第209話 魚のランクと値段

「よし!次も行くぞ!」


次の漁の日、宣言通り2匹を釣り終わってもまだ釣りを続行する。今日釣った2匹は昨日と同じ魚でサイズは昨日よりも1、2回りほど小さいくらいだ。


「だいぶ狩るのも慣れてきたね」


「コンビネーションが上手くいってるな」


俺とラウレーナで今日の2匹も狩っているわけだが、初日よりもかなりスムーズになっている。

具体的には、ラウレーナが魚を上に飛ばし、俺が空中で攻撃するという方法だ。こうすることで魚にはほとんど何もさせずに一方的に空中で攻撃する事が出来ている。



「とはいえ、これでDランクなんだもんな」


昨日と今日狩った魚のランクはサイズにもよるがDランクかD+ランクくらいらしい。

ただ、このランクは魚が陸にいる時に戦うことを想定したもので、魚が海の中にいる時に戦うとしたらランクは1、2つ上がってC-かC+に上がるそうだ。つまり、漁中はCランク帯ということだ。確かにあの魚も陸の上にいたと考えたらDランクが妥当かもしれない。

また、網を使った漁で取る魚はEランク帯らしい。確かにあの避けた突撃も船の上なら不意打ちだったが、身体強化無しでも避けれた。まあ、海の上で戦った時は陸のDランクよりも強く感じたけど。


ちなみに、なぜ基準が陸の時なのかと言うと、昔のランクを決めた奴が陸に生きたまま連れて来られたのを基準に考えたかららしい。いや、魔物の本来の住処での強さで考えないと意味ないだろ。どうやったら魚と陸で戦う時が来るんだよ。特に高ランクの魚は。




「今日は小さいのが多いから次は餌を大きくするか」


依頼主がそう言って取り出した針の先にはなんと、ビックボアが付いていた。


「そぉーれっ!」


それを当たり前のように依頼主は遠くに投げ込む。投げ込んで数分で魚が食いついた。


「おおっ!?」


「わあっ!」

「おっと!?」


船が大きく傾くほど一気に糸が引っ張られた。依頼主は何とか踏ん張って海に落ちることは無かった。


「こいつはCランクの魚だ。この引きからすると爆魚だ!こいつは爆発する鱗を飛ばすから気を付けろよ!」


依頼主は雷の魔導具を糸に当てながら俺達にそう忠告する。しかし、引きだけでどの魔物化まで分かるのは凄いな。



バシャン!


雷を流してすぐに魚は海から顔を出して依頼主に突撃してくる。依頼主は胸を張ってその頭突きを受けるが、ドボンッ!言う音と共に黒い煙が上がる。


「はあっ!」


依頼主のすぐ横に待機していたラウレーナが魚を蹴り上げる。しかし、その時も爆発が起こる。


「ごめん!低い!」


「大丈夫」


ラウレーナも依頼主と同じように爆発ではダメージはなさそうだが、爆発のせいで高くは蹴れなく、2、3mしか上がってない。だが、近くで待機していたので最低でも1回は斬れる!


「ギョ!」


「わっ…!」


しかし、魚は空中の俺に気付くと、鱗を飛ばしてくる。それも鱗1つずつ軌道が異なっていて避けるのは難しい。また、足場のための盾で受けてようにも、足場にすることしか考えてないから防御力が低過ぎて盾としての効果はほぼ無い。ほんの少し鱗の爆発の威力を落とす代わりに足場が無くなるのは割に合わない。だから逆に盾を遠ざける。

俺はどうせ全ては防げないならと鱗を無視し、魚に向かって大鎌を下から振り上げる。


「いってえ…!」


10個近くの拳大の鱗がぶつかって爆発したことで俺の闘装は木っ端微塵に割れてしまう。闘装の下に普通の装備もあったから軽傷ですんだが、傷は多いし血は出てて普通に痛い。


「けど、もう終わった」


俺は大鎌をラウレーナが蹴りで鱗を爆発させた顎付近から、これまた頭突きで鱗が爆発した脳天に向けて振った。そこらはもう鱗はなく、一撃で両断できた。



「流石だな!鱗は1分経たずに元に戻るから普通は鱗を再生できなくなるまで粘るしかないんだぞ!」


「ヌルヴィス、大丈夫?」


「んぐっ…大丈夫だ」


船に降りてきた俺は下級ポーションを飲んで傷を治しながら返事する。


「傷も少ないし、武器の素材になる鱗も残ってるから高く売れるぞ」


「そう言えば、魚ってどこで売ってんだ?」


網で取った魚は魚専門の市場に売られるらしいが、こんなデカくて珍しい魚はどこに売るのだろうか?


「これは契約してる高級店や金持ちの家に直接卸したりしているな。希望によっては冷凍して他国の貴族に届けたりもしてるぞ」


なるほど。一般には出回らない珍しい高ランクの魚なので、食べたいと思う者は多いだろうな。ちなみに、俺らの泊まっている宿には卸していないらしい。

また、そうなったらさらに気になることが1つ増える。


「大体1匹の値段はどのくらいなんだ?」


「Dランク1匹でざっと金貨数枚だな」


俺が大金を稼いだせいで金銭感覚が鈍ってしまうが、1日で大金貨の稼ぎは普通にやばい。そりゃあ、実力の無い冒険者をお金を払うことになっても平気で追い返すわけだ。

ちなみに、Cランクの値段は教えてくれなかった。


「ただ、船や魔導具、針と糸のメンテナンスだったり餌の魔物を調達だったりで減る分も多いがな」


この漁方法では高ランクの魚を相手するので、特に船のチェックは大変だろう。海の上で船がダメになったら死ぬことになるからな。

また、魔導具も一個当たりが高いので壊れたりした時の出費も多いよな。

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