第241話 少女の実力 前編
「え?ここに住んでるの?……ですか?」
「無理に敬語使わなくていいから普通に話していいよ」
裏路地の地下の入口に来ると、少女は困惑していた。
ちなみに、敬語は奴隷なった時に教わったらしく、まだ全然上手く話せないらしい。それなら面倒だし、普通に話してもらう。
それに、魔物との戦闘では仲間同士の意思疎通のちょっとした遅れがお互いの命に関わる。だから言葉使いなんてくだらないことが原因で意思疎通の遅れが生まれることは避けなければならない。
「この地下はこの街にいる間の仮拠点みたいなものだ。他の街とかだと普通の宿を使っていたな」
「ふーん…」
まあ、あんな大金をポンっと払った奴がこんな裏路地の地下に住んでいるとは思えないよな。
「この地下で人目がなくて戦える、丈夫なところはないか?」
いつも地下の少年らを教えている部屋だったら、魔法もある程度使える。だが、あそこは人が多過ぎてある程度暴れるには不向きだ。だから別の部屋が欲しい。そんな部屋がなかったら少し面倒だが、1回街の外に出るしかない
「それなら一室あるぞ。ある程度丈夫だが、お前が本気で暴れるなよ?」
「はいはい」
歳だけではなく、レベルまでもが下の相手に部屋が壊れるほど本気で戦わないと思うから大丈夫だろう。
「これから私と戦うのか?」
「ああ、どのくらいの強さか知っておきたい」
強さはレベルやスキルなどが当てにならないのは勇者らを見て実感した。結局、どんなに素晴らしい職業やステータスを持っていても、本人が馬鹿だったり、戦闘経験がなかったりなどで使えこなせなかったら意味が無い。
「何か武器が欲しいとかあるか?」
これは深い意味はなく、何気なく聞いた質問だった。魔法職なら杖が必要になるだろうし、何なら近付かれた時の護身用として短剣を使うかもしれない。
「余…わ、私は魔法職だから!武器などは必要ないぞ!?な、何を聞いておるのだ!」
「いや、魔法を使いやすくするために杖とか必要かもしれないだろ」
俺の質問で少女は不自然なほど慌てた。違和感だらけだが、何でこんなに慌てたのかは分からない。
「あっ…そ、そうだな。杖が欲しい」
「分かった。杖だな」
俺は杖を持っていないので、ドワーフの作った杖を借りて戦える部屋に移動した。杖まで作れるとは思ってなかった。
ちなみに、ドワーフには念の為、部屋に入らないでもらった。危ないからな。
「さて、それじゃあやるか」
俺はサブの大鎌をマジックポーチから取り出して、軽く体を動かして準備体操をする。オークションではずっと座ったままで身体が固まっている。
「…正直、怪我をさせない自信はないぞ」
「本気を出していいぞ。怪我はできるだけさせないから」
余計な心配をする少女に俺は逆にそう言う。
少女が何か言う前に俺は付け加えて言う。
「俺のレベルは31で11も上だから、本当に手加減とかしなくていいぞ。もしこれで俺が怪我をしようと怒りはしない」
「もう31なのか!?」
俺のレベルを言うと、少女は驚く。いや、俺からしたら14歳で20レベルな方が驚きだぞ。年齢的にはまだ冒険者として登録もできないぞ。どんな環境で育ったんだよ。
「それならいくぞ」
「来い」
少しやる気になってくれた少女は杖を構える。先手は譲るため、俺は大鎌を持ちながらも、腕を広げる。
「燃え尽きろ!ファイアボム!」
「いきなりそれかよ」
本気で来いとは言ったが、最初から殺傷力の高い魔法を使ってきた。だが、スピードはそこまで早くなく、軽く身体強化をしたので容易に避けれる。
「吹き荒れろ!ウィンドランス!」
「おっと…!」
そう思わせて油断したところに、速い風魔法の大きな槍が飛んでくる。屈んで避けれたが、少しヒヤッとした。
この少女は間違いなく誰かに戦い方を教わっているな。この年で独学のみでこの強さは無理だ。そして、この戦い方を教えたやつはかなり性格が悪いな。相手の嫌なとこを付くいい戦い方だ。
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