第238話 奴隷オークション
『まずは借金奴隷からオークションをしていきます!』
まずは借金奴隷からオークションをかけられるらしい。
奴隷には、奴隷に堕ちた経緯から借金奴隷、犯罪奴隷、戦争奴隷、違法奴隷に分けられる。
借金奴隷と犯罪奴隷はそのままの意味で、金が足りたくなって奴隷として売られたり、堕ちた場合の奴隷が借金奴隷で、犯罪を犯した者が奴隷に堕ちた場合が犯罪奴隷だ。
また、戦争奴隷は国同士などの戦争に参加した者が敵国に捕まった場合の奴隷のことだ。戦争奴隷は戦争が起こらないと生まれないので、あまり存在しない。だが、戦争が始まると一気に増える。
そして、違法奴隷は攫われたり、騙されたりして無理やり堕とされた奴隷のことだ。ただ、違法奴隷はその名の通り違法なので、奴隷商人は違法奴隷と知っていようがいまいが、借金奴隷や犯罪奴隷として売っている。
『まずは全般奴隷のこの人族の少女から!』
また、奴隷は経緯だけでなく、命令できることでも種類が分けられる。
まず、性奴隷、戦闘奴隷、家事奴隷などは性に関すること、戦闘に関すること、家事に関することしか命令できない。他にも鍛冶師奴隷なども居たりするそうだ。
また、今回の全般奴隷とは全ての命令が可能な奴隷のことだ。犯罪奴隷は全て全般奴隷となっている。
『レベルは1、職業は裁縫師で、俊才である裁縫Lv.1を取得しています!』
(ステータスも全て晒されるのか)
レベルだけでなく、持っているスキルなども奴隷としてオークションにかけられた少女は全て晒されている。
その後も少しセールストークが続くと、肝心のオークションが始まった。
『では!銀貨1枚からスタートします!』
「銀貨2枚」
『3番様!銀貨2枚!』
「銀貨4枚」
『7番様!銀貨4枚!』
前の席に座っている者を中心に自分の番号が書かれた札?板?をかかげて値段を上げていく。入札は控え室で渡された自分の番号が書かれた物を上げてアピールしながら金額を言うらしい。
その様子を小さく震えながら奴隷の少女は青い顔でただ見ている。少女も金の為に売られただけで、望んで奴隷となったわけではないだろう。
正直、見ていて気分のいいものでは無い。お世辞にも良いとは言えないステータスを持っていて、見てくれの悪くない少女が買われた後にどうなるかはお察しだしな。
だからといって俺が助けてあげようとは思わない。俺が知らないだけでこういう子供は大勢いるのだ。それを全て助けられると思うほど自惚れてないし、目の前の子だけを助けようと思う偽善者でもない。
『…他にはいませんね?では、7番様の大銀貨5枚で決定です!!』
なんて考えている間に最初のオークションが終わった。人1人の値段が大銀貨5枚というのはどうしても安く感じてしまう。
『では、続いても全般奴隷です!』
そう言って登場した女の奴隷は片腕が無くなっていた。
『この人族の奴隷は24歳、28レベルで冒険者での依頼中、魔物によって片腕が食われたそうです!ちょうど借金をして武器を買ったばかりだったので、こうして借金奴隷として堕ちてしまいました。天才で取得していた大剣術も今ではレベル4となっていますが、片腕ではもう振れないでしょう!』
ちょうど片腕を海竜に斬られたばかりの俺には、状況によってはこうなる未来もあったと見せつけられているようだった。さっきの子もそうだったが、顔が暗く、目が死んでいる。これからの先の未来を諦め、絶望しているような顔だ。
この元冒険者はさっきよりも安い大銀貨3枚と銀貨5枚で買われた。
元冒険者でレベルを考慮しても欠損をしていて戦闘奴隷や家事奴隷としては使えないからこの値段なのかもしれないな。
『次はドワーフ族の男の全般奴隷で、レベルは1の若い15歳です!』
若い男の奴隷はおばさんという年代の女が競り合っていた。若い女奴隷は男が、若い男奴隷は女が買っていることが多いな。偶に同性の若い奴隷を買っている者もいたが、そういうことなのだろうな。
ちなみに、全般奴隷が多いのは、戦闘奴隷や家事奴隷などの制限がある奴隷よりも制限の無い全般奴隷の方が高く売れるからである。
『次は29歳の人族の男でレベル34の剣士です!秀才の剣術スキルは今ではレベル4となっています!』
欠損もなく、ちょうど今回俺が求めているような人材が登場した。
「買わないのか?」
それでも全く札を上げようとしない俺にドワーフが小声でそう話してくる。
「…買う気がおきない」
そんなドワーフに俺はそう返す。さっきから何十人と見ているが、最初の方の奴隷とみんな一緒で奴隷も生気がなく、目が死んでいる。
言っちゃ悪いが、こんな者を買って一緒に行動したくない。俺は別に戦える人形が欲しいんじゃない。どうせならラウレーナのように一緒に成長していける者がいい。まあ、採掘時の短期間だけの付き合いならそれらもあまり関係ないかもしれないけどな。
ともあれ、俺の求めるような人材は奴隷には居ないというのが分かっただけでも今日という意味はあっただろう。
『そして、最後に人族の戦闘奴隷の14歳でレベルが既に20の少女の出品です!魔法職で、奇才の火魔法がもうレベル4になっています!その他にも風魔法や土魔法なども使えます!』
「っ!!」
俺は思わず前のめりとなった。それは別に少女のレベルが高かったり、ステータスが優秀だったからでは無い。ましてや、暗い紫の髪と明るい紫の目のこの少女が今日見たどの奴隷よりも格段に可愛らしかったからでもない。
この少女だけ、下を向いておらず、しっかりと前を向いていて、目にも覇気があったからだ。
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