第197話 到着

「ガグアッ!」


「ぐぅ…」


俺がオーガの後ろに回ろうとしている中、ラウレーナがオーガの拳を両手で受け止める。ラウレーナは俺とは違い、オーガの拳を食らっても下がることなくその場で踏ん張っている。


「うらっ!」


「ガァッ…!」


また、攻撃を受け止めるだけでなく、すぐにオーガの腕を弾き、少しジャンプしてオーガの腹にパンチまで食らわしている。


「ヌルヴィス?」


「あ、ごめん」


オーガと殴り合いができている様子を見ていて、俺も戦いに参加していることを一瞬忘れていた。オーガがラウレーナを殴ろうと腕を振り上げたタイミングで俺もオーガに迫る。


「よっ!」


「グガ!?」


俺は流れるようにオーガの両脚の膝裏を深く斬る。脚で踏ん張ることが出来なくなったことにより、オーガは体勢を崩して前のめりに倒れていく。

オーガは後ろからの攻撃に気を取られたのか、倒れながら後ろの俺の方を向く。お前の倒れた先にはラウレーナが居ることを忘れていないか?


「はっ!」


「ガァッ…」


倒れたことにより下がった顔面をラウレーナがアッパーのように下から殴りつける。

その間に俺はオーガの脚からオーガの上を駆け登る。


「らあっ!」


「グガ……!!」


オーガの背中まで来た俺は足元のオーガの背中を大鎌で大きく斬り裂く。

それでもまだ意識があるオーガは最後の力を振り絞って俺を掴もうと背中に手を回す。それを回避するために俺はオーガの背中から降りる。トドメはラウレーナに任せよう。


「ふっ!」


「ガ…」


ラウレーナが目の前にあるオーガの頬を蹴る。ボキッ!とオーガの首が折れる音と共にオーガはピクリとも動かなくなった。



「うん、大丈夫そうだな」


「連携もできてたし、ダメージもほぼ受けてないもんね」


1体だけだったとはいえ、Bランクのオーガ相手にここまで完勝できたならかなり連携は良くなったと言えるだろう。

俺とラウレーナならどちらか1人だけでもオーガ1体くらいに負けることは無いと思うが、ここまで無傷に近く短時間で完勝とはいかないだろう。


「これからも道中で魔物を殺してく?」


「いや、Cランク以上の魔物を見かけた時だけにしよう。それ未満の魔物なら相手にするだけ時間の無駄だと思う」


あまり弱い魔物ならこれ以上の連携上達すらできない。だからそれらは無視して早く水国へと向かった方がいいだろう。


「分かった。それなら少しはスピードアップできるね」


「だな」


それからは魔物と戦う頻度がガクッと減ったことで1日の移動距離も倍以上に増えることになった。

ただ、予想以上にCランク以上の魔物が出なかったので、途中から森の奥を移動するようにもなった。そうしてからは1日に数回は必ず魔物と戦えるようにもなった。また、森の奥ということで夜営中も魔物が襲ってくることも増えた。ただ、寝ている相方を起こすほどの魔物は現れなかった。




「あと3日くらいで着くかな」


「おっ!そうか!」


獣人国から旅立って15日経った昼頃、ラウレーナは地図を見ながらそう言う。


「行先は水都ガヴァルでいいんだよね?」


「ああ」


俺達はどうせならと水国の首都である水都ガヴァルを目指している。水国は海に反った細長い国なので、行き方によってはいきなり水都に行くことができる。




「水国が見えたよ!」


「え!どれどれ…」


3日が経ち、ついに水国が見えてきた。俺は山の上からラウレーナが指差した方を見る。


「す、すげぇ…」


「すごいよね…」


俺達は語彙力が無くなるほどその光景に目を奪われた。城壁のようなものに街が囲われているのは他の国と一緒だが、1点だけ明らかに違うところがある。


「あれが海か…」


大きな城壁は片側だけで、城壁がないところから少し先には大きな湖である海が見えている。


「早速行こっか!」


「そうだね!」


俺達2人は早く海を近くで見るために山をおりて水国へと向かって行った。

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