第235話 海竜の鱗の謎

「鱗の調べは終わったか?」


調べてもらってから2日経ち、俺はまたドワーフの元へ訪れていた。


「一応な。どうやらお前の教えも順調のようだな」


「まあーな」


俺の教え子の数はあれから数人増えた。増えた者達はよくある武器や魔法のスキルだった。


「何やら面白いのを見せたらしいじゃねーか」


「全部知ってるのかよ。本当に鱗を調べてたのか?」


正直、俺が今教えている体術と魔力操作は地味な反復練習しか方法がない。少しずつモチベーションが下がっているのは見ている俺にも分かった。だから俺からの課題が全てクリアしたら最後に教えると言って闘装を見せた。普段全く見ないスキルに少年、少女達のやる気は上がった。また、魔法バージョンもあると言い、魔法職のやる気もあげた。さらに、それを見て他の者達も参加を希望してきた。

まあ、闘装やらを教えるとしたらどんなに早くても1年はかかるから教えることは無いだろうけどな。



「ちゃんと調べてたぞ」


ドワーフはそう言うと、俺が預けていた3つの鱗を机に置く。


「まず、分かったのはこの鱗はおかしいということだ」


「おかしい?」


海竜という特殊で強力な魔物の素材なのだからおかしいと言われても違和感は無い。だが、ドワーフはそう言うことを言っているのではない気がする。


「簡単に言うと、この鱗は少し変異している。だから鱗は剥がれた…違うな。剥がしたんだろうな」


「変異?剥がした?」


ドワーフ曰く、この鱗は何かの影響を受けて変異し始めていたので、海竜は自ら鱗を剥がしたらしい。


「肝心の変異の原因だが、何らかの魔法によるものだ。それも鱗3枚分程度の局所的に一点特化で当てられ、かなりの魔力が込められた高威力な魔法だ。その魔法で何百もの魔力がこの鱗に一度に込められたのが変異の主な原因だ。

まあ、それだけの原因で海竜の鱗が変異することはないと思うが、とりあえず下調べで分かるのはこれくらいだ。何か原因は思い付くか?」


「………あっ」


その限定的過ぎる条件に当てはまる場面が1度だけあった。それは海竜の気を引くためにストックしていた闇魔法を放った時だ。俺のストックにはほぼ全ての魔力が込められている。つまり、あのストックの魔法には400以上の魔力が込められていた。それもダークランスという一点特化の魔法だった。

ちなみに、最後に放った雷魔法の可能性もあるが、あの時は少なくなっていた残りの魔力が全て込められていただけなので、より魔力が込められていて可能性が高いのは闇魔法のストックの方だ。



「心当たりがあるんだな」


「多分俺の魔法だ」


ドワーフに俺の仮説を全て話す。その話を聞いたドワーフもほぼ俺の闇魔法が原因だろうと納得していた。


「この変異がお前によるものならいい。原因不明な変異が起こった鱗を使って武器を作ったら、肝心のお前に合わなかったりすることがあるからな。最悪の場合は呪いの武器とかができるかもしれん」


ただ、俺の魔法によっての変異ならそういった事項は起こらないらしい。むしろ、俺にかなり合う武器を作れる可能性が高いそうだ。


「それで肝心のこの鱗に合う鉱石だが、ヒヒイロカネとアダマンタイトだけしかないな」


「ヒヒイロカネ?アダマンタイト?」


知らない鉱石の名前が出てきた。とは言っても俺の知ってる鉱石は黒鉄かミスリルくらいだけど。


「まず、黒鉄とミスリルは知ってるな?」


「ああ」


黒鉄とミスリルは俺の折られた大鎌に使われていた鉱石の2つだ。黒鉄は硬い鉱石で、ミスリルは魔法を強化してくれる効果があるそうだ。


「アダマンタイトは黒鉄の、ヒヒイロカネはミスリルの上位互換の鉱石だ。

黒鉄よりも遥かに硬く、さらにミスリル並に魔力を流すアダマンタイト。

ミスリルよりも遥かに魔力を通し、黒鉄並に硬いヒヒイロカネ。

物理職と魔法職を併せ持つお前用の大鎌にはこのアダマンタイトとヒヒイロカネを2つとも使って武器を作る」


「おお!!」


使う鉱石だけでも今までの武器の上位互換になっている。そこにさらに海竜の鱗が加わるのだからどんな大鎌ができるのか今から楽しみだ。


「ちょうどこの街の近くの2つの鉱山からその2種類の鉱石が取れる」


「よしっ!」


それなら鉱石も用意する事ができそうだ。


「ただ、取れていたのは昔の話で、今は黒鉄とミスリルの鉱山と化している。今では稀に欠片程度の少量が見つかる程度だ。武器にするにはとてもじゃないが、それでは足りんぞ」


「え?あれ?」


これはもしかして、その2つの鉱石を大鎌が作れるほど集めるのはかなり大変なのか?

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