第252話 幻想的
ドゴゴンッ!!!
「おっ、やっと下が近付いてきたな」
まだ下は見えないが、先に落ちた瓦礫やオーガが地面にぶつかる音が反響して聞こえてきた。もう20分以上降りているが、もう少しかかりそうだ。
「到着っと」
「俺様は死んだと思ったぞ」
「助かったのじゃ」
結果的に30分ぐらいかかって下に到着した。最優先で周りに魔物が居ないか確認するが、特に居なさそうだ。一緒に落ちたオーガもぐちゃぐちゃに潰れて死んでいるしな。魔物が居たらその死体を食べたりしているはずだ。
ドワーフは松明を付けて周りをよく見えるようにする。
「周りに目的の鉱石は無いのか?」
「……周りには見えんな」
こんだけ深くに来てもまだ目的の鉱石は見つからないのか。
「さて、今日はもう休憩するか」
さすがにオーガの潰れた死体はぐちゃぐちゃ過ぎたからマジックポーチに仕舞わないでルシエルの火魔法で燃やした。とはいえ、死体があった場所の傍で寝るのは嫌だから少し移動し、今日はここで一旦寝泊まりする。もうすぐ夜になるという時間だし、今日のほとんどをゴーレムと戦いに使ったからさすがに疲れた。
「それにしても魔物が全く来ないのう」
「そうだな……」
瓦礫が落ちてきた時にかなりの音がしたと思うが、魔物は全くやってきていない。さすがにこれをラッキーだという程度で考えられるほど俺は楽観的では無い。この辺に魔物が居ないとするならそれなりの理由はあるはずだ。例えば、強力な魔物の縄張りだから他の魔物は寄り付かないとかな…。
とはいえ、現時点で魔物が来ないのは良い事のため、その間に休ませてもらう。
「明日からはどうする?ここは目的の鉱石があるとされて、俺様達が目指していた深さは優に超えている。奥に関しても一直線に進めたから既に目標近くある。ここで探せば目的の鉱石が見つかる可能性は高い。
そして、この道は勾配が付いておる。帰るなら上り坂だが、逆に進むとするなら下り坂だ」
俺とルシエルがテントや食事の準備をしている間にドワーフは色々と調べてくれたようだ。
しかし、勾配なんて全く気付かなかったな。
「俺は進みたい。運良くか悪くかはまだ分からんが、予定よりも深く来れたんだ。このチャンスを逃す手はない」
「余は主に従うのじゃ」
もう目的の鉱石が採掘できる場所まで来ているのだ。ここで何もせずに引き返す必要はない。
ルシエルはとりあえず、俺の意見に賛成のようなので、判断はドワーフの意見に委ねられた。
「お前ならそう言うと思ってたぜ。一応確認しただけだ。俺様もここで引き下がる気は無い」
「やっぱりそうだよな」
こうして俺達は目的の鉱石を求めてさらに奥まで進むことにした。
その日も同じように俺とルシエルで交代で見張りをしたが、相変わらず魔物が現れることは無かった。
「さて、行くか」
そして、次の日、俺達はさらに奥へと進んで行く。
「おい…勾配が急になってないか?」
「そ、そうだな…」
ほとんど気付かなかった程度の勾配は段々と強くなり、今では足で踏ん張りながら歩かないと転がり落ちそうな程になっている。
そんな道を数時間歩くと、今度は逆に急に勾配が全く無くなった。
「おい…何か先が明るくないか?」
「ん?」
勾配がなくなって少し歩くと、道の先で何かがキラキラと光っている。それもかなりの明るさだ。
「恐らく鉱石が反射して光っているのだと思う。こんなに光っているということはかなりの量の鉱石があるぞ!」
ドワーフが興奮したようにそう言う。あんな目立つ場所なら魔物が居てもおかしくないため、俺達は警戒しながら向かう。
光っている場所へと辿り着いた時には自分の目を疑った。
「なっ!なんだこれ……!」
「綺麗じゃ…」
そこは大きな空間が空いており、高さは20mを余裕で超えていて、横幅は50m近くはありそうだ。
そんな空間の壁には透き通る青と赤の鉱石がこれでもかというほど飛び出ている。松明の光だけで鉱石らと反射して赤と青の幻想的な光を放っている。
「…ここにある鉱石がアダマンタイトとヒヒイロカネだ!まさかこの2つが同じ場所に取り切れないほどあるとは…!」
どうやら、青いのがアダマンタイトで赤いのがヒヒイロカネらしい。奥に進んだことで、ちょうど2つの鉱山の間付近に来たようだ。それでたまたま2つの鉱石が混在する場所に辿り着いたようだ。
ドシン…ドシン……
「まあ……鉱石は見つかったけど、問題はこいつをどうするか何だよな」
俺は歩いてくるゴーレムに目をやる。そのゴーレムは前まで見たゴーレムとはサイズが異なり、3倍以上の8mくらいはありそうだ。
そして、何よりもその色は透き通る紫色である。ゴーレムは食べた鉱物で変異するとか言われているが、色的にこのゴーレムはアダマンタイトとヒヒイロカネを食ってたようだ。
また、ゴーレムは食った鉱物が良ければ良いほど硬く、強くなるとされている。
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