第216話 レイド討伐開始

「思ったよりも人数がいるな」


「ギルドも全力でかき集めたみたいだね」


討伐当日の明朝、港に行くと軽く100人を越える冒険者達が集まっていた。


「おい…あれが…」

「Cランクなんだろ?本当に大丈夫なのか?」

「でもクラーケンを撮ったのもあいつらだぞ」


俺とラウレーナにはかなりの注目が集まっている。その理由の一つにクラーケンを撮ったパーティというのもあるが、1番の理由は別だろう。


「しかも志願して囮になったらしいぞ」

「何を考えているんだ?」


ギルドで発表された討伐隊のポジションに俺達が囮となっていたからこんなにも注目を浴びているのだろう。



『注目!』


人目を気にせずラウレーナと雑談をしていると、集合時間になった。そのタイミングでギルド長が拡声の効果のある魔導具を使ってみんなの注目を集める。


『これからクラーケン討伐を開始する!役割は昨日話した通りだ!全員の協力がないとこの討伐は失敗する!全員でクラーケンを討伐をするぞ!!』


「「「おぉぉーー!!」」」


ギルド長の発言に全員が盛り上がる。討伐に参加をすることを悲観している者が思ったよりも少なそうでよかった。


「では、各自船に乗ってくれ!」


そう言うと全員がぞろぞろとそれぞれの船へと移動していく。


「僕達も行こうか」


「そうだな」


俺達も自分らが乗る船の場所に移動していく。



「今日はよろしく」


「全く…お前達のせいで俺らまで駆り出されることになったんだぜ。なあ、息子よ」


「俺達の船の出番は無いと思って冒険者ギルドの契約にもサインしたのにね」


俺達の乗る船は釣りの依頼でお世話になったあの魔導具を使う船だ。ギルドに依頼を出しているということで緊張時に船を出す契約していた。

俺達の囮作戦がなかったらこの人数があまり乗れない船を出すことは無かっただろうな。


「すまんな」


「ごめんね」


「軽口を叩いただけだ。気にするな!それにお前達の役割を果たせる船なんてこの船しかないからな」


「ギルドからはそれ相応の金を貰っているし」


俺達のせいで危険な役割を与えられてしまったが、意外と平然としていた。まあ、釣りという他よりも危険な漁をしているくらいだから肝は据わっているのだろう。

しかし、俺達が囮の役目を果たせるほど小回りが利いて速い船はこの船しかないだろう。

それから俺達は船に乗り、他の冒険者が船に乗り終えるのを待った。



『出発だ!!!』


「さてと、じゃあ先導してやるか!他が遅れるからあまりスピードは出すなよ」


「わかってるぜ!」


ギルド長の合図でまず1番に俺達の船が発進する。そして、その後を追うように7隻の大きな船も進んでいく。

全員緊張しているのか、何隻の船が同時に動いているのに異様に静かだった。船の上で騒ぐようなやつは居ないらしい。


船の進む音しか聞こえない中、俺らの船の船長が一言話す。



「ポイントに入ったぞ」


「守れ、シールド」


俺はその合図で足場となる盾を30枚ほど準備する。

また、俺とラウレーナはそれぞれ闘装と魔装も行う。



「オオォォォォ……」


『来たぞ!!』


船長の一言から5分程経った頃、大きな唸り声が海中から聞こえてきた。それと同時に海に濃く大きい影が現れる。それはちょうど俺達の真下からだ。船は急いで影から離れる。


「ウオオォォォォォォ!!!」


そして、唸り声を出しながらクラーケンの頭が水中から姿を現した。それを合図に後ろの5隻の船がクラーケンを取り囲むように移動する。残りの2隻は5隻の船の周りを旋回するように動く。その2隻が後方支援の船なのだろうな。


「一番槍は貰うぞ!」


「いいよ」


俺は身体強化をすると、動く大きな船の方を警戒しているクラーケンへと迫る。


「らあっ!」


俺はクラーケンの頭に大鎌を振る。巨体ということもあり、それはしっかりと命中する。


「ちっ…」


しかし、俺の攻撃では薄皮と少し肉を斬るだけでほとんどダメージにはならなかった。だが、本来の目的は果たせたようで大きな目がギョロっと俺の方を向く。


「おぉ!?」


クラーケンと目が合った瞬間に危険感知が反応する。慌ててジグザグに後ろに下がると、さっきまで俺がいた場所へ触手が海から垂直に伸びてきた。

今のを避けるだけで盾を10枚近く消費した。


「はあっ!」


俺は伸びたままの触手に斬りかかる。


「うわっ?!」


しかし、ペチンと大鎌を叩くように振るわれた触手に俺は吹っ飛ばされる。足場が弱いから踏ん張れないとはいえ、力に差があり過ぎる。


「ちょっ!?」


クラーケンは俺に向かって海水を吐き出すような動作をする。吹っ飛んでいる最中の俺は次に何かされたら避けられない。吹っ飛んでいる勢いを止めるには俺の盾は弱過ぎて役に立たない。


「たあっ!」


ポンッ!


しかし、クラーケンの放った水の弾は俺の上を通過した。その理由は船からジャンプしたラウレーナが発射直前のクラーケンを蹴ったからだ。


『引け!』


「「っ!!」」


クラーケンを蹴ったラウレーナが船に着地した時に合図がかかった。俺はちょうどクラーケンから離れているが、もっと離れる。

クラーケンに近寄っていたラウレーナの乗る船もスピードを上げて一気にクラーケンから離れる。

俺達が遠くに離れると、5隻全部の船からクラーケンへ魔法が殺到した。

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