ドワーフ国編

第227話 ドワーフ国の街

「はあっ!」


「グウェ…」


鳥のような魔物が急降下してきたので、横に避けてから首を大刀で斬り落とす。


「今日の飯はこれだな」


ラウレーナと別れて3日ほど経つが、ドワーフ国まではまだ半分すら来ていない。



「これでもかなり走ってるんだけどな」


俺はさっき取れたばかりの鳥の魔物を焼いて適当に調味料をかけてかぶりつきながらそう愚痴をこぼす。ちなみに、こんな適当な料理でも魔物のランクがD-以上ならそれなりには美味しい。

また、今は独りだから最短距離を身体強化までして走っているのだが、意外と遠いのか時間がかかっている。これを馬車で行こうとしたら何十日とかかってしまうだろう。


「それにいまいちテンションが上がりきらない…」


大鎌を装備していないからか、そもそも目的の大鎌が作れる鍛冶師が居ないかもしれないからか、はたまたラウレーナと別れたからかは分からないが、あまりドワーフ国に到着することが超楽しみとはなっていない。もちろん、ドワーフ国に行くこと自体は楽しみではあるが、水国や獣人国なんかよりもわくわくはしない。


「まあ、それもドワーフ国に着けば解決するか」


水国や獣人国に行く時は漁をする、修行をするという明確な目的があった。だが、今回の目的は大鎌が作れたらいいなという願望に近い。だからテンションもイマイチなのだろう。だが、これで海竜の鱗で大鎌を作れる者が見つかったらテンションは爆上がりだ。


「よし、こっからは雷身体強化も使うか」


森の中で全くと言っていいほど誰とも会わない。だから時短のために雷身体強化も使おう。もし気配感知が反応したら魔物だろうが、一旦切ればいいだけだ。


「しゃっ!行くぜ!」


俺は気合いを入れ直し、再びドワーフ国へと走り出した。




「今日のうちに着きそうだな」


雷身体強化を使ってからまた3日経ち、ようやくドワーフ国の大都市アダマスに辿り着きそうだ。雷身体強化をしてからスピードが上がったおかげだな。


俺のその予想は当たり、その日の昼過ぎには大都市アダマスが見えてきた。



「…でっか」


俺は見えた街の大きさに驚愕した。俺の生まれた国の王都や獣人国の首都、水国の水都など、その国で一番大きな街は何回も見ているが、ここは次元が違う。


「軽く5倍はあるか?」


まだ街の城壁が見えただけだが、それでも街の大きさはそれらの5倍はある。もしかすると、実際は10倍はあるかもしれない。


「さすがドワーフ国には街がここにしかないだけはあるな」


ドワーフ国には少人数が暮らす村などはあるが、街と呼べる程の都市はここの大都市アダマスしか存在しない。

その理由はこの大都市ができた経緯に繋がる。この大都市は武器や防具に使われる貴重な鉱石が取れる2つの山に挟まれた場所にできている。その2つの山から鉱石を取り、山から降りてすぐ武器などを作っていくうちにどんどん人が集まり、ここまで大きな大都市となったのだ。そのため、同じような鉱山が無い他の場所には街ができないのだ。



「並んでる人も多いが、その分入口も多いな」


馬車を使う商人ら用の入口が5つと、冒険者などの徒歩の者が使う5つある。回転率も早いし、意外と早く街に入れるかもしれない。

ちなみに、他にももう2つの入口があるが、それに関しては後にする。



「冒険者だな。武器が欲しくてきたのか?」


「ああ、愛用してたやつが折れちまってね」


何十mの長蛇の列ができていたのに、俺の番がやってくるのに30分程しかかからなかった。

また、検問も酒場で顔見知りと会ったかのように軽い調子だ。


「そうか!いい武器が見つかるといいな!」


「ありがとな」


なんと、ギルドカードを見せることすらなく、街に入れてしまった。さすがにこんなざるだと少し心配になるぞ。



「おお……!」


城壁をくぐって街に入ると、そこからは人と出店が数多くあった。ほんの一部を見ただけでも他の都市とは一線を画すのが分かる。


「安いよ!あんちゃんこの武器どうだい?」

「いや、兄ちゃんにはこっちの格好いい武器の方が似合うぜ」


出店の前を通るだけで話しかけられる。しかも出店にあるような武器は見てくれだけ豪華なだけで実際の性能は悪そうなものばかりだ。この街にやってきたばかりのカモが被害になるんだろうな…。


「串を2本くれ」


「あいよ!」


俺は出店の中で少し列ができていて、美味そうな串焼きを買った。


「ところで、冒険者ギルドがどこにあるか分かるか?」


「この道を真っ直ぐ行って4つ目の大通りを右に曲がればすぐだぜ」


買ったついでに冒険者ギルドの場所も聞いておく。


「助かった」


「それは良かったぜ!また来てくれよな」


俺は串を食べながら冒険者へ向かうついでに出店の種類を見てみる。

50個まで出店を数えたが、50個のうち、武器と装飾系が25個で飲食系が20個で大部分を占めていた。また、残りの5個のうち、4個は服や魔導具などを取り扱っていた。

そして、最後の1つは…。


「今日は若い働き盛りの男が入ったよ!是非見て行ってくれ!」


最後の1つは奴隷を売っている出店だった。

人が多いこの街では、他の街よりも奴隷落ちする者もその分多い。普通の事故や魔物や人的被害以外でも鉱山の事故や鍛冶中の事故など、他の街ではないような怪我で職を失うことや親の死亡なども多いしな。だからこの大都市アダマスでは武器と防具などに次いで奴隷でも有名である。

さらに、ここ大都市アダマスでは鉱山を掘るのに奴隷を使っていたりもすることで需要と供給のバランスが調度良いのだ。

また、先の入口の残り2つも奴隷専用の入口だ。

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