第233話 拠点変更
「とは言ったが、まずはこの鱗とどんな鉱石の相性が良いかを調べなければならない。だから2日後にまた来てくれ。その間はこの鱗の3つは預かってもいいか?」
「鱗は預けておく。2日後だな?わかった」
海竜の鱗を預けておくのは全く問題ない。武器を作る段階で必ず預ける時はやってくる。だから今からそんなことを躊躇している場合では無い。
それに、もうステータスを見せるほど信頼している相手だしな。
「ちなみに、その2日間は暇なのか?」
「特にこれといったやることは無いぞ」
鍛冶師探しが終わったからやること自体は無い。宿でゆっくりするか、討伐依頼を受けるくらいしかやれることもない。
「それならステータスを授かった子に戦い方を教えてくれないか?」
「戦い方?」
何でも、年に一度、ここの場所の存在を知っている神官がこっそりステータスを授けに来てくれているそうで、ここに30人程はステータスを授かっている者がいるらしい。
だが、ここには戦い方を教えてくれるような大人は居ない。だからいくら武器や防具を渡したところで、冒険者になれる歳になって外に出ても、誰かに殺されて装備を盗まれるか、魔物に殺されてしまうそうだ。そのため、ろくに外に出て稼ぐのもできないそうだ。
ちなみに、下手にこの場に大人を入れない理由はいきなり上の者を加えると、上下関係に亀裂が走り、ここの維持すらできなくなる可能性があるかららしい。何より、悪い考えを持った者でないと確認するのは無理に等しいしな。
「ついでにこの場に寝泊まりしてもいいぞ。そうしたら色々と指示する俺様も楽だ」
「戦い方を教えるのは全然構わないぞ。寝泊まりもここでさせてもらうとするか」
ということで、俺の拠点もここになった。とりあえず、勿体ないので1度宿に戻って宿の予約を終わらせる。ついでに戦い方を教えるための特訓に使う道具らや、大量の肉を買ってから再び地下に戻ってくる。
「私がここの長をやらしてもらっているバミロンだ。これからよろしく」
「ああ」
再び戻ってきた時にこの場の長である男口調のバミロンという中年の女と挨拶をする。その時にこのバミロンが俺を警戒しているのは丸わかりだった。だが、こんな隠れ家の長をしている者なら、むしろそれくらいがちょうど良いだろう。相手の立場で考えたら自分でも急に来た俺は怪しい存在だと思うしな。
「さっき買ってきたこれを子供達の料理に使ってくれ。もし心配なら目の前で適当に炙ってまずは俺が食ってもいいぞ」
挨拶が終わってから大量に買った肉を取り出す。多分ちゃんとした保管場所があるからそこに保管してもらうつもりだ。
ただ、不審な相手から食べ物を貰うことに抵抗があるかもしれないから毒味をしても良い。まあ、それすらも対策していたりするかもなどと警戒をしたらキリがないけどな。
「肉!?」
「こんなに沢山!」
「それ食べてもいいの?」
「全部食べていいぞ。ただ、腹が痛くなるほどは食うなよ。無くなったらまた買いに行ってもいいしな」
「「「また買ってきてくれるの!?」」」
肉を見て子供達が集まってきた。見知らぬ俺への警戒よりも肉への好奇心の方が勝ったようだ。
「わかった。これを一旦戻して着いてきてくれ。保管庫に案内する」
子供達を離れさせてから肉を戻し、保管庫に長と2人で移動する。
「…あんたの事や考えはジジイから聞いている。それにさっきの子供達を見ていた目が優しかった。だからある程度はお前を信じる」
前に歩いてる長が突然そう言ってきた。
「だが、もしここの子供達を裏切るようなことをしてみろ!絶対に私はお前を許さない。どこまでも追って殺してやるからな」
「その時はそうしてくれて構わない」
きっとこの女の人はそこまで強くは無い。きっと戦いに関するスキルもほとんど持っていない。動きたや雰囲気でそれは分かる。
だが、後ろを向きながら睨んで言ったその言葉はきっと嘘では無い。もし俺がそんなことをしたら絶対にそうさせるという圧があった。
ここの子供達のことを心の底から愛しているんだな。
「ただ、ドワーフからは戦い方を教えてくれと言われている。その過程で少し怪我をさせるかもしれないからな」
「ははっ!それくらいなら全く構わない。どうせ子供同士の喧嘩で生傷は絶えないしな」
それから案内された保管庫に大量の肉を置く。
今日はもう夕食時ということで、特訓を付けるのは明日からとなった。夕食までの間は話しかけてくる10歳に満たない子供達の質問にどんどん答えていった。その時の大体の質問が冒険者についてのもので、キラキラとした目で質問してくるのだ。
子供達の冒険者に憧れている様子が昔の自分に重なっていた。
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