第246話 鬼才とは

「朝飯できたぞー」


「こっちも片付いたのじゃ」


俺の寝泊まりする部屋は何も無いただの空き部屋だったので、テントを張って中に寝袋を敷いて寝ていた。テントにはラウレーナも余裕で寝れるほどの大きさの物もあるので、それを使って同じテントで寝袋を用意してルシエルにも寝てもらった。

一応寝込みを襲われないかほんの少し警戒していたが、特に何も無かった。ただ、俺の予想が合っていれば、ルシエルが寝袋に入ってから完全に眠りにつくまで数時間かかっていた。


そして、起きてからドワーフに今日はこの部屋で1日大人しくしていると言ってきた後に、俺は料理をし、ルシエルにはテントの片付けをやってもらっていた。

マジックポーチには保存できる食料なども多く入っているので、簡易な料理ならできる。


朝食を食ってから2人で後片付けをし、俺達は向かい合って地べたに座る。



「さて、昨日言っていた質問を聞くぞ」


今日の一日はお互いに気になっていることに対する質問で使うつもりだ。昨日は俺が何度も聞いたので、次はルシエルの番だ。


「……質問では無いが、まずはお主のステータスを見せてくれ。見せてくれたら余のステータスも隠さず見せるのじゃ」


「構わないぞ。ステータスオープン」



【名前】  ヌルヴィス

【種族】  人族

【年齢】  16  

【職業】  不遇魔法剣士

【レベル】 31  


【生命力】 485/485  

【闘力】  485/485  

【魔力】  485/485  


【物攻】  245  

【魔攻】  245  

【防御】  140  

【敏捷】  215  

【精神】  215  


【物理スキル】

・大鎌術Lv.6・身体強化Lv.5・大刀術Lv.4

・無属性魔法Lv.4・体術Lv.3・闘力操作Lv.3

・闘装Lv.1


【魔法スキル】

・闇魔法Lv.6・雷魔法Lv.5・氷魔法Lv.5

・身体属性強化Lv.4・魔力操作Lv.3・付与魔法Lv.2

・魔装Lv.1


【他スキル】

・隠蔽Lv.7・危険感知Lv.2

・気配感知Lv.1・多重行使Lv.1・解体Lv.1



俺はルシエルにステータスを見せる。まあ、俺のステータスはクラーケンを倒してから特に変わっていない。


「本当に【闘力】と【魔力】を持っておるとは。実際に目で見ても素直には信じられん。……種族は本当に人族なのか?」


「いや、そこを疑うのかよ」


隠蔽でステータスを隠さずに見せたのに、そこを疑われるとはな。まあ、ルシエルも本気で疑っている訳では無いと思うけど。


「色々気になるところはあるが、【防御】がかなり低いのが弱点じゃな」


「まあ、そうだな」


意外と負けたのが悔しかったのか、ルシエルは俺の弱点を指摘してくる。


「まあ、その弱点を知っていたとしてもルシエルには負けんがな」


「ふん、言うだけならただじゃ」


ルシエルは軽く俺を睨みながら言い返す。



「ステータスオープン」


唐突に、ルシエルは自分のステータスを俺にも見えるように表示させた。



【名前】  ルシエル

【種族】  魔族

【年齢】  14

【職業】  魔戦姫

【レベル】 20


【生命力】 393/393  

【魔力】  326/326  


【物攻】  153  

【魔攻】  153  

【防御】  151  

【敏捷】  175  

【精神】  151  


【物理スキル】

・刀術Lv.4・薙刀術Lv.2・体術Lv.2・危険感知Lv.1


【魔法スキル】

・光魔法Lv.5・生活魔法Lv.4・火魔法Lv.4

・水魔法Lv.4・風魔法Lv.4・土魔法Lv.4

・身体属性強化Lv.3・魔力操作Lv.3・付与魔法Lv.3




「うわっ、高水準だな」


全体的にステータスも高く、スキルも充実している。ステータスの数値も高い。【魔力】も【攻撃】と【特攻】以外は俺が20レベルの時のステータスよりも高い。特に【防御】に関しては俺がレベル20の時はまだ2桁だった。まあ、【防御】に関しては現時点でも負けてるけど…。

また、隠蔽のようなスキルが無いことから、ステータスを隠していたりしたのは魔導具などだと確定したな。



「それで、光魔法が……」


「ああ、鬼才で授かったスキルじゃ」


「鬼才?」


俺の話を遮り、急に知らない言葉がルシエルから飛び出した。


「鬼才のスキルを知らんのか?お主の闇魔法も鬼才じゃろ!」


「もしかして、レベル4で授かったスキルのことか?」


「そうじゃ!」


ステータスを授かった時にレベル3のスキルを奇才、レベル2のスキルを天才、レベル1のスキルを俊才、自らの努力で取得したスキルを秀才と言う。だが、鬼才というのは聞いたことがなかった。そもそも、レベル4でスキルを授かることがあることすら俺という存在が居なければ知らなかった。



「魔族では鬼才のスキルが1つでもあると、その者は先祖返りしている特別なステータスを持っているということになるのじゃ。

そして、鬼才のスキルは普通のスキルには無い特殊な能力が複数眠るとされておるのじゃ!鬼才のスキルは余を含めても里の魔族に5人しか授かっていないのじゃぞ!」


「なるほど……」


レベル4で授かったスキルのことを鬼才というのか。鬼才のスキルは今まで魔族にしか生まれなかったのか、俺達人族などの間で名称不明だったみたいだな。



「つまり、俺の大鎌術と闇魔法と隠蔽が鬼才ってことになるのか」


「なっ!?闇魔法だけじゃないのか!?」


俺の独り言にルシエルは目を大きく開いて驚く。

しかし、ルシエルの話だと、その3つの鬼才スキルにはまだ特殊な能力が眠っているのかもしれないのか。……そもそも隠蔽の特殊な能力って何だ?



「鬼才スキルが3つも……。もうお主は始祖だと言われた方が納得できるじゃ。一体お主は何者なんじゃ……」


そうぼそっと呟くルシエルに俺は返す言葉を持たなかった。一応今日までは少しステータスが変な人族であると自分では思っていたが、そこまで言われると自信が無くなる。



「えっと…魔戦姫??」


話題を変えるために俺はルシエルのステータスを見る。そこで気になったのは魔戦姫という職業だ。魔戦姫という職業は聞いたことがない。まあ、俺の知っている職業は1部しかないので知らない職業の方が多いだろう。だが、姫と入っているのが気になる。


「余は魔族の姫じゃったからな。魔法を使って戦のできる姫で魔戦姫じゃ」


「うぇ!?」


ここでとんでもない情報が飛び出した。まさか、ルシエルは魔族の姫だったそうだ。


「……本当か?」


「本当じゃ!疑われるのは心外じゃ!!」


ルシエルが飛びかかってくるのではと思うほどの勢いで文句を言ってくる。本当か確かめるために奴隷の命令を使おうかと思ったが、使ったら本気でキレられるからやめよう。


…しかし、魔族の姫が奴隷に堕ちなければならないほどの出来事とは一体何なのか、より疑問が深まった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る