第234話 特訓希望者

「まずは5人か」


次の日、俺に戦い方を教えて欲しいと志願してきた者は5人だった。まあ、ステータスを授かった者が30人程度いるらしいが、そこから戦い向きのステータスで、さらに見知らぬ俺に教えを乞う者と絞っていき、5人残れば十分だろう。それに、そんなに人数が多くても俺が教え切れない。

ちなみに、その5人はいずれも冒険者として登録できる15歳にはなっていないであろう歳のように見えた。



「とりあえず、どんな攻撃するスキルを持っているんだ?」


まずはどんなスキルを持っているのか大体を聞いていく。

聞いた結果、5人はそれぞれ斧術、双剣術、棒術、雷魔法、氷魔法と俺が言うのも何だが、変わったスキルを持っていた。


「…お前が本当に教えられるのか?」


氷魔法を使う少年が怪しむようにそう聞いてくる。不自然な程に珍しいスキルを持つものが集まっているし、俺のステータスを見たドワーフが彼らには直接声をかけたのかもしれないな。


「問題無い。俺の使う武器も特殊だしな」


俺はそう言いながら大鎌を取り出す。試しに大鎌を数回ちゃんと振ってみる。


「こんな感じに俺は大鎌を使いこなしている。多少は特殊な武器に対する扱い方を心得ているつもりだ。魔法に関しても仲間に特殊な奴がいたから基礎を教えるくらいはできる」


そう言うと、5人の目の色が変わった。少しは信頼されたようだ。

魔法に関しては俺が特殊とは言えないからこういうしか無かった。だが、教えられるのは嘘では無い。何なら、同じスキルを持っている分、物理職よりも正確に教えられる。



「まずは物理職の3人は順番に俺へ攻撃してくれ。俺は鞘で適当にいなす。俺からは攻撃しないし、どうせ当たらんからスキルをできるだけ使って全力で来いよ」


彼らはステータスを授かった時に鍛錬に使える程度の武器をドワーフに貰っているらしい。だから3人にはそれを使ってもらう。


「じゃあ、俺から行くぜ」


「おう」


威勢がいい奴から向かってきて、闘力が切れかけるまで順番に3人の相手をした。3人とも武器のスキル以外にも身体強化は問題無く使えるようだ。



「さて、次は魔法職だが、まずは的に魔法を…」


「あれ?俺達は直接相手してくれないのか?」


最初に話しかけてきた氷魔法の少年が、挑発するようにそう言ってきた。


「それが希望ならそうしてやるよ。さっさと魔法を打ってこい」


あからさまに舐められると年下とはいえ、イラッとくる。だから出しかけた的をしまう。



「凍てつけ……!アイスボール!」


その少年が氷魔法を使ってくる。発動までも遅いし、放たれた魔法自体も早くは無い。また、大きさも顔くらいしかない。避けようと思えば簡単に避けれるが、あえて避けも防御もせずに顔面に当たる。


「口だけかっ!?」


顔に当たって落下しているアイスボールを蹴りながら俺はそう言う。蹴ったアイスボールは少年の顔の横を通過して壁に当たって砕ける。


「は…ははっ。ま、まだまだ!」


少年は苦笑いになった後、嬉しそうに笑ってどんどん魔法を放ってくる。その中にはアイススピアやアイスアローなどのボール系以外の魔法も放ってきた。また、コントロールがよく、どれも顔や頭などをちゃんと狙えていた。

この少年の氷魔法は俺がステータスを授かった時の氷魔法よりも使い方が上手い。ただ、スキルレベルは俺の1つ下の2な気がする。でもきっとこの地下ではこの少年の魔法に勝てる者は同年代ではいなかったかもな。

少年が魔力を使い切って頭痛と気持ち悪さで苦しんでから最後の少女の雷魔法も見た。少女は的を希望したので的に魔法を当てて貰った。

やはり、この5人の中では氷魔法の少年だけが他よりも少し強かった。

だが、レベル1である現時点の強さなんてこれからの努力次第で簡単に覆る。


「大体の強さはわかった。これからは物理職には体術を、魔法職には魔力操作を取得してもらうための特訓を始める。魔力を使い果たしたバカは明日からだ」


他がちゃんと闘力や魔力が0にならないようにした中、0になるまで魔力を使い果たした氷少年の特訓は明日からだ。どうせ、0になった苦しさで今日は何もできない。

まずは5人にはステータスを授かった俺がやったのと同じように体術と魔力操作を取得してもらう。それがあるとないとではやれることが大きく変わってくるからな。

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