第262話 武器作りの前段階
「刀の試作ができたぞ」
「……早すぎないか?」
俺達が帰ってきた次の日、俺が子供達に戦い方を教えていると、ヘパイトスがやってきた。
「ちゃんと休んだのか?」
「酒を飲んで一晩寝れば回復なんてできる。それにもう午後だ。こんななまくらでいいなら数時間でできるのが当たり前だ」
ドワーフだからと言って、酒を飲んで一晩寝ただけで疲労が回復できるもんではないのはさすがに分かる。とはいえ、ヘパイトスが無理をしているようにも全く見えない。もうヘパイトスはそういうもんだと思うしかないか。
「振って感想を教えてくれ」
「分かった」
ルシエルはヘパイトスから貰った剣を軽く振り、それで思ったことをまたヘパイトスに詳しく伝える。
ちなみに、ここの者はルシエルをきっと物理職と思っている。それには洞窟での護衛のためにルシエルを買ったというのも関係している。わざわざ誤解を解く必要もないので、ルシエルは物理職としている。だからルシエルには俺が子供を教えている時は武器の振り方などの闘力を使わないことの助言を頼んでいる。
「夕方ぐらいにお前ら2人は工房に来てくれ。防具のために採寸をする。その時にまた試作を見せるから感想を教えてくれ」
ヘパイトスはそう言い残して出ていった。
当たり前のように話があったが、どうやら武器だけでなく、防具まで作ってくれるらしい。
外に出るのも憚られるので、夕方までは最近できていなかった分も子供達に戦い方を教えていた。
「よし、採寸するぞ」
夕方、言われた通りに工房に行くと、早速採寸された。
「……細かくないか?」
ヘパイトスの採寸は胸や胴周り、腕や脚の長さと太さだけでなく、肩幅や足のサイズ、さらには手や指の長さと太さまで詳しく調べられた。
「全身の装備を作るとなると、それぐらいのデータが必要になる。それはともかく、作る防具の種類は2人とも今の物と同じでいいのか?」
「おう」
「うん」
俺とルシエルは戦闘スタイルも似ている。だから、胸、腕、脚などの関節がないところに、動くのに邪魔にならない程度の装備しかしないという点が共通している。基本的に動きやすさメインで、防具は万が一の時に守ってくれればいいという感じだ。
特にスピードで相手を翻弄するような戦い方をするルシエルは防具の軽さなどは重要だ。
また、防具に関してはステータスと採寸結果を参考にして作るため、試作は必要ないらしい。そのため、一応ルシエルのステータスもヘパイトスに見せた。
「それでこれが次の試作だ」
採寸が全て終わると、再びルシエルへ試作の武器を手渡す。
「……何じゃこれは。こんな扱いやすい武器は初めてじゃ」
「当たり前だ。お前好みの武器をこの俺様が作ってるんだからな」
ルシエルはその試作の武器を振って感動している。ただ、細かい注文はまだ少しあったようで、それの指摘をする。
「試作はもう1、2本で武器の形は仕上がるな。それが終わったら、とりあえず防具をさっさと仕上げて、メインの武器作りをするからな」
「全体的な期間はどのくらいだ?」
「防具は2人分でも5日あれば問題ない。刀についても3、4日で作り上げられるだろう。だが、お前の大鎌に関しては4日以上かかるのは確実だが、いつ終わるか全くわからん」
それにしても早いな。普通なら防具にしろ、武器にしろ、1人分作るのには10日以上の時間がかかるはずだ。
また、俺の大鎌に関しては予定時間が分からないのは海竜の鱗がどれほど加工しづらいか分からないからだそうだ。他のよりも長くかかるのは確実らしい。
「防具と武器は全てできた時にまとめて見せてやる。だから作り始めてからは誰1人この工房には入るなよ」
ヘパイトスは作り始めてからは集中するため、この工房で1人で作業をしたいそうだ。また、作業中に余計な茶々が入るのも嫌らしい。一応扉に鍵はかけるそうが、そもそも近付かないように気を付けないとな。
「それじゃあ、また明日試作を渡すからな」
「よろしくな」
それでヘパイトスとは別れ、俺達も部屋に戻った。
言っていた通り、ヘパイトスは次の日に試作を持ってきた。その時の試作でルシエルはこれ以上注文が無くなったため、試作作りは終わりとなった。
その日の夕方からヘパイトスは工房に籠るようになった。俺達はできるだけ邪魔をしないような生活を心掛けていた。
そんな中、ヘパイトスが工房に籠って4日後、とうとう俺にルシエルを競り負けたハゲデブがここの場所を突き止めた。
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