水国ガルヴァルナー

第196話 連携

「とりあえず、一緒に戦う練習もしたいし、軽く走りながら魔物を見つけたら避けずに戦っていく?」


「そうしよっか」


師匠らとは2人で戦ったが、魔物を相手にしたことがないので、お互いの連携ができるか分かっていない。だから水国に着くまでに最低限お互いの邪魔はしない程度にはできるようにしたい。

俺達は獣人国を出て、水国へ向かいながら魔物の居る森林近くを小走りで移動した。




「うーん、上手くいかないね」


「んー…、そうだね」


俺とラウレーナの連携は思っていたよりもできていなかった。俺が移動して大鎌を振ろうとしたらラウレーナに当たりそうになったり、俺が大鎌を振っているのにラウレーナが近くに来たりと散々だった。俺が魔法を使わずにこれなので魔法を使ったらもっと酷くなるだろう。

こんなに上手くいかない理由で大きいのは俺もラウレーナも誰かと一緒に戦うという経験がほとんどないからだ。互いの動きを意識していても無意識に魔物を自らで倒そうと我先にと動いてしまうのだ。

まだ低ランクの弱い魔物だからいいが、強い魔物になったら1つの連携ミスが大怪我に繋がりかねない。



「あ、当分は陣形を決めておかない?」


「陣形?」


どうすれば良くなるか考えていると、ラウレーナがそんな提案をしてきた。


「もうお互いの位置関係を決めておけば急に目の前にお互いが現れることも無いでしょ?」


「なるほど…いいかもしれないな」


ラウレーナの案を採用して俺達は魔物との戦闘をする時の位置を決めた。

肝心の位置についてはラウレーナが魔物を正面から相手する。そして、俺が状況に合わせて魔物の左右や後ろから攻撃を仕掛ける形だ。

この陣形ではラウレーナがタンクのように魔物の攻撃を多く受けることになるが、その役割は俺よりも防御力が高い姉弟子に相応しい。また、俺の役割の遊撃も素早さが必要になっているので、【敏捷】のステータスを持たないラウレーナには難しい。

つまり、これはお互いの長所を活かす陣形なのだ。




「上手くできてるね!」


「そうだな!」


陣形を固定してからはお互いの邪魔をせずに動けている。また、陣形的にお互いがお互いの視界に入っていることが多いので、少しずつアイコンタクトをしながら動けるようにもなっている。

最初と比べたら格段に上達している。


「これからも連携の確認しながら魔物と相手しながら行こうか」


「うん」


それからも魔物を倒しながら師匠が用意してくれた地図を見ながら移動する。

また、夕方くらいになると夜営もしたが、ラウレーナが居てくれるおかげで交互に眠って見張りをすることができた。そのため!ラウレーナに見張りを任せることで俺はぐっすりと眠ることが可能となった。両親が何度も念押ししていたパーティを組むことの重要さが分かった気がする。



「っ!オーガだ…」


「何でこんなところに?はぐれかな?」


移動を初めて4日目にして、俺達は1体のオーガを発見した。そのオーガはこの前の子オーガと親オーガの大きさを足して2で割ったくらいの大きさである。4mほどだが、オーガとしては平凡なサイズだろう。

森の中とはいえ、そこまで深くない場所なので普通ならオーガが現れることは無い。一応その周辺を探索したが、オーガはこの1体だけだった。そのため、このオーガはたまたま同種のいる場所から飛び出してきたはぐれと呼ばれるものだろう。

ちなみに、居るはずの無いオーガがここら付近に多く居ると、森の奥でオーガが逃げるほどの魔物が発生した可能性が出てくる。今回はそうでなかったからよかった。



「あのオーガは狩る?」


ラウレーナが俺にそう聞いてくる。ちなみに、一応この2人のパーティのリーダーは俺ということになっている。


「狩る。だけど、最初の攻撃だけは受けさせて」


「別にいいよ?」


俺は身体強化と闘装と魔装をしながらオーガへと普通に歩いて近寄る。


「ガアァァァ!!」


俺に気付いたオーガは拳を振り上げながら向かってくる。


「ガアッ!!」


「ふんっ!」


そして、オーガは俺に近寄ると、その拳を俺の顔面目掛けて振り下ろす。

俺は顔の前に腕をクロスしてそれをただ受け止める。


「いってぇ…」


「何をするかくらい言ってよ!びっくりしちゃったよ!」


足を引きずりながら下がった俺にラウレーナが駆け寄ってくる。

オーガの拳を受け止めた腕は痺れるような微かな痛みがある。ただそれだけだ。腕が潰れることも気を失うこともない。


「ごめんごめん、もう満足したから2人で狩ろう」


「もう…!次からは何をするかくらいは前もってちゃんと言ってよね」


試したかったことも終わったので、これからラウレーナと2人でオーガを狩る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る