第245話 濃い1日の終わり
「さて、次はルシエルの質問に答えるぞ」
俺はまだまだルシエルに聞きたいことは多い。特に魔族のルシエルが奴隷なるほどの出来事が何か、また他の魔族はどこで何をしているのかなどが聞きたい。だが、会って初日に聞くようなことでは無い。ルシエル関係で問題が起きそうになったら無理やりでも言わせるが、そうでなければルシエルが自ら話すのを待ちたい。いきなり内部事情まで踏み込むのはこれからの信頼関係に影響するしな。
「それなら……」
少し悩んだルシエルが質問を言おうとしたその時だった。
ゴンゴン!
「静かになったが、終わったんじゃないのか?まだ時間がかかりそうなら俺は工房に戻って寝るぞ」
「質問はまた明日だな。明日また聞くから質問を考えておいてくれ」
「わかったのじゃ」
ある意味、ドワーフのノックのタイミングは完璧だった。いきなり質問をしろと言っても、なかなかできるもんではないだろう。特に今日はルシエルにとって色々なことが起こり過ぎた日だしな。日を改めて冷静になってから聞いた方が良いはずだ。
「今開ける!あっ」
俺は扉を開けようとしてある重大なことに気付いた。しかし、既に扉を開けようとしている動きは止めることはできなかった。
「意外と長かったな……何だこのクレーターは!」
「あはは……」
この部屋を使う時にある程度丈夫なだけだから、本気で暴れるな的な忠告をされていた。しかし、俺の放った闇魔法のストックは本気も本気だ。その結果、地面には大きな凹みができている。1番深いところで1mは凹んでいるかもな。
「えっと…ルシエル直せる?」
「はあ…硬くなれ!アースウォール」
ルシエルは呆れ顔で俺の方を一瞥すると、穴に添わせるように土の壁を作った。中には少し空洞があるし、地面の色が少し違うけど直ったは直ったな。
「まあ…いい。ところで、お前がそこまでするほどその少女は強かったんだな?」
「そうだ」
俺はドワーフの問に即答する。あの時に何とか防御策を取ろうが、確実に怪我はしていた。無傷で勝つにはあれぐらいしか選択肢がなかった。
「それなら仕方ないし、許してやろう。ところでなんでこんなに武器が散らばってるんだ?」
「あーーー」
俺がルシエルに使わせるためにばら撒いた武器がそこら辺にある。どう説明しようかと考えてみるが、素直に言った方がいいかもしれない。
「言ってもいい?」
一応ルシエルに確認する。その時に言葉には出さないが、口パクで魔族とは言わないとルシエルのみに分かるように説明する。
「いいのじゃ」
「ありがとう」
許可が取れたのでドワーフにルシエルのことを説明する。ここですっとルシエルからの許可が出るくらいには信頼してくれているようだ。
「このルシエルも俺と同じように魔法職のステータスだけでなく、【攻撃】とかのステータスを持ってたんだ。だから武器を使わせようとしてそこら中にばら撒いた」
「なるほどな。少女もこいつと同じで物理職と魔法職のステータスを持ってるのか」
「いや、【闘力】だけは無いらしい」
一応間違っていることに関しては訂正しておく。
「なるほどな。そして、ここまで全て俺に言うってことは……」
「ああ、ルシエルにも武器を作って欲しい」
「っ!」
正直に全部話したのはルシエルの武器も作って欲しいからだ。さっきは俺の大刀を使っていたが、正直かなり使いづらそうだった。あれは男の俺の体型に合わせてかなり長い作りだから、まだ小柄なルシエルには使いづらいだろう。自分の身長よりも長いだろうしな。そんなでもあれを選んだということは刀術のスキルを持っているのかもな。
現に俺があんなにすっと懐に潜り込んで首を掴めたのは、武器の長さの感覚を間違えたという面もあるだろう。
「恐らく、変異した鱗はその少女には合わんだろうし、そもそもお前の大鎌で鱗は使い切るぞ」
このドワーフは魔物の素材を使って武器を作るため、魔物の素材がないと武器は作れない。だが、素材に関しては問題ない。
「これから俺達は鉱石を採掘するために鉱山のどこら辺まで行くんだっけ?」
「ああ、なるほど。そこなら強い魔物も多いな」
鉱山の奥に行けば行くほど魔物は強くなるそうだ。そして、俺の大鎌に使う鉱石はかなり奥まで行かないといけない。魔物の素材はそこで取ればいい。
「まだ詰める話は多いが、今日はもう遅いし、戻って寝るぞ」
「そうだな」
オークションが夕方スタートだったので、もう夜も遅くなっている。そろそろ眠ってもいいだろう。
俺とドワーフが外に向かって歩き出すと、ルシエルもその後についてくる。
「ありがとうな」
「なんの事だ」
俺は後ろのルシエルには聞こえないくらいの声でドワーフに感謝を伝える。
ドワーフはルシエルの奴隷契約にいた。つまり、ルシファとして奴隷になったステータスなども全て知っている。そのため、ステータスもだが、名前すらも違うことに気付いているはずだ。それでも深く聞いてこないのは助かっている。
「何でもない」
俺がそう答えてからはお互い無言のままそれぞれの寝る部屋へと行った。ちなみに、ルシエルは俺の奴隷なので、俺と同じ部屋となった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます