第236話 採掘方法と提案
「その2つの鉱石が取れなくなったのって、普通に鉱山にあるのを取り尽くしたからなのか?」
急に鉱山からその鉱石らが無くなるとは考えにくい。もし仮にそうだとしたら、どんなに探しても必要量が揃うまでは時間がかかってしまう。
「そうとも言えるが、正確に言うなら取れるところは取り尽くしただな」
その言い方だと、まだ鉱山にはその2つの鉱石は眠っているということにはなる。
「取れるところはってどういうことだ?」
「鉱山の奥に行けば行くほどに鉱山内に住む魔物が強く、そして多くなっているんだ」
「なるほどな」
それが理由なら納得だ。辺りに強い魔物がうじゃうじゃいるところでは、悠長に鉱石採掘をしている余裕は無い。
「それなら俺が奥まで行って取ってくればいいんだな」
魔物が強い程度なら、俺が魔物を殺りながら奥まで行って鉱石を採掘すればいい。鉱山の崩壊の危険から派手な魔法は使えないのは難点だが、まあ大丈夫だろう。
「…ところで、お前はその2つの鉱石を見た事あるのか?」
「あっ…でも見た目を教えてもらえば…」
「似たような鉱石はあるぞ?それに鉱石を傷付けず綺麗に取れるのか?」
「………」
俺の浅はかな考えは早々に打ち砕かれた。もし仮に2つの鉱石を俺が分かっても、鉱石の取り方なんて知らない。今から覚えようにもどれだけかかるか分からない。それに、鉱石を採掘している間に魔物が襲ってきたらさすがに面倒だ。魔物がやってくるペースにもよるが、採掘が進まない可能性もある。
「鉱山には俺も付いて行ってやる。俺なら鉱石を見極める自信も、綺麗に採掘する自信もあるぞ」
「え?いいのか?」
攻撃スキルを持たないと言っていたドワーフがそんな魔物の巣窟である鉱山の奥に行くのは危険だろう。
「魔物はお前がどうにかしてくれるんだろう?」
「……さすがに1人だとそう言い切るほどの自信はないな。最低でも足止めできる奴がもう1人欲しい」
鉱山の構造が分からないが、挟み撃ちされた場合に、俺だけではドワーフを守れる自身はない。
そんな場合のために、時間稼ぎでもいいからある程度戦える者がもう1人は欲しい。こんなことならラウレーナにもドワーフ国に来てもらえばよかったかもな。ラウレーナなら安心して後ろを任せられる。
「それなら戦闘奴隷を買うか?」
「戦闘奴隷?」
ドワーフは思っても見なかったことを提案してきた。戦闘奴隷とは戦うこと専門の奴隷である。だから戦う以外のことを強制できない。だからといって身代わりとして魔物の傍に置き去りもできない。大体の場合は主人から何m以上離れられないなどの制約が着いているらしい。まあ、それがないと主人から奴隷が逃げる可能性もあるしな。
「奴隷なら逃げ出したり、余計なことを言う心配は無いからな。お前がここを経つ時にその奴隷が不要なら所有者を俺に変更するか、また売ればいい。
そうなっても、お前の奴隷時の守秘義務は強制的に守られる。例えば、お前のステータスや戦い方に関してとかもな」
「なるほど…」
確かにある程度の強さで信頼できる者を短期間で用意するとなると、奴隷が1番適切かもしれないな。
「売ってる奴隷を見て回ってもいいが、ちょうど明後日には奴隷オークションが行われる。オークションなら強い奴隷も売られるだろうな。試しに行ってみてもいいんじゃないか?」
「別に見に行くだけで買わなくてもいいんだもんな…。一度行ってみるか」
俺も金が用意できたら裏切らない仲間として奴隷は検討していた。ただ、それもラウレーナという信じられる仲間ができたことで、いつしか考えなくなっていた。
だが、道場があるラウレーナと今後もずっと一緒に冒険者を続けるとも限らないし、ここで1度奴隷を購入してみてもいいかもしれない。奴隷が自分と合わないと感じたら、その時は地下の守りとしてドワーフに譲ってもいいし、売り直してもいい。
「オークションに出るような奴隷は高価だが、大黒貨がある時点でどんな奴隷も買えるぞ」
「まあ、そうだろうな」
オークションで奴隷を買うのに金の心配がいらないのは気持ち的に楽でいいな。ただ、使い過ぎればドワーフに大鎌の報酬が払えなくなるかもしれないから注意が必要だな。とはいえ、あんまり買う気はないからそれも意味が無いかもしれないけど。
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