第266話 武器の完成までは長く……

「やあっ!」


「闇雲に突っ込むな!もっとじっくり攻めろ!」


ルシエルが動けなくなるほど模擬戦をした次の日から、俺は子供達に武器と魔法の使い方を教えるだけでなく、部屋でルシエルにも戦い方を教えていた。

これはルシエルから希望したことで、戦い方がかなり似ているから指摘できるところも多いということで俺も承諾した。


「吹き荒れろ…」


「速いからって風魔法ばかり使うな!いっぱい属性があるのが長所なんだから、もっと色んな属性の魔法を使ってけ!」


俺も闇魔法をストックしている間の他の魔法の使い方は上手くはないかもしれない。でも、俺もできているか分からないことでも指摘することはできる。


「ウィンドボム!」


「お前はスピードが1番の武器なんだから、魔法を放つ瞬間も足を止めるな!」


このように俺はルシエルを指導していった。ルシエルは指導に対して、文句を言うことなくしっかりとやってくれている。また、俺の言ったことに疑問があったらちゃんとなぜか聞いてくるし、かなり教えやすかった。



「よし。じゃあ、模擬戦はここで終わりにして、魔装の特訓をするぞ」


「はあ…ふぅ…ああ」


それと、俺はルシエルに戦い方以外に、魔装の取得の特訓も行っている。ルシエルはまだ魔装を取得できていないが、ルシエルも魔族の住む場所にいた時にも少し魔装取得の特訓はしていたそうだ。

ただ、魔装の特訓に関してはラウレーナや師匠らの方が教えるのは上手いだろう。だが、ここには俺しかいないので、俺が教わったようにルシエルに精一杯教えた。

朝、昼は子供達に武器や魔法の使い方を教え、夕方や夜になったらルシエルに戦闘方法と魔装の特訓をする。このような毎日がハゲデブ騒動の後は続いていった。




「さすがに遅くないか!?」


今は昼ご飯を食べてるところだが、今日でヘパイトスが工房に籠ってから20日が経過する。ヘパイトスの予定では、防具は5日、ルシエルの刀は4日で作れるといっていた。大鎌に関してはどのくらいかかるか分からないと言っていたが、大鎌だけでも11日かかっている計算になる。


「さすがに生きてるか心配になるくらいなんだが」


ここまで遅いと中で事故が起きたのかと思ってしまう。だが、あれだけ豪語しておいて、事故で失敗ということは無いだろう。つまり、それほど俺の大鎌に…海竜の鱗に苦戦しているのだろう。


「確かにあいつがこんなに籠るのは初めてだな」


「あ、長」


俺の独り言を聞いていたのか、長が話しかけてきた。


「私の経験上、武器作りに苦戦して工房に籠れば籠るほど、出てきた時には良い武器ができているから期待しておきな。私が知っている中でも最長は1つの武器に5日間だからね。今回はきっとあいつにとっても最高傑作になるぞ」


「それなら期待して待ってるしかないな」


ヘパイトスをよく知るであろう長にそう言われると、期待してしまう。いっその事もっと工房に籠っててほしいとも思うくらいだ。とはいえっても、俺がどんなに願ってもヘパイトスは武器ができたら出てくるはずだ。


それからも1日、2日と経っても出てこない。長く籠ってほしいと願ってもみたが、もう魔道国に来てから一月以上も経過しているからラウレーナのことがどうなっているかも気になってくる。


それからも俺達はヘパイトスの武器の完成を待ち続けた。




「おい……お前ら…」


「ん?あっ!ヘパイトス!!」


「っ!?」


そして、ついにヘパイトスが俺とルシエルの部屋を訪れた。


「その顔大丈夫か!?」


「顔?知らんが、問題ないだろ」


ヘパイトスは濃い隈を作り、頬も痩せこけている。よく見ると、狭い場所を通れなかった腹も今は凹んでいる。


「そんなことよりもお前らの防具と武器がついに完成したぞ。あのゴーレムの加工に思ったより時間がかかって、防具を作るのに6日、ルシエルの武器を作るのに7日もかかったぞ」


「いや、それよりも大鎌だよ!お前は30も工房に籠ってたんだぞ!」


ヘパイトスは30日間工房に籠り、やっと出てきた。さっき言ったように防具と刀に時間が想定よりも多くかかったとしても、俺の大鎌だけで17も使ったことになる。

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