第213話 魔物の姿
「ウオォォォ……!」
「!?」
2発目の雷魔法を放つと、海から唸るような低い音が聞こえてくる。そして、その魔物はどんどん海の上の方に移動し、魚影が見えてくる。
「で、デカい……」
その魚影は軽く50mはあるだろう。船よりも大きいそのサイズはさすがに驚く。このサイズなら海に船を引き摺り込むのも容易なはずだ。ただ、その体の半分程は触手なのか、海の中でも蠢いている。
ギョロ…!
「っ!?」
そして、大きさ目が水面から出てきて俺の方を見た。それからすぐにその魔物は体の向きを変えて、大きく海から出てくる。
「な、何だあれは…?」
その姿は魚とは全然違う。海から出てきた球か楕円体のような形の体?頭?は鱗は全くない。それだけでなく、ぶよぶよして柔らかいのか、形をよく変えている。
シュッ…!
「あっぶね!」
その異様な体の下から触手のようなものが俺に向かって伸びてくる。姿を見るのに夢中で危うく当たるところだった。
また、その触手には吸盤のような丸いものがいくつも付いている。
「7本?いや、8本か」
海から伸びてる触手の数は合計で8本もあるようだ。魚影を数えても他には無いので全てで8本だと思われる。
ボンッ!!
「っ!?」
姿を観察していたら今度は水の弾を放ってきた。ただ、その巨体から放たれたそれの大きさは軽く全長3mほどはある。そんなのが直撃したら大ダメージになる。俺は慌てて回避をする。上空高くにいるからか、避けることだけならそこまで難しくない。
「そろそろ撮るか」
俺がいくらその姿を目に焼き付けても他の誰かとそれを共有することはできない。俺は魔導具を構えてボタンを押す。
「おっと…!」
その時にも水の弾が飛んでくるが、避けて撮影を続ける。ちゃんと撮れたかちゃんと不安だったので、角度を変えて他にも2、3枚撮っておく。
それから俺は魔物の姿を撮り終えたので魔導具をしまう。これで依頼達成のはずだ。
「闇…いや、何もせずに戻ろう」
最後にストックを使ってちょっかいを出そうとしたが、止めておいた。今、こいつの見ている前で攻撃行動を取ったらいけない気がした。
「ここで攻撃したら相手も本気になるかもしれないしな」
今の魔物の攻撃はこっちを牽制しているだけで、本気で俺を殺そうとするような動きには見えない。だから下手に本気で殺しにくる理由をまだ与えてはいけない。そうすると逃がしてもらえなくなるかもしれないからな。そして、そうなった時には近くにいるラウレーナまで危険を晒してしまう。
それに、今俺がこの魔物の弱点の魔法の属性を探ったところでそれを伝えられければ意味が無いしな。
俺はその魔物のことを警戒しながらラウレーナのいる方へと空を蹴って移動する。
「追っては来ないか?」
魔物はこっちの方を向いて警戒はしているが、追ってくる様子は無かった。あの魔物が見ている前で魔法は一切使わなかったから俺があの雷を発生させた存在なのか魔物の中ではっきりしてないのかもしれない。
そのうち、俺がかなり離れたら魔物はまた海の中に戻った。それでも俺は警戒を解かなかった。
「あ!おかえり!」
「ただいま!」
俺は空から飛び降りるようにラウレーナの待つ船の上に乗る。
「急いだ方がいい?」
「いや、そこまで急がなくてもいいけど、港まで船を進めてくれ」
「分かったよ」
俺が船に乗ると、ラウレーナはすぐに船を発進させる。
「依頼は達成できた?」
「完璧だ」
念の為数枚撮ったから依頼としては完璧にこなせたはずだ。あ、ただどの写真も上からの写真なのは何か言われるかもな。まあ、その時は素直に言えばいい。
「おつかれ、後は私が警戒しておくからゆっくりしていいよ」
「ありがとう」
そう言われて俺は身体強化などの強化を全て解く。そこで自分が背中まで汗をびっしょりかいていたことに気付く。短時間だったが、それほどのプレッシャーを感じていたのか。
それからもその魔物は追ってくることなく、俺とラウレーナは無事に港まで帰ることができた。
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