それなら早く行こうぜ」
早く寝てもらうためには早く防具と武器を受け取る必要がありそうだな。実際、俺とルシエルも出来を楽しみにしているから早く貰いたいのが本音だしな。
それからもヘパイトスと俺とルシエルは3人で歩いて工房まで向かった。
「さて、まずは防具を取ってくる」
そういえば、防具や武器などはマジックポーチに入れていないんだな。入れていればさっきの場所ですぐに渡せたのに。
「ここじゃねぇと、何か不具合があったときにすぐに直せないじゃねぇか」
「あっ」
どうやら、俺の考えが言葉に出ていたようで、ヘパイトスに言い返されてしまった。
「それでこれがヌルヴィス、これがルシエルの防具だ」
「「おお!!」」
その防具は濃い紫色をした防具だった。でも光にかざすと、少し透き通って見える。
「付けてみろ」
俺とルシエルはそれを聞いてそれらを装備する。
「どうだ?」
「全く動きを阻害しないな」
「それにとっても軽いのじゃ」
防具は付けていても動きづらいとかは全くない。また、かなり頑丈そうなのに、気になるような重さもない。
「その防具はそこら辺の魔物の攻撃じゃ傷1つ付けられないぞ。最低でもBランク以上じゃないとな」
Bランクの魔物でないと傷1つ付かないとはな。防具の方が俺の防御力よりも遥かに硬いな。
「ついでの防具で驚いてちゃ、この後がもたないぞ。次は刀を持ってくる」
ヘパイトスは防具を装備した俺達の反応に満足そうにすると、次はルシエルの刀を持ってくると言って奥へと行く。その瞬間からルシエルが少しそわそわとし始めた。
「これがお前の刀だ」
「こ、これがか…」
鞘に入った刀を手渡されたルシエルはそれを震える両手でゆっくり慎重に受け取る。その後もゆっくりとした動きで鞘から刀身をゆっくりと出す。
「おお…」
その刀身の色は防具とは違い、赤みがかった紫色だった。これも光をかざすして見ると、少し透き通って見える。
「闘力は使わず、魔力を使うってことでヒヒイロカネをアダマンタイトよりも多く使った」
「これは……」
ルシエルは完全に鞘から抜き取った刀から目を離せないのか、食い入るように眺めていた。
「な、何か試し斬りできるものは!?」
「あるぞ」
ヘパイトスはそう言うと、木に着させたプレートアーマーを持ってきた。いや、普通の試し斬りだった、木に鎧は着せずに持ってこないか?
「はあっ!」
ルシエルはそれを見ても躊躇うことなく刀を鎧目掛けて斜めに振る。
「おいおい…まじかよ…」
斬ったはずのプレートアーマーは微動だにしておらず、ルシエルが刀を振る前と全く変わっていなかった。
コンっ
そんなプレートアーマーをルシエルが鞘で軽くつついた時だった。
スーー……ゴトッ
プレートアーマーがゆっくりズレながら真っ二つになった。もちろん、これは鞘がやったのではなく、さっき振ったルシエルの刀がやったのだ。ルシエルが刀を振るスピードが速かったのもあるが、斬れ味が良過ぎてプレートアーマーは斬られたのに微動だにしなかったのだ。
「凄い…こんな刀は初めてなのじゃ。斬れ味もさることながら、まるで手足のように自由自在に扱えるのじゃ」
「それなら良かったぜ。じゃあ、ついにメインの大鎌を持ってくるぜ」
ヘパイトスは満足そうなルシエルを見ると、また奥へと向かう。
ルシエルはまだ刀を眺めている中、俺は自分の大鎌に期待を膨らませながらヘパイトスが行った奥を見る。
ガガガガ………
「くっ…!ふっ……!」
「…え?」
俺の大鎌の登場の仕方はこれまでの防具や刀とは全く違った。俺の大鎌はヘパイトスが苦しそうにしながら引き摺られてやってきたのだ。それには刀を眺めていたルシエルを思わず視線を移す。
「お前…受け取ってみろ!」
「お、おう」
俺は今にも倒れそうになっているヘパイトスから大鎌の柄を持つのを変わる。
俺はその大鎌を持ち上げて改めて眺める。色は青黒い感じだな。ただ、色に深みが出ていて、まるで光の届かない深海を彷彿とするような色合いだ。これまでの防具と刀と違って光にかざしても、光が透き通ることは無い。
「お、お前……重くないのか?」
「ん?特には…」
軽く振ってみるが、軽くも重くもない。ちょうど良い感じだ。重心が先の刃の付いた場所の近くにあるので振りやすいな。
「…一旦床にそれを置いてみろ」
「ん?ああ」
謎だったけど、とりあえず言われた通り、床に大鎌を置く。俺も試し斬りをさせてほしかったけど、仕方がない。
「お前持ってみろ」
「ん?分かったのじゃ」
ヘパイトスがルシエルに向かってそう言うと、ルシエルは置いてある大鎌に手を伸ばす。
「あっ…え?」
「ん?」
しかし、ルシエルが大鎌を握って持ち上げようとした瞬間、すり抜けたように大鎌から手が離れる。
「も、もう1回じゃ!」
ルシエルは一旦刀を置いて、両手で大鎌を持とうとした。
「ふん……ぐぅ…!無理じゃ!重過ぎる!」
しかし、ルシエルは大鎌の柄を少し持ち上げたところでそう言って手を離す。
「あ、あれ?」
2人の視線が俺の方を向いた。俺はゆっくり大鎌を持つが、普通に片手でも持ち上げられてしまう。
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