第195話 旅立ち
「あ!そうなったらラウレーナの物も用意しないといけないな」
師匠達は俺が旅立てる用意をこの3日間でしてくれた。その用意の中にラウレーナの物は含まれていないだろう。つまり、ラウレーナの物はこれから用意しないといけない。
「ラウレーナの物も準備しておるからその心配は無用だ」
「なんだ、2人はラウレーナが水国に行くって聞いてたんだ」
「いえ、聞いていませんでしたよ」
「え?!」
師匠と先生も俺と同じタイミングでラウレーナが付いて行くと聞かされてそうだ。
それならなぜ、ラウレーナの用意も完了しているかというと、2人はラウレーナが俺に付いて行くつもりだと何となく分かっていたかららしい。
「ラウレーナの装備も新しく用意しておるぞ」
「おおぉ…」
師匠がそう言って取り出したラウレーナの装備は素人の俺から見てもかなり高価な良い物に見える。
「これって…」
「ああ、攻撃用の装備だ。魔物相手には必要になる時があるかもしれんからな。時にそれは攻撃する時に自分を守る防具ともなるだろう」
普段、ラウレーナは俺よりも軽装の動きやすい防具を着けている。装備はそれだけで、格闘術で戦うラウレーナは武器という武器は持っていなかった。
「ちょっと着けてみる!」
ラウレーナはそう言うと、早速貰った装備を着け始める。
「どう?」
「似合ってるよ」
ラウレーナは手と足と脛に着けた装備を見せながら軽く動く。その3箇所の装備はかなり頑丈そうで、それに殴られたらかなりのダメージを受けそうだ。しかし、水魔装の上からだとどんな感触になるのだろうか?…まあ、それを味わうのは魔物であって、俺でないよな。
「でも、これって…」
「ああ、ラウレーナ用のオーダーメイドだ。ヌルヴィスのおかけで稼がせてもらったからこのくらい安いもんだ」
師匠達は試合で俺に賭けたことでそれなりのお金を手にしているからラウレーナのオーダーメイドの装備くらい問題ないそうだ。
「出て行くって言ってる僕にこんな良い物…本当にありがとう…」
「道場を出て行ったからと言って儂らの家族であることには変わりないからのう」
「そうですよ。何かあったら何時でもここに帰ってきていいんですからね」
「2人とも…!」
ラウレーナは師匠と先生に抱き着いて涙を流していた。家族水入らずのこの場に俺は場違いだろうと思い、俺は道場から出ていく。
「魔法も鍛えた方がいいかもな」
俺は1人になったことで、さっきの手も足も出ずに負けたラウレーナとの戦いの反省をしていた。
「多分、魔法の練度が低いよな」
俺の魔法はほぼ独学なので見る人が見れば粗だらけなのだろうな。現にラウレーナに魔法がほとんど当たっていなかった。ただ、現時点で俺の魔法に具体的な足りないところが自分でもわかっていない。だから今後は魔法を使いながら自分で足りないところを探っていかないとな。
「ちょっと!ヌルヴィス!急に出て行かないでよ!置いて行かれたかもってびっくりしちゃったじゃん!早く道場に戻るよ!新しい装備も試したいしさ!」
「うそー…」
そう言いながら飛び出してきたラウレーナに俺は再び道場へと戻された。
そして、魔物よりも先にラウレーナの新しい装備を味わうのは俺になってしまった。その結果として、水魔装の上からでもいつもよりも硬い感触はしっかりと伝わってきた。つまり、いつもよりも殴られたダメージは大きかった。
また、ラウレーナの要望でこの国を出るのは明後日になった。今日と明日は俺とラウレーナは師匠と先生と模擬戦をすることになった。その際、俺とラウレーナが2人がかりで師匠や先生に戦いを挑んだりしたが、1度も勝つことはできなかった。ただ、2人の連携の確認という面では有意義な時間となっただろう。
「俺を道場に連れてきてくれてありがとうございました!」
「僕をここまで面倒見てくれてありがとうございました!」
俺とラウレーナは道場で師匠と先生の前でそう言って深く頭を下げる。
「「行ってきます!」」
「「行ってらっしゃい!」」
俺とラウレーナ、師匠と先生は全員泣きそうなのを堪えて笑顔でそう挨拶をする。
そして、俺とラウレーナは道場から出て行き、海国を目指して歩き出した。
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