第201話 漁の依頼
「とりあえず、この依頼でいいかな?」
「いいと思うよ」
次の日、早めに出してくれた宿の美味しい朝食を食べ、美味しそうな弁当を宿から貰ってから宿を出た。それから俺達はギルドの依頼ボードの前にやってきた。
そこで漁の依頼を探した訳だが、善し悪しはよく分からないのでとりあえず選んだのは募集人数が多く、依頼を受けれる条件もそこまで緩過ぎず厳し過ぎるものではないやつだ。
「……の依頼を受けたいんだが」
「少々お待ちください」
そして、依頼を決めた後はその依頼の依頼主の名前を受付に伝える。
「依頼を受理しました。明後日の朝6時頃にここへ来てください。あまり遅れると船が先に出てしまうかもしれませんので注意してください」
「分かった」
受付が簡易な地図と船の特徴が書かれた紙を渡しながらそう忠告してくる。
漁は朝早くから船を出すらしく、のんびりしていたら置いてかれるそうだ。そうなると、依頼料は貰えないし、何度も同じことが続くと冒険者側に何らかのペナルティも課されるそうだ。
「依頼は明後日だから今日と明日は普通の討伐依頼を受けよっか」
「それがいいね」
さすがに明後日までのんびりすることはなく、俺達は近場の討伐依頼を受ける。ただ、近場ではDランクまでの魔物の討伐依頼しかなく、少しと遠くに行くことになればCランクの魔物の討伐依頼がやっとあるだけで少し通常の討伐依頼の数は少ない。とりあえず待つ間の2日間は近場のDランクの依頼を複数選んでこなしていた。
そして、ついに初めての漁の依頼の日となった。
「えっと…こっちでいいんだよな」
「大丈夫、合ってるよ」
俺は朝早くから受付から貰った地図を見ながら移動していた。地図を見るのはラウレーナの方が得意そうだが、練習ということで俺が地図を見て移動している。
「うわぁ…」
「こんなのが水に浮くんだね…」
そして、船乗り場が見えると、そこには木でできている大きな船が何隻も港に停泊していた。ボードのような小さいのは俺もラウレーナも知ってはいるが、大きな帆が付いて何十人も乗れるような大きな船を見るのは初めてだ。
「それで俺達の依頼主の船は…これか」
俺達の依頼主の船は停泊している船の中で大きい方から数えて5番以内には入りそうなほど大きかったのですぐに見つかった。パッと見では漁船には見えないほど大きな船だ。
「2人で依頼を受けたヌルヴィスとラウレーナだ」
「ん?ちょっと待ってな」
船の前にいる漁師と思われる者に話しかけると、その者は何かリストのようなものを見始める。
「おう、確認したぞ。早速この船に乗ってくれ」
「分かった」
船に登るためのハシゴが斜めに着いているので、俺達はそれの上を通って船の上へと移動する。
「それなりに冒険者はいるようだな」
「10人くらいかな?」
パッと見だが、冒険者のような格好をしているのは10人ほどだった。その後も少し数は増えたが、それでも20人満たないくらいだった。
「野郎共!準備はいいか!」
「「「おう!」」」
それから少し経ち、船首に依頼主らしき者が立つと、乗組員に声をかけ始める。
「帆を張れ!!」
「「「おう!」」」
「出発だー!!」
「「「おーう!!」」」
この調子で船は港から出発した。
「おっと…」
「大丈夫?」
船がグラっと大きく揺れた時に俺はバランスを崩して少しふらついてしまう。
「ラウレーナは平気そうだな」
「僕はバランス感覚を鍛えるために足場が不安定なところで戦う特訓をされたからね。船が横転するくらい揺れない限りは平気だよ」
師匠はどんな厳しい場所でラウレーナに特訓をしていたんだ…。俺だけこんなふらついて駄目だなと思っていたが、他の冒険者は普通に揺れのせいで倒れたりしているのでそれよりは増しだろう。
ただ、漁師のほとんどは揺れに対して全くどうじていない。
「お前ら本当に漁の依頼は初めてか?その割には船の揺れに慣れてるようじゃないか」
そんな俺達にさっき船首に立って声をかけていた依頼主が話しかけてきた。
「漁の依頼は初めてだぞ。ただ、揺れへの耐性に関しては他と鍛え方が違うのかもな」
「なるほど!そりゃあ納得だ!お前らはなかなかに強そうだもんな!」
依頼主は俺の返答に大声で笑いながらそう答える。実際、俺とラウレーナのように幼少期から両親や祖父母に特訓されている者はほぼ居ないだろう。
「俺の依頼について説明しに来たわけだが、お前らがやることは至ってシンプルだ。自分らが海に落ちないようにしながら、船に登ろうとするサハギン共を攻撃して海に落とせばいいだけだ。たまにサハギン共に掴まれて一緒に海に落ちる奴が居るが、そうなったら助けられんから気をつけろよ」
船の端には1m程の高さの金属の手すりが付いている。その手すりには横に50cm程の隙間があるので主にそこの隙間からサハギンに攻撃するらしい。
「漁をするポイントに着いたら配置に関してはこっちで指示するぜ!後はポイントに着くまでは揺れに少しでも慣れておけよ!まあ、お前達にそれは必要ないかもしれねぇがな!」
依頼主はそう言うと、また違う冒険者の方へと歩いて行った。
俺はラウレーナと話しながらどうにか揺れに動じないようにできないかと奮闘していると、2時間ほどで漁のポイントとやらに到着した。
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