第205話 バレる
「遅いし、遠くに行き過ぎ!さっきの場所で何かあったら本当に助けに行くことすらできなかったんだからね!」
「あはは、ごめんごめん」
船に戻ってすぐ、ラウレーナに怒られてしまった。怒られないように早めに切り上げたつもりだったが、もう十分遅かったらしい。
「それで何があったの?」
「っ!?」
俺は思わず目を見開いて驚いてしまう。獣人国とは違い、今回は悟られるとは思ってなかった。
「さすがに今みたいにヌルヴィスの反応が少し心ここに在らずぐらいだったら気付けないよ。でも船に戻ろうとした瞬間に急いで振り返ってしばらく動かなくなったのを見てるんだよ?さすがに注意深く見てるから何かあったって確信できるよ」
「そう言われればそうだよな」
そもそもさっきの俺の行動自体が不信だったな。あんな行動を普段からやってたらそれは情緒不安定だ。それに加えて今の反応が少し変だったら数ヶ月一緒に居るラウレーナにはバレるな。
「何があったかよかったら聞かしてくれない?」
「…分かった」
俺は帰る直前で突然悪寒を感じて振り返ったのを説明する。その際、獣人国でのやつと少し似た感覚だったのも伝えておく。
「…それはもしかすると、自分よりも強い何かに対して反応する危険信号だったりするのかも」
俺の話を聞き終えたラウレーナはそう言う。
俺はそれを聞いてそっとステータスを確認するが、獣人国から出た時からステータスは変化ない。
「要するに野生の勘的なやつかな?」
「おい、俺はいつから野生に生きる動物になった」
他の人と比べたら野性味があるかもしれないが、決して野生で生きてはいない。これでも一応人間社会で生きている。
「もしかすると、その感覚は獣人国での最後の一件で鍛えられたのかもね」
「嬉しくは無いな…」
マジであれは死を覚悟したから、あれがプラスになってほしくない。もう二度と体験したくないしな。
「話を戻すけど、僕はそのヌルヴィスの感覚はきっと勘違いでもなく、正しいと思うよ。海の深い場所は誰も分からないんだし、そこにヌルヴィスよりも強い魔物がいたって不思議じゃないし」
「それはそうだよな」
今回、漁をしている場所も深さ20mは無いだろう。海の深さは100mをも超えるとまで言われているのだが、深海に潜む強大な魔物がいてもおかしくない
「実際にそんな魔物がいると仮定して、その魔物が海の浅い部分に来て襲ってくると思うか?」
「僕は思わないかな?爺様が何も言わなかったから100年近くはそんな魔物が出たことはないんじゃない?それがちょうど今出てくるとは思えないな」
確かにもし高ランクの魔物が海から出たなんて出来事を師匠らが知っていたら必ず忠告してくるだろう。
「あ、でもヌルヴィスが居るから出てくるかも?」
「何で俺がいると出てくるんだよ!」
しかし、ラウレーナは付け足すようにそう言った。
「だって半黒化に赤化にオーガ、そんな珍しいのと何回も遭遇してるんだから、ここでその中に何か一つ追加されてもおかしくなくない?」
「た、確かに…」
俺はラウレーナの理由の説明に何も言い返せない。長年冒険者をやっていた両親ですら半彩化した魔物に1、2回遭遇しただけだ。まあ、全彩化魔物と遭遇して生きている人が少ないだろうけど…。
それなのに、俺は俺は冒険者になる前を含めたら半彩化と全彩化の魔物にそれぞれ一体ずつで遭遇した。これはかなり驚異的なペースだろう。
「それで、どうする?危険だからこの水国から離れる?」
「それは…」
確かに危険はある。だが、そんなのはどこもそうだ。冒険者をやる以上、常に危険と隣り合わせだ。それを一々怯えるのは俺の憧れた冒険者では無い。
「とりあえず、今回のことは考えないこととしよう。ただ、明らかに海に異変があったり、それこそ海に高ランクの魔物が現れたら水国から離れよう。まあ、強制依頼がでたら仕方ないけど」
「僕もそれがいいと思う」
ギルドの依頼ボートを見た感じでは、漁の依頼はサハギンを狩るようなやつ以外にもあった。
それらをやり尽くしてそれでも退屈だったら水国を離れればいい。来るかも分からない恐怖に脅えて逃げていては何もできない。
ただ、自ら危険に飛び込む必要も無い。何かあったらこの国を出て行けばいい。ただ、街や国の危機となった場合はギルドから辞退不可の強制な依頼が出される場合がある。その場合は逃げたらギルドから除名されてしまう。その時は戦うしかないが、その時は大人数になるのでその分危険は少なくなる。
「帆を張れ!帰るぞ!!」
「「「おう!!」」」
「あ、港に戻るみたいだよ」
「よし、この依頼もこれで終わりか」
どうやら、3回目の漁も終わり、港に帰るようだ。これでこの日の量の依頼は無事に完了した。
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