第198話 入国
「冒険者のギルドカードなどはお持ちですか?」
「ああ」
「はい」
俺とラウレーナは海国の城壁に行くと、城壁から海国への入口に居る門番に話しかけられる。
街に入る際にはギルドカードなどはよく求められるので俺とラウレーナは普通に見せる。
門番にギルドカードを見せる時にちらっと見えたラウレーナのギルドカードは青色で俺の1つ下のDランクのカードだった。
「はい。確認が取れました。ところでここにはどうした理由で?」
「海の魔物を狩るのと海産物を食べに来た」
門番からここに来た目的を聞かれたので、俺は素直に応える。聞いたのも怪しんでいるからとかではなく、個人的に気になったからといったふうだった。
「それらなら海国の中でもここ水都ガヴァルは1番だよ!ぜひ楽しんで行ってくれ!」
「ありがとう」
俺達は門番と別れ、海国へと入っていった。やはり、入ってすぐだと他の国と対した差は無い。
「まずは冒険者ギルドか宿探しに行くところだけど……」
新しい街に入ったら冒険者ギルドか宿探しを最初にすることが多い。
「先に海を見に行こうよ!」
「やっぱり、そうだよな!」
しかし、まだ昼前くらいということもあり、俺達は真っ先に海を見に行った。
「うわぁー!!」
「すげぇー!!」
街を通り、砂浜までやって来た俺達は大き過ぎる海に目を奪われながら潮風を全身で感じていた。
「冷たっ!」
「しょっぱっ!」
海のそばまで来ると、俺達は海の水を触ってみる。ラウレーナは水の冷たさにびっくりし、俺は海に触れた手を舐めてその塩辛さに驚く。
「ヌルヴィス!」
「ん?」
ラウレーナが立ち上がると、俺の腕を掴んでくる。そして、ニヤッといたずらっ子のような笑みを浮かべる。
「ちょっ…!待っ…」
「それっ!」
ラウレーナは俺を海へと空高く投げる。急いで無属性魔法の盾を準備したら海に落ちることは回避されるが、そこまで遠くない場所に他の人も海で遊んでいるので変なことをして警戒させたくない。それにそこまですることでもない。
そういうことで俺はこのまま海に落ちた。
バシャンっ!
「わぶっ…!!」
深さが1mと少しくらいの深さの海に落ちた俺はすぐに顔を出すべく立ち上がる。
「あはは!!」
そんな俺を見て笑っているラウレーナの方へ海の中を歩いて向かう。
「あの、ちょっと…」
それを見て嫌な予感がしたであろうラウレーナの顔から笑みがだんだん消えていく。
「さっきのは軽い悪ふざけのつもりで……」
俺はそう言うラウレーナの真ん前までやってくると、ラウレーナの腕を掴む。
「ぼ、僕ってちゃんと泳いだことがなくて…泳げるか自信が無いというか…」
「大丈夫、立てば顔は出るぞ!」
「わあっ!?」
俺はさっき俺が投げられた場所の少し手前にラウレーナを投げる。そこならラウレーナが立てば顔が出るから泳げなくても大丈夫だろう。
バシャンっ!
「わぷっ?!」
海に落ちた瞬間のラウレーナは少し慌てた様子だったが、すぐに海から顔を出す。
「やったなー!!」
「最初にやったのはそっちだろー!」
2人ともびしょ濡れになったので、そこからは海の中で2人で投げあったりなどをして遊んだ。10分後にはラウレーナは普通に海で泳げるようになっていた。また、浅いような川でしか泳いだことの無い俺も普通に泳げていた。
「そういえば普通に海で遊んでいる人が居るけどここには魔物が居ないのかな?」
「どうだろ?一応警備みたいな人は居るから出ないことは無いんじゃない?」
砂浜には武器を持って警備をしている人達が一定間隔に居る。だから魔物は時々出るのかもしれない。
「基本的に船で魔物を狩るらしいから、この海の奥に居るのかな?」
「あ、そうかもね」
森の中に居る魔物と同じように、海の中の魔物も海の奥の方に行くほど強くなるとかもあるかもしれない。
「ウォッシュ、ドライ」
「ありがとう」
海から上がった俺達はラウレーナによる生活魔法で濡れて汚れた身体を服ごと綺麗にする。
「それじゃあ、冒険者ギルドに行こうか」
「ああ」
海で1時間ほど遊んで満足した俺達は冒険者ギルドへ向かっていった。
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