第202話 サハギン狩り
「帆をたため!!」
「「「おう!!」」」
漁のポイントとやらに着くと、船の帆をたたんでこれ以上船が大きく動かないようにする。
「俺らは漁に入る!冒険者は船が止まったことで登ろうとしてくるサハギン共をどうにかしてくれ!
とりあえず、お前らはこっちで、お前らはこっちで…」
依頼主が俺達が船のどこでサハギンを狩るかを指差しで指示していく。
「何か俺らの守る場所少なくない?」
「それは僕も思った」
俺達が指示された場所は左右の船の真ん中のごく1部だけで、船を1周守るにしては俺達に与えられた場所はかなり少ない。それと、パーティで離れた場所を守るのも俺達以外には居ない。
「お前らは船の揺れにも動じないから1番キツいとこを任せたぜ。普段ならそれぞれ3、4人は必要だからキツければ増員するからすぐに言えよ」
「え?それって…」
俺が依頼主にどういう訳かを聞こうとした時にちょうど船の奥から大きな網が運ばれてきた。その網は魔物の素材を使っているようでとても丈夫に見える。
「ちょっと退いててな」
そして、俺とラウレーナは船の中央に追いやられる。
「いくぞ!そぉぉれっ!!」
「「「そぉぉれっ!!」」」
依頼主の掛け声で船の左右で網を大きく広げながら海に投げる。
投げられた網の中では魚が暴れるのが見える。
「さあ!網を登ってくるサハギンらは2人に任せたぞ!」
「「え?」」
依頼主はそう言うが突然のことに俺とラウレーナは疑問を浮かべながら目を合わせる。
「「ギェ…!」」
「「っ!」」
しかし、海から魔物の鳴き声が聞こえてきた瞬間に俺は左、ラウレーナは右の網が投げられた場所に走る。
「こいつがサハギンか」
船の横端まで行くと、網を登ろうとするサハギンと呼ばれる魔物が見えた。サハギンは魚の顔に鱗のある人間のような胴体が生えたような魔物で、傍から見ると気持ちが悪いような見た目をしている。
「網は切らないようにな!」
「分かってる!」
俺は身体強化を行うと、網を登ってきて船の手すり近くまで来たサハギンを斬り付ける。
「数が多いな…」
対処できない数では無いのだが、休む暇も無いほど続々とサハギンは網を登ってくる。
ちなみに、その間に乗組員は何もしていない訳では無い。
「流れ出ろ!ウォータースピア!」
「吹き荒れろ!ウィンドスピア!」
魔法を使って網の中で暴れている魚を攻撃している。網に当てないように網の中の魔物だけを狙う技術はさすがである。
また、物理職で魔法を使えない乗組員にもしっかり役割はある。
「「ふぬぅぅぅ……!」」
物理職の乗組員は網が海に持っていかれないように身体強化をして網を握っている。魚が何匹も暴れている網を持っているのもなかなか大変だと思う。
(雷魔法を使いたい…)
俺はサハギンを斬りながらそんなことを考えていた。正直、順番に来るだけの強くもないサハギンを殺す作業は退屈になってくる。もし、ここで雷魔法を使えれば水中にいるサハギンを丸ごと一掃できる。ただ、そもそも漁の魚にも影響があるかもしれないから使ったらダメかもしれないが。
「おっと…!」
船が波で揺れて思わず手すりを掴む。チラッと後ろを見てラウレーナは揺れが大丈夫だったかを確認する。
「ぁ…」
後ろを見た俺は思わず絶句してしまう。なんと、ラウレーナは手すりの上に乗ってサハギンを殺っているのだ。ラウレーナは数cmしかない手すりの上で全くバランスを崩すことなく動き回っている。
(もしものために海に落ちた時のための対策は考えているけどそれにしたって…)
俺とラウレーナは片方が落ちた時のことは考えている。
まず、海に落ちたら上に魔法や武器を投げて落ちたことを相方に伝える。その後、別に海の魔物が平気そうなら俺が無属性魔法の盾を用意して海から上がる。もし、海の魔物が多くて海から上がれないようなら俺が雷魔法を海にぶっぱなす。その時にはラウレーナには雷を通さない水魔装をしてもらう。
「網を引き上げるぞ!!」
「「「おう!」」」
それから網が引き上げられる間もサハギンを殺り続け、それは網が完全に引き上げられるまで続いた。ちなみに、最後までラウレーナは手すりの上で戦っていた。
ちなみに、網は開いて投げられたらそのうち自動的に閉じて魚が逃げられないような仕組みになっているらしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます